E478 – 日本の公共図書館のこれから <文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.81 2006.04.26

 

 E478

日本の公共図書館のこれから <文献紹介>

 

 これからの図書館の在り方検討協力者会議. [文部科学省]. これからの図書館像−地域を支える情報拠点をめざして−. 2006. 34p. (オンライン), 入手先< http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/04/06032701.htm >, (参照2006-04-24).  

 文部科学省は2005年4月,今日の図書館の現状や課題を把握・分析し,生涯学習社会における図書館の在り方について調査・検討を行うため,図書館関係者や有識者による「これからの図書館の在り方検討協力者会議」を設置した。この協力者会議による調査・検討の成果報告書が取りまとめられ,2006年4月に公開された。  

 報告書はまず,地方公共団体,図書館職員,地域住民,各種団体・機関への「よびかけ」から始まる。図書館は地域の発展を支える情報拠点であり,地域の課題解決を支援する役割を積極的に担っていく存在であるとして,よりいっそうの図書館利用と,図書館への支援・協力をよびかけている。地域住民だけでなく,議会・行政・学校などの機関に対しても働きかけを行う必要があると繰り返し強調している点が,本報告書の特徴のひとつである。  

 第2章では,これからの図書館の在り方についての提案がなされている。レファレンスサービスの充実や資料・情報の効果的な提供による地域の課題解決支援,電子媒体や雑誌,新聞,音楽映像資料といった多様な資料の提供,学校との連携・協力や児童・青少年サービスの充実,図書館間協力や他の機関との連携・協力の推進などが提案されている。またこれからの図書館経営に必要な視点として,経営資源の見直しや評価,広報,図書館職員の教育・研修など,管理運営方法についても,どのように改善すべきかが示されている。さらに,このような図書館の新しいサービスや運営に際し,都道府県,国,国立国会図書館が果たすべき役割についても述べられている。  

 なお,この第2章では,ビジネス支援,ハイブリッド図書館,行政支援など,これからの図書館サービスとして位置づけられている各サービスや望ましい経営について,9つの先進的事例を紹介している。また,同じく文部科学省の委託により,この報告書に即した形で実践事例を調査した『これからの図書館像−実践事例集−』でも,23の事例が紹介されている。  

 報告書ではまた,図書館が未整備の町村がまだ多い,資料購入費が削減される傾向にある,図書館業務のオンライン化は十分に進んでいない,運営形態が多様化しているなど,公共図書館をめぐる状況も分析している。このような状況の中,図書館がどのように対応していくべきかを示す指針として,これらの報告書や各事例集の持つ意義は非常に大きいと考えられる。

Ref:
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/04/06040513.htm
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/06040715.htm