E612 – QuestionPoint,事例データベースの利用の現状を報告

カレントアウェアネス-E

No.101 2007.02.28

 

 E612

QuestionPoint,事例データベースの利用の現状を報告

 

 世界1,700以上の機関が参加する協同型デジタルレファレンスサービス(DRS)として発展を続けているQuestionPoint(QP)(CA1476E234参照)。そのDRSの副産物であるデジタルレコードの一部は,編集・加工され,“Global Knowledge Base”(GKB)とよばれるデータベースに蓄積・公開されている。公開されているデータは約15,000件である。

 QPはこのGKBの認知度と利用状況を確認するためアンケート調査を行い,2007年1月に結果を公表した。調査対象はQPを利用する図書館の職員であり,回答数は267名(公共図書館36%,大学図書館35%)であった。特に米国以外の利用者が21%,利用経験1年以下が41%含まれていることが特徴的である。

 GKBをどのように利用しているかという問いに対する回答は以下のとおりであった。

  •  利用していない  :50%
  •  存在すら知らない :17%
  •  検索利用のみ   :11%
  •  記録を送付するのみ: 3%
  •  記録を送付し,また検索利用もしている:8%

 調査結果によると,特にQP利用経験1年以下の利用者は,GKBの存在すら知らない比率が高くなっている。さらに,その理由については,「同じレファレンスサービスが繰り返されることはないから」,「回答を見つけるまでがあまりにも冗漫だから」,「検索する場所が1つふえるだけだから」と,QP側の説明するGKB構築の意図が十分に伝わっていないことがうかがえる。

 一方,GKBを利用する人の内訳を見ると,65%がQP利用経験1年以上であり,また75%が質問回答の共有を好意的に評価している。また,利用の利点に関する自由記述回答でも,「図書館員の継続教育に役立つレファレンスツール」,「アイデアの共有,情報源の蓄積,集合知の構築」,「一般に公開することで繰り返されるレファレンス調査に対するニーズを減らすことができる」などが挙がり,一定の認識は定着しているようである。

 GKBがその名のとおり「世界の知識基盤」として機能するのか,真価を問われるのはこれからであろう。現在のところ,GKBは意図的にか一般利用者からは目につきにくいところに置かれ,またQPのサービスの柱としても位置づけは低いようだ。QP側は今回の調査結果を建設的にとらえており,今後どのような戦略をとっていくのか注目される。

Ref:
http://questionpoint.blogs.com/questionpoint_247_referen/2007/01/survey_results.html
http://www.questionpoint.org/crs/html/help/en/ask/ask_publish_globalkb.html
http://questionpoint.org/crs/servlet/org.oclc.home.BuildPage?show=searchkb
http://questionpoint.org/
E234
CA1476