E945 – 韓国の学術・研究機関図書館における学術雑誌講読状況調査

カレントアウェアネス-E

No.153 2009.07.08

 

 E945 

韓国の学術・研究機関図書館における学術雑誌講読状況調査

 

 韓国の科学技術情報研究院(KISTI)が2009年6月15日,国内の大学,研究所などに属する457図書館が2008年に購読した学術雑誌について分析し,その結果を『KISTI知識レポート第1号 学術誌の収集政策樹立のための国内現況分析』として刊行した。

 KISTIは,学術雑誌の総合目録を構築するとともに,そのデータを分析・提供するサービス“WiseCat”も運営している。このレポートは,WiseCatに収録されている,韓国国内のいずれかの機関が2008年に購読した印刷媒体の学術雑誌または電子ジャーナル(両方で提供されているものや,オープンアクセス誌も含む),合計25,779タイトルを分析対象としている。内訳は,英文誌が73.5%を占めており,以下,韓国語雑誌(10.5%),日本語雑誌  (5.2%)と続く。分野別では,科学技術分野が57%,社会科学分野が29%,人文・芸術分野が14%となっている。

 このレポートは7つの章から構成されており,目的と結論の章を除いた5つの章で,(1)韓国国内の各機関における学術雑誌購読状況の概況,(2)全世界で刊行されている学術雑誌のうち韓国国内で購読されているものの比率,(3)購読タイトルに基づく各機関間の類似性,(4)主題分野別の購読状況の特性と主要な購読機関,(5)購読機関数の多いタイトルと,購読機関数と購読タイトル数の関係,が分析されている。

 主要な結果を紹介すると,(1)では,近年,電子ジャーナルの購読タイトル数が減少(2008年は前年比7.7%減)していること,国内で1機関または2機関にしか購読されていない学術雑誌が全体の36.9%に及んでいることなどが報告されている。また(2)では,全世界で刊行された雑誌のダイレクトリー“Ulrich’s Serials Directory”に収録されているタイトルのうち,WiseCatに収録されているタイトル(韓国国内で1機関以上が購読しているタイトル)は14.5%であったこと,(4)では,23の主題分野について購読機関の類似性をもとにクラスター分析を行った結果,7つのクラスター(保健/医療および生命工学,基礎科学(数学・物理学・化学等),応用科学(農林/水産,建設/交通,宇宙,航空等),工学技術(機械工学・電子工学等),原子力,人文社会,芸術)に分類されたこと,さらに因子分析の結果,これらの主題分野の類似性に影響する因子として,保健/医療関連,電気・電子関連,人文社会関連の3つの因子が抽出されたことが紹介されている。(5)では,購読機関数に対する海外学術雑誌購読タイトル数が,印刷媒体ではべき乗則に従って分布していた一方で,電子ジャーナルの場合はパッケージ購読契約が多いため広がって分布しており,べき乗則には従っていなかったという結果が出ている。

 KISTIはこのレポートが,国家レベルでの学術雑誌の入手可能性について分析した初の試みであることに意義を置きつつ,今後は,総合目録を通じたドキュメント・デリバリー・サービスの利用統計や学術論文の引用統計といった学術雑誌の活用についての分析や,国内の研究者による国際的な学術雑誌への論文発表の実績などをはじめとする成果に焦点を当てた分析をもあわせた総合分析を行い,国家レベルでのマクロな政策の樹立と推進に資する必要がある,としている。

Ref.
http://wisecat.ndsl.kr/servlet/presentation/list
http://www.kisti.re.kr/KISTI/board/View.jsp?menu_id=101016&seq=1040