CA1374 – 新しい図書館像の開拓−ICU図書館新館オープン− / 齋藤健太郎

カレントアウェアネス
No.258 2001.02.20


CA1374

新しい図書館像の開拓―ICU図書館新館オープン―

図書館史の中で,時に図書館の姿は大きく変わる。例えば,閉架式から開架式へ,カード目録から機械可読目録への変化によって,図書館の光景は一変した。日本でこうした変化を先駆的に推し進めてきた館として,国際基督教大学(ICU)の図書館が挙げられる。

そのICU図書館で2000年9月に,新館が開館した。建設の目的は,電子情報利用のための設備の確保と,書庫の拡張である。名称は,建設資金の提供者に因み,ミルドレッド・トップ・オスマー図書館(以下オスマー図書館)とされた。オスマー図書館は,従来の図書館棟に隣接していて,渡り廊下で連結されている。隣の旧棟では従来どおり,紙媒体資料が開架式で提供される。それに対しオスマー図書館では,電子情報と閉架資料が利用できる。

オスマー図書館はまず,電子情報の利用に便宜を図っている。書架がない代わりに豊富な端末がある。これにより,Webサイトの閲覧に加え,CD-ROMや,利用契約を結んだオンラインデータベース,オンラインジャーナルの利用ができる。さらに,同じ端末が文書作成等にも使えるため,館内利用の紙媒体資料と,電子媒体の情報とを組み合わせて,論文作成に活用できる。またアクセス面でも工夫がなされており,雑誌をタイトルで検索した結果の画面には,紙媒体の雑誌の書誌事項に加えて,オンラインジャーナルへのリンクも表示されるようになっている。

オスマー図書館はまた,電子情報の利用教育にも適した設備を備えている。メディアリテラシー教育を念頭に作られた「マルチメディアルーム」には,50人分の受講者席にパソコンが備えられ,正面に各種メディアに対応したスクリーン2面がある。ここでは図書館の利用教育に加え,正規の講義も行なわれる。

さらに画期的なのは,自動化書庫である。これは自動出納機能を備えた閉架書庫で,約50万冊が収容可能である。現在は,約15万冊が収められている。これらは従来,開架書架に収まらずに外部倉庫に預けられていたもので,当時は出納に1日を要した。これらの資料がサイズ別にコンテナに収められ,コンテナが書庫内部に配置されている。利用者は検索結果を見て,自動化書庫所蔵の表示があれば,その画面から出庫を指示する。すると制御装置が,請求資料の入ったコンテナの所在を調べ,職員の受け取り口まで自動で搬送する。職員は端末で資料の出庫処理をし,利用待ち書架に移す。この処理に要するのはわずか数分である。また,返却作業も容易である。職員が空きのあるコンテナを呼び出し,端末で入庫処理をして資料を納め,書庫へ戻る指示を出せばよい。資料の大きさと返却量に合いさえすれば,コンテナはどれでも構わない。

こうした自動化書庫には,数々の利点がある。まず出納が速い。また分類排架ではないので,誤排架の問題もなく,空間が有効活用できる。さらに出納員がいらず,無人なので保存条件も整えやすい。

オスマー図書館開館によって,ICU図書館が開館時から標榜してきた全館開架方式は,47年で幕を閉じることになった。しかし,新時代を意識し,電子情報の提供設備に加えて,日本で初めて自動化書庫を導入したオスマー図書館は,再び先駆として注目されることであろう。

齋藤 健太郎(さいとうけんたろう)

Ref:国際基督教大学図書館 The Mildred Topp Othmer Library 国際基督教大学図書館 [2000]
権敬淑 キャンパス2001 朝日新聞朝刊〔東京〕 2001.1.21(37面)