カレントアウェアネス-E
No.115 2007.10.17
E703
文部科学省,「新しい時代の博物館制度の在り方について」を公表
文部科学省に設置されている「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」が,報告書『新しい時代の博物館制度の在り方について』をまとめ,2007年6月に公表した。
「博物館」とは教育基本法(平成18年12月22日法律第120号)および社会教育法(昭和24年6月10日法律第207号)の精神に基づき,博物館法(昭和26年12月1日法律第285号)に従って設置される施設で,図書館や公民館とともに,教育基本法第12条で「社会教育施設」として位置づけられている。報告書では,博物館の置かれている現状とその課題を分析するとともに,改善の方向性について,教育基本法第3条でうたわれている「生涯学習」理念との関連を含め,その方向性を模索し,基本指針を明確化している。
今日の博物館においては,いわゆる博物館(登録博物館・博物館類似施設・博物館相当施設)の数,入場者数とも増加し,学芸員資格の取得者数も毎年約1万人以上に達するとしている。しかし報告書では,公立博物館における資料費の減少や少ない学芸員配置,指定管理者への移行などの経営環境の厳しさ,博物館の形態・ニーズの多様化に伴う博物館類似施設・博物館相当施設の増加と博物館登録制度の形骸化,取得が容易な学芸員の養成課程に関する改善・充実の必要性,生涯学習社会の実現に向けた博物館制度の再構築の必要性,といった課題を指摘している。
これらの現状や課題を踏まえ,今後の博物館制度について,『「伝えて,集める」博物館の基本的な活動に加えて,市民とともに「資料を探求」し,知の楽しみを「分かちあう」博物館文化の創造』をキーフレーズに,基本指針の明確化を図っている。具体的には「資料」の範囲の見直しと連動した博物館の範囲の再定義,登録基準や登録申請資格の拡大など博物館登録制度の見直し,登録後の第三者機関による審査制度の導入検討,学芸員養成制度の見直しなどが取り上げられている。とりわけ学芸員養成制度については,
- 大学と博物館が協働した学芸員養成体制の構築
- 大学における資格取得科目,単位数の増加,「学芸員基礎資格(仮称)」の導入
- 「学芸員基礎資格(仮称)」を基に,1年以上の実務経験を経た上で,「学芸員」の資格付与
- 大学院レベルにおける専門教育の検討
の4項目が検討課題として掲げられている。さらに今後の検討項目として,現職学芸員に対する研修制度の充実,上級学芸員資格の導入が取り上げられている。
現在,中央教育審議会生涯学習分科会制度問題小委員会において,生涯学習法制に関する見直しが進められており,博物館法については本報告書を基に議論が進められている。同様に図書館法も,2006年3月に公表された「これからの図書館像」(E478参照)を基に同小委員会で議論が進められており,2007年9月3日には小委員会における各委員の意見をまとめた「制度問題小委員会における検討状況について(案)」が公表されている。教育基本法にうたわれている「生涯学習」概念の具体化に向けた,今後の「社会教育」像のありかたがどのように示されるのか,今後の議論が注目されよう。
Ref:
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/014/toushin/07061901.pdf
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/014/index.htm
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26HO285.html
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO120.html
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/siryou/006/07070410/004.htm
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/index.htm
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/siryou/006/07090313/001.htm
E478