カレントアウェアネス-E
No.144 2009.02.18
E890
オープンソースを活用し共同で目録作成を-‡biblios.net
大規模書誌ユーティリティOCLCの書誌レコード利用・再配布の新ポリシーが物議を醸している(E864参照)中,米国で,オープンソースソフトウェア(OSS)を用いた共同目録・メタデータ作成プロジェクト“‡biblios.net”が注目を集めている。
これは,OSSの統合図書館システム“Koha ZOOM”(E641参照)など,図書館向けOSSの運用業務ソリューションを提供しているベンダーLibLime社が,2007年に自社開発したOSSの目録・メタデータ作成ソフト“‡biblios”を元にしたものである。‡bibliosは「リッチな」ユーザインターフェース,Z39.50プロトコルを利用した既存の目録データベースのメタサーチ(CA1596参照)機能,“Koha”をはじめとする統合図書館システムとの連携,プラグインによる各種フォーマット(MODS,Dublin Core等)への対応などを特徴とした,スタンドアロン環境用ソフトウェアである。LibLime社はこの‡bibliosの開発を続ける傍らで,自社からネットワークで提供(ホスティング)する版として“‡biblios.net”を立ち上げた。2008年11月にベータ版,同12月に正式版がリリースされ,現在に至っている。
‡biblios.net固有の特徴は,ネットワークでデータが共有されること,にある。登録ユーザは,‡biblios.netデータベースまたはZ39.50プロトコル対応データベースの書誌レコードを検索し,コピーしたり,流用したりして,目録やメタデータを作成する。もちろん,新規にオリジナルの目録やメタデータを作成することもできる。このインターフェース(ツール)は,スタンドアロン版‡bibliosと同様である。作成したレコードは,他の統合図書館システム等にエクスポートすることができるほか,‡biblios.netデータベースで登録ユーザに公開することもできる。この‡biblios.netデータベースは,Open Data Commonsの“Public Domain Dedication & License(PDDL)”のもと,目的を問わず,制約なしで誰もが自由にそのデータを共有,改変,利用できるようになっている。すでに,同様にパブリックドメインとしてデータを公開しているOpen Content Alliance(OCA;E392,E714参照)のデジタル化書籍提供サイト“Open Library”の2,500万件以上の書誌データ,800万件弱の典拠データが取り込まれている。‡biblios.netデータベースへのアクセス用のウェブAPI(CA1677 参照)も公開されており,ダウンロード/アップロード等を容易に行えるようになっている。なお,データベースの全レコードは,MARCフォーマットでInternet Archiveに永久保存される,という。
誰でも無料でユーザ登録でき,データを作成・利用できる。また掲示板,チャット等のコミュニティ機能を通じて,他のユーザと情報交換することもできる。LibLime社のCEOが「Wikipedia方式」と呼ぶこの仕組みが,どのように目録コミュニティで受け入れられていくか,大変興味深い。
なおOCLCも2009年2月,WorldCatのマスターレコードの完全な編集権限を,参加館の登録ユーザに付与し,共同作業によりレコードの品質を向上させることを目指す6か月間の実験プロジェクト“Expert Community Experiment”の開始を発表した。これまでは限定的な編集しか行えなかったユーザも,一部の例外レコードを除き,ほとんどすべてのレコードのほとんどすべてのフィールドを編集できるようになるという。‡biblios.netの登場と時を同じくした,この巨大共同目録の新展開も注目される。
Ref:
https://biblios.net/
http://www.libraryjournal.com/article/CA6632425.html
http://biblios.org/
http://liblime.com/
http://journal.code4lib.org/articles/657
https://biblios.net/pddl
http://openlibrary.org/
http://www.oclc.org/worldcat/catalog/quality/expert/default.htm
CA1596
CA1677
E392
E641
E714
E864