カレントアウェアネス-E
No.146 2009.03.25
E900
著作権法改正案,第171国会に提出される(日本)
政府はこのほど,著作権法改正案(以下,改正案)をまとめ,2009年3月10日,第171回国会に提出した。
改正案では違法な著作物の流通抑止対策(改正案第30条1項,同第113条,同121条の2)やインターネット上で情報検索サービスを実施するための複製(第47条の6)などが注目されているが,特に図書館に関わりが深い改正点として,国立国会図書館における所蔵資料の電子化,障害者の情報利用の機会確保の2つが盛り込まれている。
国立国会図書館所蔵資料の電子化については,2009年3月現在の著作権法(以下,現行法)の図書館等における複製(第31条)に新たな条文を追加し,国立国会図書館所蔵資料の原本を公衆の利用に供することによる滅失,損傷又は汚損を避けるために,原本に代えて公衆の利用に供するための電磁的記録を,必要と認められる限度において作成することができるようにする(改正案第31条2項)ことが可能となる。
また障害者の情報利用の機会確保については,権利者に無許諾で行える範囲の拡大が図られる(改正案第37条3項,同第37条の2)。文部科学省が公表している「著作権法の一部を改正する法律案の概要」によると,視覚障害者向け録音図書の作成が可能となる施設が拡大され,公共図書館でも作成が可能となる。また聴覚障害者のための映画や放送番組への字幕や手話の付与が可能となる。さらに発達障害等で利用困難な者に応じた方式での複製も可能になる。
著作権法改正をめぐっては,2005年以降,文化庁に設置された文化審議会著作権分科会法制問題小委員会において「著作権法に関する今後の検討課題」(文化審議会著作権分科会 2005年1月24日)に示された課題を中心に,内閣に設置された知的財産戦略本部の提言事項も含めた検討が行われてきた。この検討事項の一部は,2007年7月1日に改正された著作権法(E577参照)にも反映されているが,第7期(2007年3月~)及び第8期(2008年2月~)の文化審議会著作権法分科会に設置された3つの小委員会の検討結果として,2009年1月には「文化審議会著作権分科会報告書」(文化審議会著作権分科会)が公表されている。今回の著作権法改正案では,この報告書に取り上げられた項目が取り上げられている。
Ref:
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/171/1251917.htm
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/pdf/shingi_hokokusho_2101.pdf
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/05012501.htm
E577