カレントアウェアネス
No.246 2000.02.20
CA1305
司書も逃げ出す低賃金
ニューヨーク市の三つの公共図書館,つまりニューヨーク公共図書館(NYPL:マンハッタン,ブロンクス,スタテンアイランド所管),ブルックリン公共図書館(BPL)およびクイーンズボロ公共図書館(QBPL)の三館の職員組合が市議会に対して労働運動を開始し,通常は組合と対立する図書館長たちもこれに同調している。何故ならば,ニューヨーク市の公共図書館は今,危機的な状況にあるからだ。続々と司書が辞めていき,司書資格も実務経験もない人々に,業務の多くを依存するようになりつつあるからなのだ。
三館の司書の初任給は年間31,296ドルである。この額は,アトランタやサンフランシスコといったような他の都市の40,000ドル以上と比べると,はるかに低い。この低給与を理由に,ベテラン司書たちは今次々と,ニューヨーク市を離れ,数千ドル給与の高い近隣の図書館に転職している。例えば,QBPLでは,1997年のたった1年間に,司書の17パーセントが転職した。この状態が続けば,6年後のスタッフは新人と研修生だけになってしまう。
1998年に,図書館長たちと組合とは,市長に対して「司書の給与を改善する」よう申し入れた。労務担当の反応は同情的であったが,「この要求をのむと,警官や教員といった大組合が,便乗して給与改善要求を始めるのではないか」という懸念から,結局退けられた。
館長たちは,市議会の公聴会などで司書の給与改善の必要性を公に訴えてきたが,効果はあがっていない。こうした事態に,組合員は『司書が生きていくために最低限の給与を』と書かれたバッジと黒い腕章を付けて,「資料購入費は増えているのに,司書と事務職員の給与は低いままだ」というビラを撒いている。
佐藤 泰幸(さとうやすゆき)
Ref: Oder, Norman. New York City PLs face crisis: low salaries drive staff away. Libr J 124 (18) 12-13, 1999