カレントアウェアネス-E
No.108 2007.06.13
E655
公共図書館の価値を,どのように評価し,そして伝えるか?
図書館の価値を,わかりやすく説明することは難しい。一方で,設置母体の自治体や資金の提供者は,図書館の「事実」および「数字」と,地域の発展あるいは社会・経済の繁栄との結びつきを示す説得力のある論拠を示すよう,求めている。図書館はこの要望に応えるよう,多様なアプローチで図書館評価の研究と実践を試みている(CA1627参照)。
5月5日,この動向を概説する研究レポートが,米国のNPO法人・図書館のための米国人協会(ACL: Americans for Libraries Council)から公表された。「重さに等しい価値がある: 進化する図書館評価領域の査定(Worth Their Weight: An Assessment of the Evolving Field of Library Valuation)」と題するこのレポートは,価値をドル(貨幣)で示すことが重要であるとのスタンスに立ちつつ,近年実践されてきた経済的,社会的効果に関する分析方法を紹介している。
具体的には,投資対効果(ROI: Return on Investment),費用便益分析(CBA: Cost Benefit Analysis),仮想評価法(CVM: Contingent Valuation Method),あるいは近年営利企業やNPO法人などで使われいる「社会的な投資効果」(SROI: Social Return on Investment)などの方法を,実践事例を交えて解説している。紹介されている実践事例はシアトル公共図書館,ピッツバーグ・カーネギー図書館,ニューヨーク州サフォーク郡図書館などの17件であり,多様性に富んだセレクトになっている。いずれの報告書もオンラインで入手可能であり,成果と手法を詳細に確認することが可能である。
研究レポートでは,これらの研究と実践の現状を分析したうえで,調査研究によって導かれた論拠を介して図書館を支える関係者とコミュニケーションをとるべきであることや,このような調査研究を手軽に行えるよう計算プログラムなどのツールを開発すべきであることなどを提言している。
なお,この研究レポートは,ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の支援のもとで進められているプロジェクト“Building Knowledge for Library Advocacy”の一環としてまとめられたものである。このプロジェクトは,図書館のアドヴォカシーに関する知を構築することを目的とするものであり,併せて構築されているウェブサイト“Act for Libraries”において,この調査研究を補完する情報が掲載されている。
Ref:
http://www.actforlibraries.org/pdf/WorthTheirWeight.pdf
http://www.libraryjournal.com/article/CA6444813.html
http://www.actforlibraries.org/
CA1627