E793 – リポジトリ内コンテンツのversionを明確にするために

カレントアウェアネス-E

No.129 2008.06.11

 

 E793

リポジトリ内コンテンツのversionを明確にするために

 

 機関リポジトリを利用して,同じタイトルの文書が複数現れたり,内容的に関係がありそうな(しかし確証はもてない)プレゼンテーション資料や学会報告を目にした経験はないだろうか? 機関リポジトリのコンテンツはどのような過程で作成され,各コンテンツ間にはどのような関連性が存在するのであろうか?またコンテンツ作成過程やコンテンツ間の関連性は,どのようにすれば明らかになるのであろうか?

 英国情報システム合同委員会(JISC)の資金援助を受け,ロンドン大学政治経済学部(LSE)が行っているプロジェクト“Version Identification Framework(VIF)”は,機関リポジトリに登録されている研究成果のversionを識別するため,コンテンツ作成者やリポジトリ管理者といった,デジタルリポジトリに携わる人々の取り組みに向けた実践的アドバイスを提供するフレームワークを作成し,公開した。

 研究対象であるversionは「特定の時間と場所に存在している,あらゆる形式を含むデジタルオブジェクトであり,他のオブジェクトとの間に存在している関係によって記述される文脈を有するもの」と定義されている。また複数のversionの関係である“version relationship”については,「2つもしくはそれ以上のオブジェクト相互の関連の理解もしくは表現」としている。コンテンツの生成過程や各コンテンツ間の関連性を重視するのは,コンテンツ1つ1つが複数の草稿を経て作成されたものであると理解されていることや,versionの識別には独自性の識別だけではなく,各コンテンツ間の関連性の確定も問題になってくる,との問題意識によるものである。

 VIFは迅速で容易にversionを識別する指標として,次の5つの情報が大変重要であるとして,メタデータ,もしくはコンテンツそのものに埋め込むことを推奨している。

  • (1)データ作成・登録等の日時
  • (2)ファイル名,著者,ISBNなどの識別子
  • (3)関連するコンテンツ間の関係を識別できるように,コンテンツ作成者により付けられた“Version Numbering”
  • (4)コンテンツが出版に至るまでの過程や,各コンテンツ間の関係について,共通の語彙で表現した“Version Labels or Taxonomies”
  • (5)コンテンツの位置づけやコンテンツ間の関係について,コンテンツ作成者が記述した“Text Description”

 VIFはまた上記の情報とは別に,次のversion情報をコンテンツそのものに実装することを推奨している。

  • (1)version情報を記述するフィールド,もしくはIDの埋め込み
  • (2)表紙(cover sheet)
  • (3)コンテンツの内容やversionを表す,統一性のあるファイル名
  • (4)すかし(watermark)

 VIFは同様に,リポジトリソフトウェア,リポジトリ管理者,コンテンツ作成者の取り組みについても言及している。リポジトリソフトウェアに対しては,FRBR化アプローチの導入,versionを識別する上記5つの情報を表示可能にすることなど7項目を,リポジトリ管理者に対しては,リポジトリの目的とversion導入の必要性を明確化すること,FRBRモデルの理解とソフトウェアへの適応可能性を探ることなど7項目を,コンテンツ作成者に対しては,作成したいずれのversionも利用できるように保存しておくこと,主要な改訂記録を表示するナンバリングシステムを導入すること,全てのversionの著作において,執筆者,タイトル,最終更新に関する記録,version情報を明確にしておくことなどを求めている。

Ref:
http://www.lse.ac.uk/library/vif/
http://www.lse.ac.uk/library/versions/
http://www.jisc.ac.uk/news/stories/2008/05/digitalrepositories.aspx