ドイツの図書館サービスの最新動向:subito(スビト)とvascoda(ヴァスコーダ) / ウーヴェ・ローゼマン

ドイツの図書館サービスの最新動向
−subito(スビト)とvascoda(ヴァスコーダ)−
Current trends in German library services: subito and vascoda

ウーヴェ・ローゼマン(ハノーバー大学図書館 / 情報技術図書館長)
Uwe Rosemann(Director of the German National Library of Science and Technology / University Library Hannover, Hannover, Germany)

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 私はこの講演で,まず,ドキュメント・デリバリー・サービス「スビト(subito)」と著作権関連の問題についてお話します。次に,「ヴァスコーダ(vascoda)」を皆さんに紹介します。vascodaはドイツの電子図書館に関する国家プロジェクトです。

 subitoは,ドキュメント・デリバリーの分野において,この数年で最も興味深い事例であり,また成功した事例であることは間違いありません。subitoは,今日において五指に入るドキュメント・デリバリー・サービスとしての地位を確立しており,瞬く間に国際舞台において認められる存在になりました。

 この講演では次のような基本的なトピックを取り上げます。

・subitoとは何か?

・どのようなサービスを提供しているか?

・組織はどのようになっているか?

・どのような成果を達成したか?

・subitoの法的基盤はどのようなものか?

 まず,subitoとは何か?からお話します(CA1227CA1484参照)。

 subitoは完全にインターネット・ベースでのサービスです。お客様はオンラインで雑誌記事を注文したり,図書を借りたりすることにsubitoを使うことができます。そのために,subitoは検索と注文のための1つのアクセスポイントと,図書館群による分散化されたドキュメント・デリバリー・システムを提供します。

 配送手順もよく作り上げられています。一般的には,subitoの提供館は記事のコピーを画像ファイル(PDFファイル)として作成します。そして,そのコピーを電子メールに添付して,あるいはFTPを通して送付するか,または郵送,ファックスなど伝統的な配送手段で提供します。お客様は配送手段を選ぶことができます。

 図書は郵送で受け取ります。図書は4週間の貸出期間の後に返却しなければなりません。

 33の図書館が現在,subitoの提供館として活動しており,デリバリー・サービスに責任をもっています。これらの図書館は検索・注文のシステムを通して自分たちの資源を提供しています。

 記事を検索・注文するために,subitoは雑誌目録(約100万タイトル)と記事目録(1,200万を超える記事数)を提供しています。7千万点以上の図書を収録した図書館目録ネットワークは図書および学位論文を検索・注文するのに利用可能です。どの機能も電子フォーマットで提供されます。

 このスクリーンは,”Biopolymers”の例を示しています。複数の図書館の所蔵が示されており,どの図書館が論文の注文を受けるべきかを利用者が決めることができます。

 提供館を選んだ後,利用者は注文フォームに記入し,いずれかのsubitoのサービスを選択して注文フォームを送信しなければなりません。

 subitoはどのようなサービスを提供するのでしょうか?

 subitoは2つのタイプのサービスを提供します。

・ダイレクト・エンドユーザー向けサービス

・subito図書館向けサービス(subito Library Service)

 これら2つの提供サービスは,サービスの内容,値段が異なっていますし,送付先によって変わります。エンドユーザー向けサービスは,ドイツ,オーストリア,スイスに送付先アドレスを持つお客様にのみ提供されます。公的資金が投入された図書館であれば,世界のどこであれ,subito図書館向けサービスを使うことができます。このような制限がある理由は,subitoと出版社の間で法律解釈の違いがあるからです。この点は後ほど触れます。

 品質と結果は,サービスの種類によって決まります。利用者に対して,subitoは通常サービス(72時間以内)と特急サービス(24時間以内)を提供しています。注文が満たされない場合には,お客様は電子メールによって処理時間内に通知されます。または,追跡システムをオンラインで利用することもできます。

 subitoを立ち上げた時,エンドユーザー向けサービスは次のような局面にありました。大学および研究機関における学生・教職員は素早く文献を手に入れなければなりません。また,これらの方面の利用者は,高価な商業的ドキュメント・デリバリー・サービスを利用するだけの財務状態ではないのです。 

 このような政策的目標を考慮して,subitoは異なる料金でサービスを提供する3つのユーザー・グループを設定しています。

・ユーザー・グループ1には,学校の生徒,実習生,学生,大学教職員等が含まれます。価格は低く,サービスにかかるすべての費用をまかなっていません。

・ユーザー・グループ2には,企業の図書館,自営業,その他の商業利用者が含まれます。ユーザー・グループ2と全ての特急サービスの料金はそれぞれ異なります。これらの場合,料金はsubito提供館によって判断されます。もちろん,これはマーケティングの観点からはあまりよい戦略ではありません。しかし,現在までのところ,すべての参加館の同意が得られていません。

・ユーザー・グループ3は,個人の利用者です。

 全ての料金には,ダイレクト・ドキュメント・デリバリー・サービスに対する著作権料が含まれています。 

 今度は,図書館向けサービスの状況についてみてみましょう。

 subito図書館向けサービスは,学術図書館が利用者の要求に応えられるように援助するものです。このサービスは,相互貸借とドキュメント・デリバリーに関する国内および国際的な規則,ガイドラインに則って立ち上げられました。subito図書館向けサービスはsubito提供館(supplier library)と注文館(ordering library)の間で法的関係を結ぶと考えます。この法的関係が貸出処理の基礎を形づくるのです。

 図書館向けサービスの基礎は次のようになっています。

・図書館がsubitoの登録利用者である

・注文が図書館の資格あるスタッフによってなされる。

・配送は図書館に対してなされる。

・注文館は図書館利用者に文献を届ける責任を負う。しかし図書館は学術機関の利用者にのみ提供できることに注意する。

・図書館が請求額を支払う。

 顧客である図書館の利点は,図書館利用者との直接的な関係を維持しつつ,同時にsubitoによって安価なサービスを利用できるところにあります。

 subito図書館向けサービスの条件を満たした全ての図書館はsubitoのホームページでオンライン登録します。ただ,利用者IDとパスワードについては,顧客プロフィールをsubito事務局のスタッフが確認してから一度だけ割り当てられます。

 subito図書館向けサービスは,最大72時間以内の処理時間を要する通常サービスのみ提供しています。特急サービスは提供していません。subito図書館向けサービスは標準的なILLの様式に従って運営されていまして,著作権料はこのサービスには適用されません。subito図書館向けサービスでは,注文館は,注文館と図書館利用者との間の料金決済に関する責任を単独で負っています。

 決済システムについて少しコメントしておきたいと思います。お客様には,ひと月に1度,支払いリストが作られます。支払いリストには,各参加提供館からの個々の明細付き請求書全てが含まれています。支払いリストは,郵送か電子メールで発送されます。それは利用者の選択によります。支払いは,銀行振込,クレジットカード,預金,小切手,現金によって行うことができます。

 subitoの紹介が終わったところで,いくつか関係した疑問についてお答えしましょう。

 subitoはどのように組織されているのでしょうか?

 subitoを発足させることは,もともとは連邦教育研究省と州政府との間による,情報および文献の供給を加速させるためのいわゆる全国−地方イニシアチブの目標でした。

 1997年にsubitoがうまく走り始めた後,全国−地方イニシアチブは1999年に解消し,subitoは独立した組織に生まれ変わりました。1999年12月,subito組合(subito -Association)はコンソーシアムとして発足しました。subitoは組合組織(civil law partnership)として設立されたのです。

 個人負債を負うリスクを取り除くことと税制上の優遇措置から,subito協会の参加館は組織の基礎を変更することに納得しました。2002年の12月27日,非営利組織「subito−図書館からの文献」,つまりsubito協会(subito Society)が登記されました。

 現在,33図書館がsubito協会に責任を負っています。

・ドイツの30図書館

・オーストリアの2つの中央専門図書館

・スイスの1つの大学図書館

 参加館の権利と義務,年次総会の課題,運営委員会,その他全ての規則については,定款で規定されています。

 事業は,理事長と事務局によって運営されています。事務局はベルリンにあり,6名のスタッフを置いています。subitoは,事務局の維持経費を負担して,インターネット・ポータル,料金請求,マーケティングの開発・運用に関する責任を担わせています。

 全ての参加館は,年次会費と全ての完了した注文に対する手数料を支払います。

 連邦教育研究省は6年を限度として立ち上げのための財政計画に助成しました。2006年以降は,subitoは自活していかなければならず,ドキュメント・サプライヤーの国際的競争の中で成功している事業だと主張できなければなりません。連邦教育研究省による財政支援の逓減は,subitoが事業運営を成功させることを仮定に置いています。2000年には,財政支援が全予算の82%でしたが,今年はおよそ36%になり,2005年にはたった15%になるでしょう。この期待されるsubitoの事業の成功は,2006年からは政府の支援なしでも運営が可能であることを意味します。

 subitoはどのような実績をあげたのでしょうか?

 図を見ていただければわかるように,subitoの人気はいまも上がり続けています。

 1998年に,10万1,000件の注文で始まりました。

 2003年には,注文は117万7,000件以上にものぼりました。

 2003年の注文の内訳は,51%(60万4,036件)がドイツ国内から,49%(57万2,964件)が海外からでした。

 ユーザーグループの分布はさらに興味深いものです。

・49%(57万3,317件)は,学術界のユーザーからでした。

・23%(27万7,066件)は,商業利用者あるいは個人からの利用でした。

・28%(32万6,617件)は,図書館からでした。

 さて,おそらくもっとも関心があるだろう問題に移りましょう。

 subitoの法的基盤は何でしょうか?

 法的基盤は,ドイツ国内のエンドユーザーに対するのと,subito図書館向けサービスでは異なります。エンドユーザー向けサービスはドイツ連邦著作権法第53条によって提供が可能です。第53条は作品のコピーを1部作成することを次の条件の下,許可しています。

・私的利用のために

・個人の学術的利用のために

・その他個人的に利用するために

第53条は,公認の機関あるいはグループを通じて,コピーの作成を第三者へ委任することも認めています。

 言い換えれば,subitoの利用者はsubito提供館に,新聞や雑誌から記事を1部コピーするのを委託してもかまいません。そのコピーは個人的目的にのみ利用してよいのであって,それを頒布したり公的なコミュニケーションのために利用したりしてはいけません。つまり,subitoの利用者は著作権を遵守する個人的責任を負うのです。

 著作権法第53条は一連の例外規定・制限規定の中に含まれていまして,専ら公共の利益に資するための規定です。通常,権利保有者への支払い義務はこの例外規定の適用によって規定されています。

 支払い義務が,例外規定に規定された団体と権利保有者の間での交渉課題になることを防ぐために,著作権クリアリングハウスが導入されました。クリアリングハウスには,標準的なレートのリストを提示することが義務付けられています。図書館等の特定の利害グループに対して,割引レートを設けることが許されています。

 例外は,コピーの直接的提供に対する著作権料です。料金は図書館と著作権クリアリングハウスの間で直接決められます。私たちの場合,全てのsubitoの料金は,著作権料を含んだ最終的な価格です。著作権料の分配は,ドイツにある著作権クリアリングハウスVG Wortの責任です。著作権料は,著作者と出版社に等分されて分配されます。外国の著作者や出版社の場合,著作者や出版社が拠点を置く国の関連法人を通して分配されます。subito図書館向けサービスでは,国内・国際相互貸借ともに,短い記事や文献は,印刷物のコピーが送られます。なぜなら,著作権規則で認められる範囲内であるためには,コピーの形態で提供されなければならないと明確に規定されているからです。

 subito図書館向けサービスを利用するには,subito協会と注文館がともに,専ら,適切な著作権規則の範囲内で,subito図書館向けサービスを運用することに特に気をつけなければなりません。したがって,subito図書館向けサービスによる注文が認められるのは,注文館と図書館利用者側に適用される法規則においてsubito図書館向けサービスの利用が許されている場合に限られるのです。

 subito図書館向けサービスによる注文は,提供館がコピーを作成し送付することが許されているかどうか,また図書館利用者がコピーを受け取って利用することが許されているかどうかを,注文館が個々のケースごとに判断してはじめて行うことができます。また,技術的フォーマット(例えば,郵送かファックス,電子メール,FTP)に関して何らかの制約があるかどうかにも左右されるでしょう。商業ユーザー・グループに属する図書館利用者には,図書館向けサービスの提供は許可されていません。

 現在,私たちは著作権法の文脈の中で様々なレベルで数多くの活動を行っています。

・来年には,ドイツ著作権法は改正されるでしょう。一方で出版社側が,他方で科学者や図書館員たちがこの立法のプロセスに働きかけています。主要な論点はこうです。印刷物の記事のPDFによるコピーはどのような条件のもとで合法でしょうか? おそらく,新法はこう言うでしょう。出版社自身が同じようなドキュメント・デリバリー・サービスを提供していないなら,PDFによるコピーは合法だと。

・ドイツでは,著名なSTM出版社がsubitoに反対する訴訟を起こしています(CA1545参照)。この法的手続きは確実に数年は続きますが,法的基盤を原則として変えないでも勝てるだろうと私たちはとても楽観的に思っています。

・他方で,同じSTM出版社と,海外のエンドユーザーへのデリバリーについての交渉をsubitoは行っています。この交渉は来月には終了し,subitoは世界中のエンドユーザーへ文献デリバリーを再開するでしょう。むろん,これらのサービスは出版社へのライセンス料支払いのために値上がりはするでしょうが。状況が非常に複雑であることがおわかりいただけたかと思います。

 みなさん,これでsubitoについての講演は終わりました。

 ここからは,ドイツの新しい国家プロジェクト,vascodaについて少しご紹介したいと思います(E102参照)。vascodaは2003年8月からオンラインで始めた学術情報の新しいポータルです。あらゆる分野の科学への集中したアクセスポイントになるでしょう。すでにA=アングロ−アメリカン文化(Anglo-American Culture)からW=木材工学(Wood-Technology)に及ぶ主題へのアクセスを提供しています。ただ,いまのところ,すべての主題分野をカバーしているわけではありません。ポータルは,将来的には,複合的なナビゲーションやブラウジングとともに,学際的な検索も可能にします。全てのタイプの文献にアクセス可能です。無料かもしくはペイ・パー・ヴュー(pay-per-view)で,デジタル化された資料,印刷物の資料,デジタル形式で作成された資料が利用可能です。

 vascodaは,フルテキスト,リンク集,書誌データベースやその他のデータベース,主題に特化したサーチエンジンなどへのアクセスを提供します。さらに,ポータルはドイツ電子図書館(German Digital Library)を形成する際の中核でもあります。ドイツ電子図書館は,将来的には,科学者,学生,質の高い情報に興味を持つ全ての人たちに対して,あらゆる研究のための集中的なアクセスを提供するでしょう。

 vascodaの背景にある理念は,質の高い情報へのアクセスを促進することにあります。Googleを使った検索では,学術的あるいは高水準の研究に有用なものにヒットするとともに,何百万もの使えないリンクにもヒットしてしまいますが,この新しいポータルはただ質の高い資料のみをインデックス化する予定です。このことによって,利用者はさらに速く情報を見つけることができ,また自分が捜し求めていた情報を正確に見つけることができるのです。

 ドイツにおける主題情報へのもっとも重要な2つのスポンサー,連邦教育研究省(BMBF)とドイツ研究振興会(DFG)はともに,このポータルを実現させるべく働いています。2つ以上の競合するアクセスポイントを支援するよりも,1つの統合ポータルから利益が得られるように。

 40以上のドイツの機関(と国際的な協力パートナー)は,全ての学術情報への真のワンストップ・ショップを提供するべく協働しています。このプロジェクトのパートナーは,図書館や情報センター,その他質の高い学術情報を提供する機関です。

 対象とするユーザー・グループは高等教育および学術研究コミュニティ,大規模なビジネス界・産業界で働く研究者,その他の質の高い情報に関心のある人々です。

 ほとんど全てのものがGoogleや他の検索エンジンで発見可能だと広く信じられています。2000年のドイツでの調査によれば,学生の64%は情報を捜すのに検索エンジンを使っており,たった5%しか特定主題の情報ゲートウェイを使っていませんでした。情報専門家は,検索エンジンが包括的な調査には効果的な意味を持たないことを知っています。なぜなら,いわゆる隠れたウェブ,ディープ・ウェブというのはGoogleなどにはインデックス化されませんし,高度に専門的なデータベースの方がいまだにウェブサイトの膨大なインデックスよりもよいサービスを提供できるからです。しかし,標準的な利用者はインターネットを通して利用可能な別の検索オプションがあることをよくは知りません。

 このような時に,vascodaによる検索ではいくつもの異なるデータベースへのメタ検索を行います。

 vascodaのメイン・ポータルでの検索は,複数の主題分野からの検索結果を利用者に提示するでしょう。スクリーンで,メイン検索と主題ナビゲーションのためのゲートウェイをご覧ください。

 検索が上手くいけば,検索結果は主題あるいは提供者順によって並び替えられます。近い将来,知的検索エンジン技術はもっと多くのコンテンツを検索対象に含め,検索結果をランキング付けたり構造化するのを簡単にするでしょう。

 もし,検索によって現れた結果がインターネット資源であれば,利用者はリンクをクリックして,欲しい情報を入手することができます。

 しかし,もし情報が図書や雑誌の記事であったら,利用者はどのようにその資料にアクセスできるかについての情報が必要になります。電子ジャーナルの記事であれば,ドイツの図書館でのライセンス情報を全て持つ,電子ジャーナル図書館(EZB)と呼ばれる集中型データベースがあります。

 印刷体の記事であれば,文献はsubitoを通じて注文することができます。

 個々の主題ポータルはそれぞれの主題分野の豊富な情報を提供します。このレベルで,文献の検索とフルテキスト・デリバリーが統合されなければなりません。現段階では,個々の仮想図書館の多くは,コレクションごとに検索を行わなければなりません。長期的には,異なるデータ・コレクションを同時に検索できる検索エンジンを提供することが目標です。

 主題ポータルのひとつの事例として,医学とその関連科学についてのポータルMedPilotがあります。ここから35の様々なデータベースに対して同時検索を行うことができます。これらのデータベースの半数以上は無料で使うことができます。ここでは,15の自由に利用できるデータベースが事前に選択されていて,そこから利用者は自らに適切なデータベースを選ぶことができます。MedPilotはすでにいくつかの出版物について,その利用可能性がチェックできるようになっています。

 他の主題に基づいた仮想専門図書館(Virtual Libraries)も主題に特化した豊富なデータベースとサービスへのアクセスを提供していますが,その多くはまだメタ検索の対象にはなっていません。その事例としては,ビジネスと経済学に関する仮想専門図書館EconBizがあります。ウェブサイトを通して,利用者は質の高いインターネット資源,図書館目録,フルテキスト・データベース,ヘルプデスクのような様々なサービス,また近い将来にはオンライン・レファレンスもオプションとして受けることができます。

 最後の事例は私自身のところの図書館のポータルです。工学に関する仮想専門図書館でも同様のサービスを提供しています。TIBとFIZ Technikによって運営されており,技術データベースのホストになっています。両機関ともに,特定企業のためのカスタマイズされたサービスというコンセプトをつくろうとしています。そうしたデータベースとフルテキスト情報は特定産業において必要とされており,この図書館において統合されることになるでしょう。

 最後にいくつかコメントしたいと思います。

 将来,知的検索エンジン技術の実装によって,vascodaのサービスはいろいろな意味で改善されるでしょう。利用者へのサービスは早くなり,検索オプションも多くなり,サービスのオプションも増えるでしょう。さらに重要なことは,vascodaをバックグラウンド・サービスとして利用することも可能だということでしょう。そのことによって,利用可能なコンテンツに対するシームレスなナビゲーションを行うことができるでしょう。利用者は地元の図書館から検索を始めることができ,vascodaはそれぞれの地域で利用できるコンテンツの格差を埋めるのです。

 別の重要だけれども難しいポイントとしては,特別事業補助金が打ち切られた後にもサービスを続けていくだけの適切な組織体制を見つけ出す必要があるということです。特殊にドイツだけの問題なのかもしれませんが,私の国ではこのように多くの図書館,提供者,研究機関などが自主的に協働していくことは簡単なことではないのです。

 subitoおよびvascodaが成功するよう願っています。

 ご清聴ありがとうございました。



書誌事項:ウーヴェ・ローゼマン. ドイツの図書館サービスの最新動向−subito(スビト)とvascoda(ヴァスコーダ)− . デジタル環境下におけるILL,ドキュメント・デリバリーとその運用基盤. (図書館研究シリーズ No.38). 2005. 169-178.