カレントアウェアネス-E
No.58 2005.05.18
E328
過去の記憶を消し去ろうとする暴挙?−図書館の破壊・閉鎖
インドの北東部インパールで4月13日,マニプール州立中央図書館が襲撃を受け,約15万冊の蔵書が焼失した。襲撃したのはMEELALと呼ばれる集団で,彼らは現在正書法に採用されているベンガル文字に代えてメイテイ族古来のメイテイ文字を採用するようアピールする活動を展開しており,その象徴的行動としてベンガル文字で書き著された書物を所蔵する図書館の破壊という今回の暴動に至ったという。メイテイ族は18世紀にヒンドゥー化政策を受けた際,国中の書物が燃やされ,ベンガル文字を強要されたという歴史をもっている。近年,メイテイ文字の復興を求める動きが盛り上がり,一部で新聞社を襲撃するなど過激化していた。現在,図書館は復旧に向けて図書の寄贈などを呼びかけている。
一方,中央アジアのトルクメニスタンでは,2月28日,ニヤゾフ終身大統領によって,大学および国立図書館を除く全ての図書館の閉鎖が指示された。同国では,インターネットが制限され,すでに映画なども禁止されており,今回の命令もこうした言論統制強化の一環と考えられる。また,トルクメン語の正書法をキリル文字からラテン文字に切り替えたこと,これまでにも図書館からソ連時代の文献を抜き取り処分してきた経緯などから,過去の記憶を抹殺する政策の一環とも受け取れる。国際図書館連盟(IFLA)は情報へのアクセスを制限することは世界人権宣言にも反すると非難する声明を発表している。
両事件は,逆説的に,図書館が歴史や記憶の象徴として機能していることを再確認させてくれる。
Ref:
http://www.e-pao.net/GP.asp?src=2.14.140405.apr05
http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/4443565.stm
http://www.arbornet.org/~prava/eeyek/
http://www.isn.ethz.ch/news/sw/details.cfm?ID=11146
http://www.ifla.org/V/press/pr29-04-2005.htm