カレントアウェアネス-E
No.108 2007.06.13
E656
ウェブ上の自治体刊行物収集状況(カナダ)
カナダでは,主にカナダ国立図書館・文書館(LAC)および各州・準州の議会図書館において,ウェブ上で公開された自治体の刊行物の収集が行われている。2007年春,カナダ研究図書館協会(CARL)がこの収集状況に関する第2回の調査(第1回は2005年1月に実施)を行い,その結果をウェブサイトで刊行した。
カナダでは各州ごとに納本規定が異なっている。ケベック州では,ウェブ上の刊行物も含めた納本規定があり,ケベック州立図書館・文書館(BanQ)がすべての州政府部局の刊行物を収集している。BanQはアクセス性と長期保存の両方を考慮し,収集したコンテンツはそのままのフォーマットで保存するとともに,PDFフォーマットに変換して提供する措置を取っている。ただし,議会の刊行物はBanQに収集・提供の権利がないため集めておらず,また法令関係資料も,コンテンツのサイズと収集の複雑さから集められていない。
ケベック州に続く規模で収集を行っているのはオンタリオ州,ブリティッシュコロンビア州である。両州とも,各図書館および一般からのアクセスが可能であり,特に前者はリポジトリ管理ソフト“DSpace”を利用して,州の大学図書館協会が運営している学術ポータルサイトにメタデータを提供している。ただし,両州とも議員向けのコレクションとしてコレクション構築をはじめた経緯から,前者では一過性資料,後者では学校のカリキュラム,学術出版物,ポスターなどが対象外になっている。
このほか,納本規定がない中で収集を実施しているマニトバ州,システムの制約によりコンテンツを一般公開できていなかったアルバータ州では,それぞれ質・量の増加,一般公開可能なシステムの導入と,2005年の調査時点から進歩が見られた。また2005年時点では収集を実施していなかったノバスコシア州,ヌナブット準州など4州でも収集が開始された。しかし,プリンスエドワードアイランド州,ユーコン準州など4州では,依然として収集が行われていない。
なお,2005年の調査時点では,ウェブ上の刊行物としては連邦政府のものだけを収集対象としていたLACが,2006年から各州・準州のウェブサイトも対象に収集ロボットによる年2回程度のクロール収集を開始している。この方法で収集したコンテンツには,書誌コントロールがなされておらず,またLAC館内からしか見ることができないが,一般公開に向けて関係機関との交渉を準備しているところであるという。
2005年からこの調査を担当しているハバーツ(Andrew Hubbertz)は,各州ごとに取り得る戦略が異なることに留保しながらも,全体の総括として,
- (ケベック州を除き)長期保存が考慮されていない。
- これら収集したコンテンツが全国書誌に登録されていない。
- 資料の性質から雑誌が,また関連する他機関との関係で議会議事録・法令資料・公報などが収集されていない場合がある。
などの共通の課題を指摘している。もっとも,2005年に比べ収集コンテンツが質・量ともに充実してきており,そのほとんどが一般公開されている点について,ハバーツは高く評価している。LACの取り組みも含め,政府や自治体の刊行物のアーカイビングのさらなる進展が期待される。
Ref:
http://www.carl-abrc.ca/projects/preservation/pdf/ah_report_update.pdf
http://www.carl-abrc.ca/projects/preservation/pdf/provincial_web-pubs_report.pdf
http://www.carl-abrc.ca/projects/preservation/pdf/Cookbook.pdf
http://www.carl-abrc.ca/projects/preservation/pdf/e-docs_report2.pdf