CA1147 – 図書館員の新しい役割・変わらぬ使命 / 河野麗子

カレントアウェアネス
No.217 1997.09.20


CA1147

図書館員の新しい役割・変わらぬ使命

電子図書館,電子出版などという言葉が頻繁に耳にされる現在,図書館も電子化の波にさらされているが,そこで働く図書館員の仕事も急激に変化しつつある。

Library Journal誌は図書館員の仕事がいかに変化しつつあるか,そして何がその要因かについてアンケート調査を行った。調査の詳細は明らかでないが,千人以上の図書館専門職員およびサポートスタッフが回答した。

調査によると,この1年で仕事が変化したと回答した図書館員は6割以上,また,4分の3以上の人々がこの3年で変化したと回答している。この1年で変化したとの回答を館種別に見ると,公共図書館で59%,大学図書館で66%,専門図書館で67%と大差なく,いずれの図書館においても図書館員が仕事の根源的変化を感じていることが分かる。ではその要因はというと,第一にあげられたのは技術の進歩である。次にリエンジニアリング,第三にダウンサイジング・経費削減と続く。

今回の調査に寄せられた意見の中からいくつかを紹介する。

1. 図書館員は情報社会のリーダーシップをとっていくべきである

米国の図書館においては,既にインターネットを通じてのレファレンスサービスなども普及してきつつあり(CA982,CA1118CA1122参照),インターネットや電子出版物が従来の図書館業務にもたらした変化は大きい。うっかりしていると情報は図書館の頭越しに流通し,図書館など不要になる日が来る。そんな極論もささやかれる中,図書館員は図書館の役割をどのように規定するか。調査に寄せられた回答からは現場図書館員の模索がうかがえるが,多くの意見では図書館員は情報エキスパートとして機能すべきだとしている。これまでインターネット利用に関しては主にレファレンスライブラリアンが関わってきたが,児童図書館員もカタロガーも共に情報技術の知識が必要になってくると予想される。

2. インターネット時代の様々な要求に応えるためには図書館組織を見直す必要がある

電子化時代といっても従来の紙メディアがなくなったわけではない。多くの図書館では従来の図書館業務に併せてネット上の業務をかかえ込み,それを何人かのスタッフに背負わせて対応してきたが,各人の献身的長時間労働で対応するには限界がある。LANやインターネットを扱い,新技術に関するトレーニングを行い,Webサイトのメンテナンスをする部局を創設すべきである。

3. 新しい仕事の出現が図書館のヒエラルキーを揺るがしている

米国の図書館の職員構成は図書館学修士号(MLS)を持った専門職員とサポートスタッフから成っているが,こうしたはっきりとした区別の枠組みが,仕事の機械化が進むにつれ揺らぎ始めている。十分な経験と能力のあるスタッフが,いまやより多くの仕事をこなしているのに,単に資格を持たないために正当に評価されていない,また,情報技術の分野で力を発揮する機会を与えられていないとする不満も多い。

4. インターネットは万能ではない

図書館が電子化に向かう動きは避けがたいものとはいえ,一方にはインターネットによるサービスに懐疑的な人々もいる。コンピュータは道具にすぎないのに,我々はあまりにもそれに踊らされている。インターネットには有用な情報もつまっているが,そうでない様々なレベルの情報が混在している。人々はネットが全ての問題を解決してくれると思いがちだが,それは誤った認識であろう。

その他,予算の問題や各図書館のめざすサービスのあり方によって意見は様々だが,いずれにせよ図書館の役割を,情報とそれを求める利用者を結びつけるという最も基本的な点に求めている。変化の激しい時代にあって,図書館の仕事はとてもエキサイティングだという意見が目をひいた。

河野 麗子(かわのれいこ)

Ref: St. Lifer, Evan. Net work: new roles, same mission. Libr J 121 (19) 26-30, 1996