E926 – 経済危機の影響により予算削減を迫られる大学図書館(米国)

カレントアウェアネス-E

No.150 2009.05.27

 

 E926

経済危機の影響により予算削減を迫られる大学図書館(米国)

 

 経済危機の影響を受け,全米各地の図書館での予算削減が報じられているが,多くの有力大学の図書館においても,予算削減への対応が迫られている。

 イェール大学図書館では,2010年度の資料購入費が約10%(193万ドル(約1億8,300万円))減となる見込みである。そのうちの約20万ドルの削減対象となる社会科学図書館では,対応策として,雑誌(紙媒体・電子ジャーナルの両方)の購読タイトルの削減,外国語図書の購入削減,利用頻度の少ないデータベースの解約,オンラインデータベースや電子ジャーナルの価格交渉の実施等があげられている。

 2010年度の資料購入費が7.1%(94万4千ドル(約9,000万円))減となる見込みのコーネル大学図書館副館長のセイラー(John Saylor)氏は,予算削減は避けられないものの,購入計画の見直しは慎重に行い,研究図書館としての地位を維持できるように尽力するとしている。対応策として,“Borrow Direct”(東部有力私立大学間の相互貸借システム)等の図書館間協力とともに,Google社等との共同による電子化計画もあげられている。

 その他にも,マサチューセッツ工科大学図書館では2010年度に140万ドル(約1億3,300万円)と2011年度以降にさらなる削減,カリフォルニア大学ロサンゼルス校図書館では2008/2009年度に44万ドル(約4,200万円)と2009/2010年度に183万ドル(約1億7,400万円)の削減が見込まれるなど,有力大学図書館において,大幅な予算減が見込まれている。

 これらの大学が加盟している北米研究図書館協会(ARL)は,2009年2月に,経済危機による影響についての声明を発表している(E917参照)。声明では,研究図書館における予算縮小は一時的ではなく恒常的なものとなりつつあるとし,学術出版社・ベンダーに対し,価格の安定(または値下げ),出版社の費用構造の見直し,著者支払い型のオープンアクセス出版の検討,契約期間の途中での再交渉制度の検討,契約をキャンセルした雑誌のバックナンバーへのアクセスの保証等を申し入れている。

Ref:
http://www.library.yale.edu/CDC/budget/cdc_budget.html
http://www.news.cornell.edu/stories/April09/LibraryBookCuts.gg.html
http://libraries.mit.edu/about/budget/index.html
http://blogs.library.ucla.edu/universitylibrarian/2009/04/09/budget-update-2/
http://www.arl.org/bm~doc/economic-statement-2009.pdf
E917