オープンアクセス(OA)の現状:世界の論文の約28%、利用者が探している論文の約47%はOA

オープンアクセス(OA)雑誌PeerJに2018年2月13日付けで、世界の論文のOA化の状況について、大規模調査に基づき検討した論文”The state of OA: a large-scale analysis of the prevalence and impact of Open Access articles”が掲載されています。著者はaltmetricsサービス“Impactstory”のHeather Piwowar氏、Jason Priem氏らをはじめ、米国・カナダの企業や研究機関、大学に属する9人です。

この論文では1. CrossRefのDOIを持つすべての論文、2. 2009~2015に出版されたWeb of Sicence(WOS)収録論文でDOIを持つもの、3. Unpaywall(無料公開の研究論文に誘導するChrome拡張機能)を使って2017年のある1週間の間にアクセスされた論文、という3つの母集団から抽出したサンプル(それぞれ10万本)を対象に、ImpactstoryのoaDOI(APIを通じて論文のOA版への情報を提供するサービス)を用いて、OA化の状況を調べた、というものです。

分析の結果、CrossRefのDOIを持つ全論文のうち約28%がOA、WOS収録論文では約36%がOA、Unpaywallでアクセスがあった論文では約47%がOAでした。直近の論文ほどOAである割合が高く、Unpaywallでアクセスされる論文の大半は近年のものであるため、利用者が実際に探し、アクセスしようとする論文の中ではOAである割合が高くなると考えられています。

OA化の実現方法としては、いわゆるゴールド(OA雑誌)、グリーン(リポジトリ)やハイブリッドではなく、出版者のサイトではっきりしたライセンス情報なしに無料で読めるケースが最も多かった、とのことです。一方、WOS収録論文を用いてOAが被引用数に与える影響について確認したところ、OA論文は(出版年や分野を考慮しても)全体の平均より18%、被引用数が多かったとのことですが、これは専らグリーンもしくはハイブリッドOA論文によってもたらされていたとのことです。

Piwowar H, Priem J, Larivière V, Alperin JP, Matthias L, Norlander B, Farley A, West J, Haustein S. (2018) The state of OA: a large-scale analysis of the prevalence and impact of Open Access articles. PeerJ 6:e4375
https://doi.org/10.7717/peerj.4375

参考:
オープンアクセス論文数は全研究論文数の2倍のペースで増加 Simba Informationがオープンアクセス市場に関するレポートを公表
Posted 2016年10月11日
http://current.ndl.go.jp/node/32701

ハイブリッドオープンアクセスに関する継続調査(文献紹介)
Posted 2016年10月4日
http://current.ndl.go.jp/node/32669

Clarivate Analytics、Impactstoryへの資金提供を発表 oaDOIサービスの開発を支援
Posted 2017年7月4日
http://current.ndl.go.jp/node/34298

Impactstory、無料公開の研究論文に誘導するChrome拡張機能”Unpaywall”を公開
Posted 2017年3月21日
http://current.ndl.go.jp/node/33685