E531 – 「アドヴォカシー・ツールキット」で学ぶ説得術

カレントアウェアネス-E

No.89 2006.08.23

 

 E531

「アドヴォカシー・ツールキット」で学ぶ説得術

 

 近年,図書館にも自らの仕事の意義を社会に対して十分に説明,説得する(アドヴォカシー:Advocacy)活動の必要性が高まっている。こうした中,米国研究・大学図書館協会(ACRL)と米国学校図書館協会(AASL)が,現場で働く図書館員のために,図書館の意義を効果的に訴えるためのテクニックをまとめたアドヴォカシー・ツールキットを公開した。  

 ACRLのツールキットは,“The Power of Personal Persuasion”(個人の説得力)と題したレポートの形式を取っている。レポートは「ツールキットとは何か」「アドヴォカシーの意義」「発信すべきメッセージをつくる」「説得のためのテクニック」といった項目で構成され,効果的な説得文句の例も収められている。このレポートを読むことで,図書館の意義を訴えたり,利用を促したり,予算を獲得したりするための交渉術について学ぶことができるようになっている。また,AASLのツールキットは,学校図書館の職員(school library media specialists)が学校や地域で教育者として活動していることや,学校図書館のメディアサービス予算を削減しかねない“65% solution”(注)に反対する論点が掲載されており,図書館職員が学校に不可欠であることをアピールできるようになっている。  

 同様のツールキットは,国際図書館連盟(IFLA)の学校図書館・リソースセンター部会からも発表されている。こちらは学校図書館の任務と目標を定義する“IFLA/UNESCO School Library Manifesto”と,学校図書館や学校図書館員がManifestoに定義されている内容を実現するためのガイドライン“IFLA/UNESCO School Library Guidelines”からなる。また,世界のIFLA加盟機関や学校図書館協会の連絡先(これらの機関とアドヴォカシーに関する情報・ノウハウの共有を推奨しているため)や,自館の状況に合った説得の方法を考える際のヒントなども紹介されている。  

(注)市民団体“First Class Education”による,「学校に投入される予算の65%以上を教室での教育に充てなければならない」という主張。米国の各州でこの主張を法制化する動きが広がっているが,「教室での教育」には学校図書館と学校図書館職員は含まれておらず,図書館予算の削減につながりかねないと懸念されている。

Ref:
http://www.ala.org/ala/acrl/acrlissues/marketingyourlib/advocacy_toolkit.pdf http://www.ala.org/ala/pressreleases2006/august2006/AASLinstructionaltoolkit.htm http://www.resourceshelf.com/2006/07/27/academic-libraries-acrls-the-power-of-personal-persuasion-toolkit-now-available-as-a-free-pdf/ http://www.resourceshelf.com/2006/08/17/school-library-association-publish-advocacy-toolkit/ http://www.ifla.org/VII/s11/pubs/s11_AdvocacyKit.html