CA1118 - 電子メールによるレファレンス(1)−サービスの利用形態− / 伊藤りさ

カレントアウェアネス
No.211 1997.03.20


CA1118

電子メールによるレファレンス(1)−サービスの利用形態−

アメリカにおいても,電子メールによるレファレンスがまだ揺籃期にあるサービスだということは,その利用者が増加しているにかかわらず,認めなくてはならない。我々は電子メールにより質問をしてくる“見えざる人々”についてほとんどわかっていないため,誰が,いつ,どのような質問を,どこからしてくるのか,また,彼らは電子メールを,対人・電話・文書等の伝統的な質問手段より好んでいるのか,といった基本的な事実を明らかにする必要がある。これに関して,ブッシャロウ=ウィルバー(Bushallow-Wilbur)らはニューヨーク州立大学にある三つの図書館で,1993年1月から1994年6月まで,18ヶ月間にわたって電子メールによるレファレンスサービスの利用に関する調査をおこなった。調査は,上述の期間内に,同大学の図書館に,電子メールによりレファレンスを依頼した学部生と大学院生を主な対象として,質問票を電子メールで送付する方法を採ったが,反応のなかった対象者には,重ねて郵便で質問票が送付された。配布数は174通,回収数は114通で,回収率は65.5%である。この調査では,次のような結果が得られた。

電子メールによるレファレンスサービスを導入する際にしばしば挙げられる論拠の一つは,図書館が開館していようといまいと,情報要求が生じた時に利用者が図書館と接触できるということであるが,この調査における典型的な電子メールでの質問者は,月曜日から金曜日まで(勤務日)の午前10時から午後5時までの間に質問をしてきた。また,家からは電子メールによるレファレンス質問をしなかったという回答者が52%を占めた。このことは,図書館利用者が大学構内のコンピュータを使って電子メールサービスを利用しているために,質問も大学および大学図書館のもっとも多忙な時間帯に集中してしまうのではないかという可能性を示唆している。もう一つの認識としては,図書館利用のピーク時間は,仕事や研究をする上でのピーク時間でもあって,従って,その時間帯にレファレンスサービスヘの欲求を生じるのだということが挙げられる。

自分が好む質問方法に関する設問では,回答者の58%が電子メールをもっとも好む手段として挙げている。何故電子メールを利用するのかという設問に対する回答者のコメントは,電子メールでレファレンス質問をすることの簡便さを強調し,このサービスを利用した動機として,このサービスの特性としての「即時性」と「正確さ」を引き合いに出した。このうち,「即時性」は,一刻も早く回答を受け取りたい,ということからではなく,むしろ質問が生じた時すぐ質問ができるという点で電子メールの利用を促進したと考えられる。実際,回答者の何人かは,彼らの情報要求は緊急でないことの方が多いと述べている。「正確さ」は,文章で質問を表現すれば情報要求を正確に記述できるだろうという認識と,電子メールでの回答は文章の形でなされるため,的確なものとなるだろうという認識の両方と関係があるように見える。これに関連した興味深い結果として,図書館と利用者双方の電子メールによるレファレンスサービスに対する見方の違いについて言及せねばなるまい。図書館員の多くは,たとえ事実質問であっても,対話的なレファレンスインタビューをおこなう機会なしに回答することは,正確さにネガティブな影響を与えるのではないかという懸念を表明している。しかし,何人かの調査回答者は,電子メールは正確さを高めると考えていると述べた―彼らは彼ら自身の考えを文章で表現できるし,また,多分その質問にふさわしい図書館員により回答されるであろうから,また,図書館員は急いで回答する必要がないだろうから。

この調査は,誰がこのサービスを利用するのか,それは何故なのか,電子メールによるレファレンスは従来の伝統的な手段を用いたレファレンスとどう違うのか,といったことを図書館員が理解する糸口となろう。そして,こうした理解は,レファレンスライブラリアンが,対遠隔地サービスと来館利用サービスの適切な割合を計画したり,これらのサービスを実施する方法を決定する際の助けになるだろう。前述のとおり,レファレンスサービスに電子メールを利用することについての認識には,利用者と図書館員との間で懸隔があることも予想される。この調査の焦点は学術的環境での電子メールによるレファレンスであった。結果のどの部分が他館種の図書館にもあてはまるかについては,さらなる調査が必要である。特に,市民が電子メールについての知識を持ちつつある中で,公共図書館においても,電子メールを利用したレファレンスを検討することは興味深いテーマとなろう。

伊藤 りさ(いとうりさ)

Ref:Bushallow-Wilbur, Lasa et al. Electronic mail reference service: a study. RQ 35 (3) 359-371, 1996