CA1217 – スターの威力が生み出したLAPL創立記念日の戦利品 / 中島尚子

カレントアウェアネス
No.230 1998.10.20


CA1217

スターの威力が生み出したLAPL創立記念日の戦利品

図書館の運営資金の調達はどの国においても重要かつ困難な問題であろう。しかし,映画の都ハリウッドを擁するロサンジェルス公共図書館(LAPL)のやり方は,持てるものを有効に生かした,華やかで魅力的なものであったようだ。

1997年11月17日,LAPL財団は図書館設立125周年を祝って,70人のスター総出演による募金のための夜会を開催した。それは賓客が一人前300から800ドルの料理を選択し,お好みの俳優キャリー・フィッシャー,デニス・ホッパーやマイケル・ヨーク,あるいは作家のジェームズ・エルロイやスー・グラフトンと親しく食事できるというものであった。

このLAPLの豪勢な晩餐会の企画は,ニューヨーク公共図書館(NYPL)が1983年以来,隔年で行っている「Tables of Content」の晩餐会に想を得たものだ。1995年に100周年を迎えたNYPLは,数多くのパーティに加えて第7回目の上記晩餐会を開催し,参加者は1人350ドルでしゃれた余興や懇談を楽しみながら食事をした。そしてその一晩でNYPLはその研究図書館部門のための資金を32万5,000ドル獲得したという実績がある。

金ぴかの町ハリウッドといえども,このような晩餐会の実施は簡単なことではなく,1年がかりの計画の上,ボランティアや職員が膨大な労働時間を費やして,スターの集結する大晩餐会の実施にあたった。

第1段階では,個人や団体に計画への参加を呼びかけた。次には,作家グェン・デイビスを説得して協力を得,文壇での宣伝活動を始めた。彼女はアメリカ図書館協会(ALA)と共同で「図書館を愛する作家連」を設立し,作家,文筆家らに働きかけて募金活動を行い,それによって予算逼迫により資料購入の凍結や職員解雇を余儀なくされていた1990年頃の図書館の救済に尽力したという功績のある人物である。LAPL財団専務理事ホフマン(Evelyn Hoffman)がAmerican Libraries誌に語ったところによれば,デイビスが「はじめの24人の作家を我々のために獲得してくれた」後は,他の著名人らの参加を得やすくなったという。また,ユナイテッド航空やロサンジェルスのホテルからは航空料金や宿泊の無料提供があり,それによって,フランク・マッコート,リズ・スミスやジョージ・プリンプトンのような東海岸の文学者たちの参加も促された。

結局,この一晩でLAPLは,925枚のチケットの売上げから30万ドル以上の「仮想電子図書館プロジェクト」のための資金を獲得した訳だが,資金を集められただけではなく,LAPLへの注目度を上げられたことにも大いにホフマンは意義を感じたようだ。また彼女は,「ほとんど一度も図書館に来たことのない人も含む,様々な階層の人々を巻き込み」,この一斉に行われた夕食会は「L.A.を一晩,田舎町の雰囲気に変えてしまった」と言う。

創立記念フィーバーは,2晩後に100周年を迎えたニューヨークのブルックリン公共図書館(BPL)にも及んだ。BPLは1年にわたって一連の100周年記念行事を行っていたが,11月19日にはBPL図書館財団の発足と併せて100周年記念祝典を贅沢に行ったのである。ブルックリン生まれの俳優,ハーベイ・フィアースタインがホストとして黒蝶ネクタイ着用(準正装)の式典の司会を務め,映画製作者リック・バーンズ,出版者アール・グレイブス,作家ピート・ハミル,そしてパフォーミング・アーティストのレナ・ホーンがBPLから表彰された。

もちろん,大半の図書館はこうした派手な方法によってではなく,もっと地道に図書館運営のための募金活動を行っている。しかし,そうした場合でも,有名フットボール選手や漫画のキャラクターをポスターに起用したり,地元の中小企業に後援を働きかけるなど,人々の関心を引き,図書館への支援をアピールする様々な手段を工夫しているのである。

中島 尚子(なかじまなおこ)

Ref: Am Libr 29 (1) 48-50, 1998; 27 (1) 36, 1996; 23 (7) 602, 1992