CA1378 – UNIMARCロシア版 / 酒井剛

カレントアウェアネス
No.259 2001.03.20


CA1378

UNIMARCロシア版

所蔵目録のデータベース化がロシアでも急速に進展しているが,書誌データを表現するフォーマットは,これまで各図書館が独自に開発したものが並存してきた。西側諸国との情報交換を意識して,UNIMARCやUSMARC等国外の有力なフォーマットのいずれかへの準拠を考えようという暗黙の合意は存在したようだが,図書館間の連携は進んでいなかった。

このままではインターネット時代の国内情報資源の共有に差し支えるということで,1995年10月から,国内の主要図書館から集まった専門家グループがロシア図書館協会のもとで,UNIMARCに準拠するロシア共通の書誌データベースフォーマットの開発に着手した。一方,1997年にユネスコの援助を受けて,ロシア文化省がLIBNET計画を開始した。この計画はロシア全土の図書館をコンピュータネットワークで結び,国内外の情報資源への自由なアクセスを保障することを目指す。そのためには当然,共通のフォーマットが必要とされる。

両者の目的は合致し,文化省の後援のもと,フォーマット開発は国家的プロジェクトとして推進された。1998年1月の文化省令で,書誌データ交換フォーマット(図書・逐次刊行物の部)の完成が示されたうえで,文化省傘下の図書館が書誌データを交換する際にこのフォーマットの使用を義務づけること,他省庁等に対してこのフォーマットの利用を推進することなどが決められた。フォーマットはUNIMARCマニュアルの第2版に対応して作成され,その後の改訂もフォローしている。すぐに国内約500の大規模図書館に配布され,導入が始まった。各図書館の既存のデータを新しいフォーマットに変換するソフトの開発も進んでいる。その後,楽譜・地図など他の形態の資料と典拠データのためのフォーマットも完成した。

ロシアでは図書館の種類によって管轄する省庁等が異なっているが,なかでも文化省は,ロシア国立図書館をはじめ,一般市民が利用するいわゆる公共図書館を所管する一方,省庁間にまたがって図書館事業を調整する大きな役割を担っている。その文化省が,管轄する機関に対して新しいフォーマットの使用を義務づけたことは大きい。今後,他省庁等が所管する大規模図書館(ロシア科学アカデミー図書館,モスクワ大学図書館等)がどう対応するか,また,国外からの援助も含めて資金を確保できるかどうかが全面的普及への鍵となるであろう。

こうした取り組みによって,他館の書誌データへのアクセスが容易になること,総合目録の作成が容易になること,共同目録作業が可能になることが期待される。新しいフォーマットに基づき,ロシア国立図書館(サンクトペテルブルグ)が件名標目表と著者名・団体著者名典拠ファイルを,保健省所管の国立中央医学図書館が医療保健分野の件名標目表を完成させ,他館への配布を開始した。国立中央医学図書館の件名標目表は,米国国立医学図書館の医学件名標目表との互換性も考慮して作成されている。将来的には,件名や典拠を全国的に統一していくことを視野に入れている。また現在,国立公共科学技術図書館のもとで,OCLCをモデルとする共同目録センターの実験が進行中である。諸外国ではUNIMARCを使用し,または使用を計画している機関が増えつつあるなか,今後,ロシアでもUNIMARCが主流になることが予想される。

酒井 剛(さかいたけし)

Ref: Tsvetkova, Irina et al. Adaptation of UNIMARC as Russian exchange format. Int Cat Bibl Control 28 (2) 54-55, 1999
Ministerstvo kul'tury rossiiskoi federatsii et al. Rossiiskii kommunikativnyi format. [http://www.nlr.ru/rba/rusmarc/index.html] (last access 2000. 12. 8)