CA1948 – 第12回アジア太平洋議会図書館長協会(APLAP)大会 / 春原寛子

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カレントアウェアネス
No.339 2019年3月20日

 

CA1948

 

 

第12回アジア太平洋議会図書館長協会(APLAP)大会

調査及び立法考査局調査企画課連携協力室:春原寛子(すのはらひろこ)

 

はじめに

 東はキリバスから西はトルコまで、南はニュージーランドから北はモンゴルまで、広大なアジア及び太平洋地域にある40の国・地域の議会図書館長等が参加する組織が、「アジア太平洋議会図書館長協会(Association of Parliamentary Librarians of Asia and the Pacific : APLAP(アプラップ))」である。

 去る2018年10月31日から11月2日、APLAPの大会が、国立国会図書館(NDL)主催の下、東京で開催された(1)。本稿では、APLAPの概要と、第12回APLAP大会の様子を紹介する。

 

APLAPの概要

 1988年8月、第54回国際図書館連盟(IFLA)年次大会(シドニー大会)の議会図書館分科会で、地域協力についてグループ討議が行われた際、日本を含むアジア地域諸国の間で、議会図書館の国際協力機関を設置することが合意された。その後、韓国国会図書館長やパキスタン国民議会図書館顧問の積極的な活動によって、1990年5月にAPLAPの第1回大会(ソウル)が開催され、その場でAPLAPの憲章及び規則が採択された(2)。憲章及び規則において、APLAPの目的は、アジア太平洋地域における国・地域の議会図書館及び議会の調査・情報サービスを担う組織間の相互協力及び知識共有を促進することと定められた(3)

 アジア太平洋地域の国・地域の議会図書館や調査・情報サービスを提供する機関は、年会費を負担すればAPLAPの会員になることができる(4)。国・地域によっては、議会制度や組織の状況から、複数機関が参加するケースもある。2018年12月現在、APLAPには40の国・地域から59機関が参加しており(5)、日本からはNDLが参加している。

 APLAPの主な運営は、会長、副会長2人(アジア担当と太平洋担当)、事務局長、会計・財務担当の5役で構成する執行委員会によって行われている。各役職の任期は基本的に1期2年であり、同じ役職に就くことができるのは2期までとなっている。このほか、事務局が設置されており、APLAPの総会運営、会費徴収、公式ウェブサイトやSNSの維持管理等の実務を担当している(2018年12月現在、事務局の職務は、専らオーストラリア議会図書館が担っている)。

 APLAPの大会は、原則として2年ごとに開催される(6)。大会では、設定されたテーマに沿って、参加者が報告や議論を行う。開催地は会員のいる国・地域の持回りで、日本は過去にも2000年10月に第6回大会を「議会図書館.新時代の調査・情報サービス」というテーマで東京において開催している。

 また、大会期間中には、組織運営に関する協議を行うAPLAP総会が必ず開催される。

 

第12回APLAP大会

 NDL開館70周年に当たる2018年、その記念事業の一環として、第12回APLAP大会が日本で開催されることとなった。日本での大会開催は18年ぶりである。

 また、折しも2017年4月に開催された第11回大会(ソウル)において、NDLの坂田和光副館長(当時は調査及び立法考査局長)が新APLAP会長に選ばれた。

 第12回大会は、東京都千代田区の都市センターホテルをメイン会場とし、10月31日から11月2日までの3日間の日程で行われた。どの参加機関にとっても組織運営上の基本的な課題ということから、大会のテーマに「議会図書館-立法調査サービスの人材育成」(Developing Human Resources for Parliamentary Libraries and Research Services)が選ばれた。

 大会には、日本を含む20の国・地域、27の機関から総勢50人が参加した。この中には、APLAPとNDLが共同で渡航費や滞在費等の全額を助成した参加者4人と、NDLが一部費用を助成した参加者5人が含まれている。助成対象者の選考に当たっては、志望理由やこれまでの自己研鑽の取組について、APLAP執行委員会役員が厳正な審査を行った。

 大会の主な内容は、次のとおりである。

(1)開会式

 NDLの羽入佐和子館長に続いて坂田会長が挨拶を行い、広くアジア太平洋の国・地域から集まった参加者に歓迎の意を表した。

 

(2)基調講演

 続いて、IFLAの「議会のための図書館・調査サービス分科会(IFLAPARL)」会長であり、英国議会下院図書館情報管理部長のワイズ(Steve Alan Wise)氏が基調講演を行った。ワイズ氏は、図書館及び調査サービスの質を支える職員育成の重要性を述べ、英国議会下院図書館の人材育成に関する取組を紹介した。豊富な経験に基づく内容に多くの参加者が触発され、講演後は活発な質疑が行われた。

 

(3)APLAP総会

 大会1日目に行った総会では、坂田会長が司会を務めた。まず、前大会の議事録の承認、財務報告等の定例議事が実施された。今回の財務報告では、APLAPの財務状況を改善させるため、会費の額を3段階にする方法が提案され、次回大会までに検討することとなった。

 次に、第11回大会で当時APLAP会長であったオーストラリア議会図書館のヘリオット(Dianne Heriot)館長から発議のあった「APLAP憲章及び規則の改正」が議題となった。APLAPの憲章・規則は1990年に制定されて以来28年間変わっていなかったが、APLAP執行委員会は、社会の変化と現状を考慮し、会員要件の明確化や各種手続きの合理化等を取り入れた改正草案を1年以上かけて作成した。総会では、坂田会長が改正のポイントについて説明し、参加機関の賛成多数で改正は可決された。

 続いて行われた次期の執行委員会役員選挙では、新しい会長にフィリピン議会下院事務局立法情報源管理部事務次長のパンギリナン(Edgardo H. Pangilinan)氏が選出された。副会長(太平洋担当)と会計・財務担当は交代し、候補者がいなかった副会長(アジア担当)は空席となった。

 総会の最後に、次回大会の主催機関を募集したところ、ニュージーランド議会図書館が立候補し、第13回大会は2020年にニュージーランドで開催されることが決まった。

 

図1 総会の様子

 

(4)セッション(各国の発表)

 1日目に1回、2日目に2回、合計3回に分けて行ったセッションでは、大会テーマに沿って21機関がそれぞれの課題や取組について報告した。報告をした機関の置かれている状況は様々で、例えば議会図書館・調査サービスに直接関わる職員数を見ても、パプアニューギニア・ブーゲンビル自治州議会事務局の1人から、NDL調査及び立法考査局の約190人まで大きな幅がある。それゆえ人材育成に対する各機関の姿勢も多様であり、報告内容は、人員不足を訴えるもの、研修を紹介するもの、人材育成の戦略的計画を紹介するものなど、非常に多岐にわたった。各機関の報告は、いずれもより良いサービスの提供を目指す努力が示されており、参加者からは大きな刺激になったという声が聞かれた。

 

図2 セッション内のプレゼンテーションの様子

 

(5)閉会式

 ワイズ氏の総評、カンボジア議会下院図書館のチャット(Khoeuth Chhut)館長による挨拶の後、坂田会長が閉会の挨拶を行った。

 

(6)その他のプログラム

 11月1日夕方にNDL東京本館の書庫等を、11月2日に国会議事堂(衆議院)及び江戸東京博物館を見学した。

 また、10月31日の夜には衆参両院議長主催歓迎会が、11月1日の夜にはNDL館長主催歓迎会が開催された。11月1日の昼には、APLAP主催昼食会と文化体験(けん玉)が行われた(7)

 

表 大会スケジュール

10/31(水) 午前
開会式
基調講演:ワイズIFLAPARL会長
午後 APLAP総会
セッション1(6機関)
<衆参両院議長主催歓迎会>
11/ 1(木) 午前 セッション2(8機関)
<APLAP主催昼食会> 
※けん玉体験
午後 セッション3(7機関)
閉会式
NDL東京本館見学
<NDL館長主催歓迎会>
11/ 2(金) 午前 国会議事堂(衆議院)見学
午後 江戸東京博物館見学

 

おわりに:APLAPの課題と展望

 今回の大会は、テーマが人材育成という議論のしやすい課題であったことも相まって、参加者同士が互いの知識や経験を共有し、人脈を広げる貴重な機会となった。

 しかしながら、大会全体を通じて、APLAPの抱えている次の課題が浮かび上がったのではなかろうか。

 まず APLAPの財政に関する課題が挙げられる。前述した会計・財務担当による段階別会費の提案は、財務の安定を図ることを目的としたものである。この提案は次回大会に向けての宿題となったが、財政に余裕のない機関も多い中、合意は簡単ではないだろう。

 また、大会を主催できる国・地域が限られていることも課題である。40の国・地域が参加する中、オーストラリア、日本、韓国は既に大会を2度開催している。ニュージーランドも、次の大会が2度目である。より多くの国・地域が大会を主催できるよう、開催に係る負担を軽減するといった工夫が必要となる。

 さらにもうひとつ、世界の情報環境等が大きく変化する中、憲章・規則が長らく改正されなかったことに表れているように、これまでのAPLAPの運営体制は必ずしも万全とは言えない。各機関が業務に忙しく、またAPLAP執行委員会の役員が数年おきに交代する状況において、実現は難しいが、APLAPの運営体制の強化は大きな課題である。

 このように解決すべきAPLAPの課題は少なくないが、今大会で憲章・規則が改正され、段階別会費の提案がなされたことは、新しいAPLAP作りが始まったことを意味している。その礎石を築いたという点で、NDLは大きな役割を果たしたと言える。今後もNDLは、APLAPの活動を通じた会員の連携強化と、アジア太平洋地域の議会図書館、調査サービスの発展に寄与していく。

 

図3 集合写真


(1) 今大会の概要と写真は、APLAP公式サイトで公開されている。
“12th APLAP Conference – Tokyo”. APLAP.
http://asiapacificparllibs.org/2018-aplap-conference-japan/, (accessed 2019-01-25).

(2) 藤田初太郎. 議会図書館の国際協力:「アジア太平洋議会図書館長協会」の設立大会に参加して. 国立国会図書館月報. 1990, (353), p. 2-9.
調査及び立法考査局. 新時代に向かうアジア太平洋議会図書館長協会(APLAP):第六回東京大会報告. 国立国会図書館月報. 2000, (477), p. 2-9.
なお、第1回大会の2日前にプレ大会が台北で開催された。

(3) “About APLAP”. APLAP.
http://asiapacificparllibs.org/about/, (accessed 2018-12-05).

(4) 具体的には、機関の長(又は同等の職位にある者)がAPLAPの会員(Institutional Member)になる。
Constitution “3. Membership”. “Constitution and By-Laws”. APLAP.
http://asiapacificparllibs.org/about/constitution/, (accessed 2019-01-25).

(5) APLAPの会員は公式サイトを参照。
“Members of APLAP”. APLAP.
http://asiapacificparllibs.org/members-of-aplap/, (accessed 2018-12-05).

(6) 2006年の第9回大会(ウェリントン)以降しばらく大会が開催されない時期が続いた。しかし2015年に第10回大会(キャンベラ)が開かれて以降、2017年の第11回大会(ソウル)、2018年の第12回大会(東京)と続いている。

(7) 当日の様子は国立国会図書館月報2019年2月号を参照。
第12回APLAP大会. 国立国会図書館月報. 2018, (694), p. 18-21.
https://doi.org/10.11501/11236030, (参照 2019-02-05).

 

[受理:2019-02-05]

 


春原寛子. 第12回アジア太平洋議会図書館長協会(APLAP)大会. カレントアウェアネス. 2019, (339), CA1948, p. 16-18.
http://current.ndl.go.jp/ca1948
DOI:
https://doi.org/10.11501/11253594

Sunohara Hiroko
The 12th Conference of the Association ofParliamentary Librarians of Asia and the Pacific