CA1373 – 子どもの本の索引−その意義と在り方− / 汐崎順子

カレントアウェアネス
No.258 2001.02.20


CA1373

子どもの本の索引―その意義と在り方―

1997年,英国において,子どもの「知識の本」の索引の質を検証し,より効果的な索引作成のための改善策を提言することを目的とした調査が行われた。調査の対象となったのは,自立心や好奇心を大きく発達させる年代として重視されている7〜11歳の子どもと,この年齢層の子どもに関わる大人である教師,図書館員,親,索引作成者,出版者などである。

この調査の最終報告書では,まず第一に「すべての子どもの知識の本には索引が付けられるべきである」という提言がなされている。回答者の99%が索引の必要性を認識していることや,子どもにいたっては,本には当然索引があると考えていたため,たまたま索引のない本に遭遇したときの困惑ぶりが報告されている。実際の図書購入の際も,索引の有無が判断規準の一つになると7割以上の図書館員が指摘し,出版者側も販売に対する影響力を認識している。

索引作成者についての設問では,回答した出版者の半数は専門家には依頼しておらず,残りの出版者も常に専門家に依頼しているわけではない,ということが明らかとなった。この場合,実際に索引作成に携わるのは編集者か著者であり,索引の作成自体を付加的な作業と見なしている出版者の姿勢が表れている。これに対して,報告書では「索引は専門の索引作成者によって作られるべきである」という第二の提言がなされている。さらに,子どもの索引の作成者に必要な独自の資質として,個々の本の内容についての知識に加え,対象となる子どもについての知識が不可欠であることも示されている。

調査では,子どもの発達段階における理解能力や思考経路を検証し,子どもの本の索引に独自に必要とされる要素を見出している。まず挙げられているのは,内容の簡潔さである。余計な情報はかえって子どもの混乱を招くため,主題についての付随的な説明は索引から除外し,小見出しや相互参照の使用は最小限に押さえ,目的とする情報に子どもが最短距離で的確に到達できるように索引を構成しなければならない。また,参照等を用いた場合は,適切な凡例を付けてわかりやすく説明することが必要である。この作業のためには,子どもがどういう言葉を検索の鍵として思い浮かべるのか,という知識が要求されるだろう。

次に挙げられているのは,子どもの理解能力の未熟さを補完するための要素である。アルファベット一覧表や,見やすく理解しやすいものにするための索引語のセクション分けと各々のセクションヘの見出し語の付与などが具体的に示されている。また,複数ページにまたがる記載を示すハイフンの使用が子どもの誤解と混乱のもとになっていることも指摘されている。カンマで区切り,該当するページをすべて表示する方法が彼らにとっては効果的である,とされている。

また,子どもの本では,文章と同様に絵も大きな情報源であることも独特な要素である。絵の情報の索引化と,記号や囲み文字等を使った他の索引語との明確な区分の配慮が必要だとされている。

報告書では,索引の利用指導も重視されている。これは教師や図書館員の責務であるが,その前提として適切な索引,すなわち簡潔・正確・包括的な索引の存在が必須であろう。

現状では,子どもの本の索引にはまだ問題点や課題が多いが,その重要性と必要性の認識が徐々に高まっているのは確かである。今後の索引の質の向上に期待したい。

児童図書館研究会:汐崎 順子(しおざきじゅんこ)

Ref: Williams, P. L. et al. Indexing children's information books. Indexer 21(4) 174-179, 1999
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Gordon, Cecilia. Teaching the young to use indexes. Indexer 13(3) 181-182, 1983