カレントアウェアネス
No.347 2021年03月20日
CA1994
動向レビュー
絵図・古地図のウェブ公開と差別表現への対応の現状
関西館文献提供課/日本図書館協会図書館の自由委員会:奥野吉宏(おくのよしひろ)
はじめに
国立国会図書館(NDL)や国立公文書館に限らず、図書館・博物館・文書館(以下「MLA」)において、資料をデジタル化しウェブ公開することが、規模・館種を問わず広がっている。筆者は、特に京都府立総合資料館(現:京都府立京都学・歴彩館)が同館所蔵の国宝・東寺百合文書をデジタル化し、2014 年 3 月にオープンデータ(クリエイティブ・コモンズ・ライセンスCC BY;E1516参照)としてウェブ公開した(E1561参照)ことが評価(1)され、Library of the Year2014の大賞を受賞(2)したことが、拡大の転機となったと考えている。
この動きは、近代以前に作成された日本の絵図・古地図(以下「絵図」(3))の分野も同様で、NDLのリサーチ・ナビ(4)を見ても複数の機関が絵図をウェブ上に公開していることが分かる。
このように、ウェブ上での絵図の公開が進む一方、絵図上には現代では差別表現とされる表記が見られる場合がある。しかしその差別表現への対応については、議論が深まっていないとみられる。本稿では、絵図をウェブ上に公開するにあたっての論点を、日本図書館協会(JLA)図書館の自由委員会(以下「自由委員会」)(5)委員の立場から整理する。
1. 絵図のウェブ公開の経過と現状
本章では、絵図のウェブ公開のこれまでの動きと課題を整理する。
絵図に限定して資料を高精細にデジタル化し、ウェブに一般公開した初期の事例としては、大学図書館では徳島大学附属図書館(1998年)(6)、公共図書館では島根県立図書館(2002年)(7)が挙げられる。特に島根県立図書館では、ウェブ公開にあたって当事者と協議し、ウェブ上の「郷土資料デジタルライブラリー」では、差別表現のある絵図については一定以上拡大できない設定がなされている(8)。
その後、2011年の東日本大震災を契機にオープンデータの機運が高まったこと(9)、前述の東寺百合文書のオープンデータとしての公開などを契機に、特にオープンデータとしてデジタルアーカイブを公開することが広がっていった。そのなかで、絵図はテレビ番組でしばしば利用されたことから一般から注目される資料となり(10)、公開が広まったと考えられる。
一方、このような絵図の公開の広がりに対し、部落問題の研究者からは「絵図をデジタル公開している機関側で多くは公開が無条件に善いものとして自己目的化しているように見うけられる」(11)、「(MLA 側から)ウェブサイトでの公開について、考え方や基準は必ずしも示されていない」(12)という指摘がなされている。
2. 研究者・当事者の考え方および技術の進歩にともなう新たな課題
前章でみた研究者の懸念は具体的にはどのようなものか。本章では、絵図の公開にあたっての研究者の議論や当事者の意見を整理するとともに、技術の進歩等にともなう新たな課題を提起する。
2.1. 研究者の議論と技術の進歩
絵図を基にした部落問題の研究については、小野田が「古地図研究と被差別民」(13)において研究の蓄積状況をまとめている。ただし、デジタルアーカイブが定着する前の論考であり、絵図の公開も現物の展示や紙媒体での刊行が前提となっている。
また、雑誌『部落解放』は、近年「情報化社会と部落史研究」(14)と「絵図(古地図)をめぐる資料所蔵機関の課題」(15)の2回の特集(以下「特集」)を掲載し、部落史を研究する立場から、絵図のウェブ公開の現状と課題をまとめている。
まず、現物の絵図の公開を推進した事例を確認しておく。特集では、展示での公開を推進した初期の事例として、大阪人権博物館(リバティおおさか)(16)で2001年に開かれた特別展「絵図に描かれた被差別民」を紹介している。この展示会では、身分呼称が記された江戸期の大阪・京都・兵庫の絵図を展示し、開催にあたって、「展示する側の博物館が明確な差別問題の認識と意義と目的がはっきりしているかという姿勢」「その資料に対して正確な認識をもっていること」「被差別当事者、当該地域の人ときちっと話をしているかどうか」という3つのルールを掲げている(17)。その後も、研究者は絵図に解説を付けた上での現物の公開や紙媒体での刊行を進めてきた(18)。
このように、研究者は現物の絵図の取り扱いについて、「適切な注釈や解説などをつけることで積極的に出していこうという方向で議論を蓄積してきたはず」(19)としている。しかし、現在のウェブへの公開の動きは、研究者の議論の蓄積を飛び越えた動きと捉えることができる。「差別」古地図とされた絵図が、研究者の知らないうちにウェブ上で見ることができるようになっていたという事例(20)は、その最たるものであろう。そして、オープンデータ化という更なるギャップに研究者が問題意識を持ち(21)、議論が始まっているという段階であると考えられる(22)。
また、ウェブへの公開・オープンデータ化が進んでいることと同時に、デジタル画像の文字認識技術が格段に進歩していることにも、注意しておかなければならない。たとえば、NDLのデジタルコレクションでも、2021年1月からデジタル化資料の一部でOCR処理による全文テキストの検索が可能となった(23)。これにより、一般書籍中に掲載された絵図等に見られる差別表現が検索される可能性もある。
あわせて2011年時点で、既にNDL館長(当時)の長尾は「文字化しなくても検索できる技術が作られつつあります」(24)と紹介している。これについては、図書館提供のサービスとしては未実装であるが、既に手書きのくずし字を解読するシステムが複数開発されており、実用化も進められている(25)。もし、これらがサービスとして実用化されると、ウェブで公開された絵図上の文字についても、解読・テキスト化され、当時の地名が検索のキーワードとなる可能性が十分にある。そして、今後も新たな技術が開発されていくことになろう。
ウェブ公開にあたっては、公開のあり方とともに、今後の技術の進歩も考慮に入れる必要がある。
2.2. 当事者の意見
部落解放同盟中央本部は、前述の特別展「絵図に描かれた被差別民」を支持し、「この展示を差別に利用しようとするものが仮に出てきたとしても、それを恐れない。より具体にいうと、差別される可能性という幻影の前に縮こまっているよりは、みずから打って出て反差別の可能性を広げ深めていこう」(26)とした。
この考え方は、2003年に出された声明「古地図・古絵図刊行および展示に対する基本的考え方について」(27)においても踏襲されている。
なお、地名の扱いについては、特集において複数の執筆者が、部落解放同盟中央本部自身の見解をまとめた『差別表現と糾弾』の記述を紹介している(28)。このなかの「地名の扱い」(29)が、今も絵図を含めた地名の扱いについての、当事者の考え方の基本にあるとみるべきであろう。
そこでは、「地名の扱いは、特に慎重な配慮を必要とする。なにもかも、部落の地名は消せばいいという姿勢がときたまみられるが、これは正しくない。特に、歴史的史料や文献、研究書などの場合には、基本的には、地名は出してもいいといえる。ただ地名についての考え方は、それぞれの地域の部落解放運動の状況とも深くかかわっていて、一律にこうすべきだというのはむずかしい」「部落解放運動の状況を無視しては、地名をどう扱うかは考えられない。やはり事前に当事者との協議によって結論を得る努力を傾けてほしいものだ」と述べられている。つまり、地名をただ消すということは誤りであるが、地名の扱いは各地域の状況の違いもあり一律に考えることは難しく、当事者と向き合うことが重要であるといえる。
2.3. ウェブ公開画像の改変
前述のとおり、当事者も部落の地名はただ単に消せばいいという姿勢は正しくないと指摘している。
しかし、絵図のウェブ公開にあたって、ウェブ公開時に絵図上にある差別表現の改変、特に表記を抹消することも、課題として挙げられている。この是非を論じたものとして、千本による「デジタル画像における史料改竄の問題」がある。この中で、「出版物では公開ができるにもかかわらず、ネットではできないのだという立場を受け入れてしまえば、私たちが推進しようとするネット環境とはなんと情けないものなのであろうか」(30)と述べており、安易な改変に警鐘を鳴らしている。
同様の改変事例が少なくないことは、特集でも指摘されており、「正しい歴史認識がなくて資料を活用していること」への危惧も示している(31)。
3. MLAの差別表現に対する考え方
このように、オープンデータ化による公開が加速し、絵図の差別表現への対応に関して課題がある中で、MLAにおいてそれら課題に対しどのような議論がなされているのか。本章では、差別表現に対するMLAそれぞれの考え方を整理する。
3.1. 図書館の考え方
JLAが1954年に制定、1979年に改訂した図書館の自由に関する宣言(以下「自由宣言」)(32)では「第2 図書館は資料提供の自由を有する。」の副文で「提供の自由は、次の場合にかぎって制限されることがある。これらの制限は、極力限定して適用し、時期を経て再検討されるべきものである。(1)人権またはプライバシーを侵害するもの(以下略)」としている。そして、この自由宣言の解説(33)では、「差別的表現は、特定個人の人権の侵害に直結するものを除き、制限項目に該当しない」と制限を認める条件を厳しいものとしている。そのうえで「いわゆる「部落地名総鑑」の類の資料や一部の古地図、行政資料などは、これらを利用してある人の出身地を調べれば、その人が被差別部落出身者であるという推定が可能になり、就職差別や結婚差別にただちにつながるおそれがある。これなどは、差別的表現が人権侵害に直結するものの例にあげられよう」とし、絵図は制限を認める可能性がある資料として挙げられている(34)。
ただし、JLA自由委員会は、「差別的表現と批判された蔵書の提供について(コメント)」(35)において、「特定個人の名誉やプライバシーを侵害する場合(36)以外は、提供を行ないながら住民や当事者の意見を聞き、図書館職員の責任で検討し合意をつくるために努力することが必要」としている。また、JLA自由委員会委員長(当時)の三苫は、差別的表現だけでは宣言の制限には該当しない、問題のある資料はむしろ議論の俎上に上げるべき、との意見(37)も表明している。
このように絵図を含む差別的表現のある資料は、提供の制限を受ける可能性があるが、その適用は極力限定的でなければならないという考え方が示されている。
また、JLA自由委員会は、2004年に改訂した自由宣言解説の再改訂を進めており、2020年11月にオンラインで開催された「第106回全国図書館大会和歌山大会」の分科会報告資料“『「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」解説』の増補改訂について”を公表した(38)。この中では、前述の内容が含まれる、「人権またはプライバシーの侵害」の項目(39)についても、「一部の古地図(デジタルアーカイブを含む)や行政資料も差別的な意図をもって利用すれば」と言及するなど、今日的課題に即した改訂案を示した。あわせて、大会分科会の研究協議を11月28日にオンラインで開催した。その中で、この項目についても議論を行い、関連する人権またはプライバシーの問題は多岐にわたり、読む側の受け取り方も含めてもう少し丁寧な表現が必要ではないか等の意見が出た。今後、更に表現を検討し、議論を重ねる予定である。
なお、自由宣言では、「第2 図書館は資料提供の自由を有する。」の項には上記のとおり制限項目を設けているが、「第1 図書館は資料収集の自由を有する。」の項には、制限項目は置かれていない。つまり、自由宣言には差別的表現がある資料の収集を制限する項目は存在しない(40)。
また、古くて新しい問題ともいえるが、最近も紙媒体の出版物に引用された絵図にあった差別呼称について、問題が指摘され、出版社が回収依頼を行ったため、図書館が対応を検討するという事例も発生している(41)ことも押さえておきたい。
3.2. 博物館の考え方
日本博物館協会が2012年に制定した博物館の原則・博物館関係者の行動規範(以下「博物館の原則・規範」)(42)では「行動規範7.展示・教育普及」という項目で「博物館に携わる者は、博物館が蓄積した資料や情報を人類共有の財産として、展示や教育普及活動など様々な機会を捉えて、広く人々と分かち合い、新たな価値の創造に努める」としている。これに対し、現場の博物館側から示された問題点、留意事項等として「差別等の人権に関わる資料の取扱いについての懸念が多く寄せられた」と紹介している。これについては、「行動規範2.尊重」にも密接に関わる。この原則に基づき、人権に配慮した展示公開等の資料の取扱いが求められる。設置者を含め、博物館として方針を確立して適切な対応をする必要がある。必要に応じて関係する団体やグループと意見交換した上でどのように取り組むかを検討することも有効である」としている。
ただし、改訂から40年以上経過している図書館の自由宣言に対し、博物館の原則・規範に言及しているものは、「あいちトリエンナーレ2019」に関わる事例が見受けられる程度であり(43)、活用はまだこれからという状況とみられる。一方で、「負の歴史」をテーマとする博物館が全国にあり、これらの館の活動はこの問題を考えるうえで参考になるものと思われる(44)。
3.3. 文書館の考え方
文書館における史料の扱いについては、直接絵図について論じたものは見あたらないが、類例として情報公開制度や個人情報保護法制との関係で歴史的公文書等を論じる事例が見受けられる。初期の事例紹介としては、京都府立総合資料館における、府の個人情報保護条例制定時(1996 年制定)の対応(45)がある。
また、国立公文書館が刊行する情報誌『アーカイブズ』には、「これからの公文書館の公開制度−平成20年度実務担当者研修会議の議論から」(46)、「歴史公文書等の利用に係る審査について(個人情報を中心に)−平成25年度アーカイブズ研修IIより−」(47)という特集がある。
まとめ
公共図書館や大学図書館においては、NDLの図書館向けデジタル化資料送信サービス(CA1911、E2139参照)をはじめとしたデジタル資料の利用が着実に増え、レファレンス等におけるデジタル資料の利用も広がることが確実であろう。また、研究者自身も「研究者は今、デジタル化の恩恵にどっぷり浸っています。実のところ、もうデジタルアーカイブを利用しないということは考えにくい状況です」(48)とも述べているように、デジタル化された資料の利活用は日々広がっている。
そのような中で、筆者は、被差別部落の地名等の記述が含まれ、地元で厳しく利用が制限されていたある郷土資料が、図書館向けデジタル化資料送信サービスで提供され、全国の参加館(49)でも利用できる事例を発見している(50)。そして今後もデジタル化とウェブ公開、さらに関連する技術の進歩は加速するだろう。
ところが、現物や紙媒体での絵図の公開については、研究者の間では一定のコンセンサスが形成されていると考えられるが、最近も出版物を回収する事例が発生しているように、広がりに欠ける状況であるともいえる。そして、ウェブでの公開は課題の抽出や議論が十分に尽くされたとは言えず、議論が広がっていないと指摘できる。
ただし、研究者による、適切な注釈や解説などをつけることで地名や絵図を積極的に出していこうとする動きと、JLA自由委員会の「提供を行ないながら住民や当事者の意見を聞き、図書館職員の責任で検討し合意をつくるために努力する」(51)との考えは、同じ方向性のものであると考えられる。
今後このような状況に追いつくための議論が行われ、また深まっていくことが、資料の利用の可能性を広げるためにも必要になっている。
(1) 嶋田は「最も自由度が高いライセンスで公開したことはきわめて画期的である」と評している。
嶋田学. 図書館・まち育て・デモクラシー 瀬戸内市民図書館で考えたこと. 青弓社, 2019, p. 247-249.
(2) “Library of the Year 2014”. IRI知的資源イニシアティブ. 2014-11-07.
https://www.iri-net.org/loy/loy2014/, (参照 2020-10-15).
(3) 廣岡が用語について「史料用語なり歴史研究の用語としては「絵図」であり、それを一般むけに「古地図」ということがあるという理解でよいだろう」と説明をしていることから、本稿でも絵図で統一する。
廣岡浄進. 特集, 情報化社会と部落史研究:研究機関等による絵図・古地図のウェブ公開. 部落解放. 2018, 759, p. 14.
(4) 国立国会図書館. “日本の絵図・古地図を探す”. リサーチ・ナビ. 2020-08-14.
https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-101029.php, (参照 2020-10-15).
(5) 図書館の自由委員会は、2002年8月まで図書館の自由に関する調査委員会であったが、本稿では区別していない。
(6) 岡田恵子. 徳島大学附属図書館における近世絵図史料の超高精細画像化とその利用公開. 大学図書館研究, 2000, 59, p. 26-39.
https://doi.org/10.20722/jcul.1047, (参照 2020-10-15).
なお同館では、1998年のウェブ公開時から二次利用について特に許可を必要としないこととしており、この取り扱いについても先見性があったと考えられる。
(7) 島根県立図書館要覧. 令和元年度版, 島根県立図書館. 2019, p. 31.
http://www.library.pref.shimane.lg.jp/?action=common_download_main&upload_id=5753, (参照 2020-10-15).
(8) 筆者が2002年のウェブ公開当時、同館職員から説明を受けた内容である。なお、現在は「しまねデジタル百科」に移行しているが、「郷土資料デジタルライブラリー」と同様の設定となっている。
島根県立図書館. “しまねデジタル百科”.
https://www2.library.pref.shimane.lg.jp/webmuseum/, (参照 2020-10-15).
(9) 「電子行政オープンデータ戦略」では、東日本大震災復旧・復興への取組と教訓の節で、「データがPDF、JPEG等で提供されており、機械判読できず人手で再入力する必要があるなど、二次利用が困難なケースや、行政機関ごとにフォーマットが異なり、情報の収集や整理に多くの時間が必要とされるケースが発生するなど、様々な課題も指摘された。」とある。
高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部. “電子行政オープンデータ戦略”. 首相官邸. 2012-07-04. p. 2-3.
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pdf/120704_siryou2.pdf, (参照 2020-10-15).
(10) 野村昌二. 特集, 地図の力 : 時代を旅して歴史をひもとく : 古地図で楽しむ日本再発見. AERA, 2017, 30(8), p. 42-45.
なお、ほぼ同一の内容がウェブに公開されている。
野村昌二. “あのブラタモリがきっかけ? 古地図で楽しむ日本再発見”. AERA dot. 2017-02-19.
https://dot.asahi.com/aera/2017021600097.html, (参照 2020-10-15).
(11) 廣岡. 前掲. p. 21.
(12) 阿南重幸. 特集, 情報化社会と部落史研究:古地図の展示・インターネット公開を考える. 部落解放. 2018, 759, p. 42.
(13) 小野田一幸. “古地図研究と被差別民”. 部落史研究からの発信. 寺木伸明, 中尾健次編著. 部落解放・人権研究所, 2009, p. 251-267., (第1巻 前近代編).
(14) 特集, 情報化社会と部落史研究. 部落解放. 2018, 759, p. 12-47.
(15) 特集, 絵図(古地図)をめぐる資料所蔵機関の課題. 部落解放. 2019, 770, p. 12-51.
(16) 同館は、2020年6月1日から休館している。
大阪人権博物館. “運営継続について”.
http://www.liberty.or.jp/cp_pf/index2015.html, (参照 2020-10-15).
(17) 朝治武. 特集, 差別表現の展示をめぐって:ミュージアムの展示を考える 差別表現を素材に. もやい 長崎人権・学, 2005, 49, p. 4-5.
(18) 吉村智博. 特集, 絵図(古地図)をめぐる資料所蔵機関の課題:絵図(古地図)の公開推進と研究深化の可能性. 部落解放. 2019, 770, p. 14-17.
(19) 廣岡. 前掲. p. 20.
(20) 阿南. 前掲. p. 34.
(21) 小野田一幸, 廣岡浄進, 吉村智博. 特集, 絵図(古地図)をめぐる資料所蔵機関の課題:座談会 絵図(古地図)所蔵機関における保存・展示・研究. 部落解放. 2019, 770, p. 44.
(22) 全国部落史研究会は、2019年6月15日、16日に行われた第25回全国部落史研究大会において、シンポジウム「情報化社会と部落史研究の課題−人名、地名、絵図などの公開に触れて」を開催している。
地名や絵図の公開でシンポ 全国部落史研究大会ひらく. 解放新聞. 2019-07-08. p. 6.
なお本研究大会の内容は、研究会の会誌『部落史研究』で特集されており、同研究会プロジェクトチームが作成しこの大会で示された、絵図のデジタル公開に関する提案試案も掲載されている。
特集, 第25回全国部落史研究大会:全体会:パネルディスカッション 情報化社会と部落史研究の課題—人名、地名、絵図などの公開にふれて. 部落史研究. 2020, (5), p. 2-41.
(23) 2021年1月12日から、一部のデジタル化資料でOCR処理による全文テキストの検索が可能となった。
“2021年1月のお知らせ”. 国立国会図書館デジタルコレクション.
https://dl.ndl.go.jp/information?targetInformationDate=2021-1, (参照 2021-01-18).
なお、NDL「次世代デジタルライブラリー」では、これ以前より、一部資料について、OCRにより生成された全文テキストからの検索を実験的に提供している。
次世代デジタルライブラリー.
https://lab.ndl.go.jp/dl/, (参照 2020-10-15).
(24) 長尾真. 日本図書館研究会第52回(2010年度)研究大会 : 発表4 国立国会図書館の将来と現状. 図書館界. 2011, 63(2), p. 94.
https://doi.org/10.20628/toshokankai.63.2_88, (参照 2020-10-15).
(25) 次の記事では、国文学研究資料館が作製したくずし字データセットを利用した、国立歴史民俗博物館の事例が紹介されている。
くずし字解読AI駆使 デジタル辞典 古文書すらすら 学問分野超えて連携. 読売新聞. 2020-06-06. 夕刊[東京], p. 4.
また、立命館大学と凸版印刷との共同研究による「くずし字解読支援・指導システム」の例や、NDL「次世代デジタルライブラリー」による画像・図版検索サービスの実験的提供の例がある。
“凸版印刷株式会社との共同研究による「くずし字解読支援・指導システム」が紹介されました”. 立命館大学アート・リサーチセンター. 2019-05-13.
https://www.arc.ritsumei.ac.jp/lib/app/news/pc/004140.html, (参照 2020-10-15).
(26) 主張 大阪人権博物館特別展で反差別の可能性広げよう. 解放新聞. 2001-07-02. p. 2.
また関連記事として、次のものがある。
特別展 絵図に描かれた被差別部落民. 解放新聞, 大阪版. 2001-09-03. p. 4.
(27) 部落解放同盟中央本部. “古地図・古絵図刊行および展示に対する基本的考え方について”. 2003-10-20.
http://www.bll.gr.jp/archive/siryo-syutyo2003/guide-seimei-20031110.html, (参照 2020-10-15).
(28) 割石忠典. 特集, 情報化社会と部落史研究:地名・人名と個人情報保護. 部落解放. 2018, p. 27-28.
吉村. 前掲. p. 17.
(29) 部落解放同盟中央本部. 差別表現と糾弾. 解放出版社, 1988, p. 109-112.
(30) 千本英史. “デジタル画像における史料改竄の問題 被差別地域の地名表記の問題をめぐって”. デジタル人文学のすすめ. 楊暁捷, 小松和彦, 荒木浩編. 勉誠出版, 2013. p. 176.
(31) 小野田, 廣岡, 吉村. 前掲. p. 44.
(32) 日本図書館協会. 図書館の自由に関する宣言. 改訂, 1979.
http://www.jla.or.jp/ibrary/gudeline/tabid/232/Default.aspx, (参照 2020-10-15).
(33) 日本図書館協会図書館の自由委員会編. 「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」解説. 第2版, 日本図書館協会, 2004, p. 26.
(34) 提供の自由と論理的矛盾ともいえる制限の項目を入れることについての1979年改訂当時の議論の状況は、次の資料が参考になる。特に、改訂当時危惧された自己規制の問題は現在も続いているといえる。
塩見昇. 図書館の自由委員会の成立と「図書館の自由に関する宣言」改訂. 日本図書館協会, 2017, p. 178-180.
(35) JLA図書館の自由に関する調査委員会. “差別的表現と批判された蔵書の提供について(コメント)“. 日本図書館協会. 2000-11-16.
http://www.jla.or.jp/Portals/0/html/jiyu/sabetsu.html, (参照 2020-10-15).
なお、本コメントは初出時にタイトル表記の不統一があったとのことであり、図書館雑誌には次のとおり掲載されている。
JLA図書館の自由に関する調査委員会. 差別的表現を批判された蔵書の提供について(コメント), 図書館雑誌. 2001, 95(2), p. 88.
また、本コメントにある「『ピノキオ』について」は、次を参照。
“17 『ピノキオ』回収要求と閲覧制限”. 図書館の自由に関する事例33選. 日本図書館協会図書館の自由委員会編. 日本図書館協会, 1997, p. 104-115., (図書館と自由, 14集).
(36) 差別的表現が人権侵害に直結するような資料についての対応は、次が参考になる。
山口真也. “西河内さんに聞いてみよう! 2 人権・プライバシーをめぐる資料の提供制限についてもっと知りたい”. 図書館ノート 沖縄から「図書館の自由」を考える. 教育史料出版会, 2016, p. 106-107.
喜多由美子. こらむ図書館の自由 私たちはひとりではない. 図書館雑誌. 2012, 106(4), p. 227.
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/jiyu/column04.html#201204, (参照 2020-10-15).
(37) 三苫正勝. こらむ図書館の自由 問題のある資料は論議の場に. 図書館雑誌. 2002, 96(4), p. 223.
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/jiyu/column03.html#200204, (参照 2020-10-15).
(38) 熊野清子. 報告(2)『「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」解説』の増補改訂について. 図書館の自由. 2020, (110), p. 14-19.
http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/jiyu/newsletter_110(202011).pdf, (参照 2020-11-10).
(39) 日本図書館協会図書館の自由委員会編. 前掲. p. 26-28.
(40) 日本図書館協会図書館の自由委員会. “図書館資料の収集・提供の原則について(確認)”. 日本図書館協会. 2015-06-29.
http://www.jla.or.jp/portals/0/html/jiyu/cmnt201507.html, (参照 2020-10-15).
村岡和彦. こらむ図書館の自由 「収集の自由」は制限条項を持っていない. 図書館雑誌. 2017, 111(2), p. 67.
http://www.jla.or.jp/committees/jiyu//tabid/640/Default.aspx#201702, (参照 2020-10-15).
(41) 出版社からの回収・利用制限要請. 図書館の自由. 2019, 104, p. 5.
http://www.jla.or.jp/committees/jiyu/tabid/638/Default.aspx#mokuji104, (参照 2020-10-15).
また、次で紹介されている事例についても、同様の問題で回収されたものとみられる。
西河内靖泰. “第9分科会 図書館の自由 図書館利用のプライバシー保護:基調報告 図書館の自由この1年”. 第105回全国図書館大会三重大会記録. 第105回全国図書館大会三重大会実行委員会編, 第105回全国図書館大会三重大会実行委員会, 2020, p. 179.
(42) 日本博物館協会編. 博物館の原則・博物館関係者の行動規範. 2012. 30p.
https://www.j-muse.or.jp/02program/pdf/2012.7koudoukihan.pdf, (参照 2020-10-15).
(43) 抗議が殺到したため、開会3日で展示が中止(のちに鑑賞抽選制で再開)した「あいちトリエンナーレ2019 表現の不自由展・その後」の教訓を生かすために作成されている「あいち宣言・プロトコル」最終案では、「博物館の原則・博物館関係者の行動規範」を参考に作成された「美術館の原則と美術館関係者の行動指針」への言及がある。
あいちトリエンナーレ. “「あいち宣言・プロトコル」を作家代表から受け取りました”. 2019-12-18.
https://aichitriennale.jp/news/2019/004419.html, (参照 2020-10-15).
なお、「美術館の原則と美術館関係者の行動指針」は、次を参照。
全国美術館会議. 美術館の原則と美術館関係者の行動指針. Web公開版. 2017. 26p.
http://www.zenbi.jp/getMemFile.php?file=file-93-18-report.pdf, (参照 2020-10-15).
(44) 特集, 負の歴史を伝える博物館. 博物館研究. 2018, 53(12), p. 6-21.
(45) 渡辺佳子. 特集, 公文書館法の10年 −法・制度面からの検証 : 文書館における個人情報の取り扱いを考える. 記録と史料. 1998, 9, p. 14-30.
http://www.jsai.jp/pdf/+9(04)kirokuWatanabe.pdf, (参照 2020-10-15).
(46) 国立公文書館. これからの公文書館の公開制度−平成20年度実務担当者研修会議の議論から. アーカイブズ. 2009, 35, p. 1-72.
http://www.archives.go.jp/publication/archives/category/no035, (参照 2020-10-15).
(47) 国立公文書館. 01 特集 歴史公文書等の利用に係る審査について(個人情報を中心に)平成25年度アーカイブズ研修IIより. アーカイブズ. 2014, 53, p. 1-26.
http://www.archives.go.jp/publication/archives/category/no053, (参照 2020-10-15).
(48) 小野田, 廣岡, 吉村. 前掲. p. 35.
(49) 2018年の著作権法改正により、海外の図書館でもデジタル化送信の参加館となることが可能となり、2021年1月現在、中国・イタリア・スペインの各1館の図書館がサービスを開始している。
“List of the “Digitized Contents Transmission Service for Libraries” partner libraries”. National Diet Library Digital Collections.
https://dl.ndl.go.jp/en/soshin_librarylist.html, (accessed 2021-01-21).
(50) 奥野吉宏. こらむ図書館の自由 図書館向けデジタル化資料送信サービスと蔵書の利用制限. 図書館雑誌. 2018, 112(10), p. 659.
http://www.jla.or.jp/committees/jiyu//tabid/640/Default.aspx#201810, (参照 2020-10-15).
ただし本コラムでは、自由宣言副文にある「時期を経て再検討されるべき」ということにも言及している。
(51) JLA図書館の自由に関する調査委員会. “差別的表現と批判された蔵書の提供について(コメント)”. 日本図書館協会. 2000-11-16.
http://www.jla.or.jp/Portals/0/html/jiyu/sabetsu.html, (参照 2020-10-15).
Ref:
日本図書館協会図書館の自由委員会編. 図書館の自由に関する事例集. 日本図書館協会, 2008, 279p.
日本図書館協会図書館の自由委員会編. 図書館の自由を求めて 「図書館の自由に関する宣言」採択50周年座談会・60周年記念講演会記録集. 日本図書館協会, 2016, 117p.
塩見昇. 日本図書館協会図書館の自由委員会編. 図書館の自由に関する宣言1979年改訂のころ 塩見昇講演会記録集. 日本図書館協会, 2018, 79p., (JLA Booklet, no.3).
石塚栄二先生の卆寿をお祝いする会編. 読書の自由と図書館 石塚栄二先生卆寿記念論集. 日本図書館研究会, 2017, 234p.
西河内靖泰. 知をひらく 「図書館の自由」を求めて. 青灯社, 2011, 368p.
松井茂記. 図書館と表現の自由. 岩波書店, 2013, 260p.
[受理:2021-01-21]
奥野吉宏. 絵図・古地図のウェブ公開と差別表現への対応の現状. カレントアウェアネス. 2021, (347), CA1994, p. 17-21.
https://current.ndl.go.jp/ca1994
DOI:
https://doi.org/10.11501/11648995
Okuno Yoshihiro
Current Issues in Publishing Historical Maps Containing Discriminatory Expressions on the Web