カレントアウェアネス-E
No.101 2007.02.28
E613
文化庁,英仏独米の著作権関連制度・運用の調査報告を公表
文化庁はこのほど,2005年度に実施した委託調査の成果として,海外における著作権関連法制度に関する報告書「知的財産立国に向けた著作権制度の改善に関する調査研究」を公表した。「デジタル化・ネットワーク化時代に対応し」,「権利の適切な保護と利用者の利益とのバランス」に意を払った著作権制度構築に向けた情報の収集を目的としている。
本報告書では,(1)権利制限規定,(2)私的録音録画補償金,(3)著作権等侵害物品関連,(4)その他(ファイル交換ソフト,ブロードバンド送信)の4項目に関する,英・仏・独・米の4か国を中心とする各国の法制度や運用状況について,政府系機関や公益団体のウェブサイト,報告書等の文献に基づく調査が報告されている。たとえば(1)権利制限規定は,(a)図書館関係,(b)障害者福祉,(c)学校教育関係,(d)行政手続関係,の4項目から構成されている。
(a)図書館関係では,
- 相互貸借資料のコピーサービス
- ウェブサイトのプリントアウト
- 再生手段の入手が困難な図書館資料の保存
- 図書館における官公庁資料等の全文複写
- 障害者に対する図書館サービス
- 図書館でのファクシミリ,Eメールによる複製物の送付
の6項目について,可否に関する法律上の明文規定の有無,対象となる著作物,利用者,条件,認められる行為などが一覧にまとめられている。また必要に応じて条文の邦訳や解釈,実際の運用状況の解説も加えられている。ほかにも(b)障害者福祉では,聴覚障害者向け手話・字幕付番組の複製,公衆送信,知的障害者や発達障害者向けの翻案など,(c)学校教育関係では,教育機関による遠隔地授業の公衆送信など,といったテーマが取り上げられている。
諸外国の著作権法制度や運用はこれまで,国ごと,あるいは対象となる制度ごとに紹介されてはいる。しかしこれらの紹介は断片的であったり,自らの主張に適合する制度の紹介にとどまるなど,問題点も少なくなかった。これに対し本報告書は,各国の著作権制度について,テーマごとに一覧で比較できる貴重なものである。日本の著作権法の今後について議論を深めて行く上で,欠かすことのできない資料となるであろう。
Ref:
http://www.bunka.go.jp/1tyosaku/pdf/chitekizaisan_chousakenkyu.pdf