E657 – 上海ウィンドウ:中国関係図書が開く文化交流の窓

カレントアウェアネス-E

No.108 2007.06.13

 

 E657

上海ウィンドウ:中国関係図書が開く文化交流の窓

 

 中国・上海図書館では,世界各国の図書館に中国関係図書を寄贈するプロジェクト「上海ウィンドウ(Window of Shanghai)」を2003年から実施している。2007年5月9日,このプロジェクトの専用ウェブサイトがオープンした。

 この「上海ウィンドウ」は,海外の図書館における中国語蔵書の不十分さを憂い,最新の中国の出版物を寄贈し,中国の歴史・文化や最新の民主化・発展状況を海外の読者に提供することを目的としている。2007年6月時点で22か国,30の国立・公共・研究図書館に合計1万冊の図書が寄贈されており,日本でも2006年12月に長崎県立長崎図書館が対象となっている。

 「上海ウィンドウ」では通常,上海図書館と対象館とが3年の契約を結び,1年目には300〜500冊程度の図書が,2年目,3年目には各100冊の図書が上海図書館から寄贈される。寄贈を受けた館では,「上海ウィンドウ」と書かれたプレートとともに図書を専用閲覧室または専用書架に開架すること,また寄贈を受けたことを周知し,図書を適切に保存,整理,貸出することが求められている。さらに,貸出数,開架・貸出方法,人気の高い分野,利用の多い読者層などについての統計・レポートなどでのフィードバックも求められている。上海図書館によれば,この寄贈図書によって現地在住の中国出身者が母国との紐帯を深めたり,寄贈を受けた各館が異文化プログラムを実施する際に寄贈図書を利用したりするなどの活用事例が,このようなフィードバックから明らかになったという。

 なおオランダのハーグ公共図書館とは,2005年からの3年の契約が切れた後も,さらに3年の協力契約を締結している。両館の間では,「上海ウィンドウ」とは逆にハーグ公共図書館から上海図書館にハーグやオランダに関する図書を寄贈する「ハーグ・ウィンドウ」が実施されているほか,業務交流も予定されている。一方向の情報提供から双方向の文化交流へと,その取り組みは拡大している。

Ref:
http://www.library.sh.cn/windowofshanghai/index.aspx
http://www.library.sh.cn/japanese/news/list.asp?id=886
http://www.library.sh.cn/japanese/news/list.asp?id=912
http://www.library.sh.cn/japanese/news/list.asp?id=915
http://www.lib.pref.nagasaki.jp/news/pdf/pref/ishi153.pdf