カレントアウェアネス-E
No.486 2024.09.05
E2727
東北大学総合知デジタルアーカイブの構築
東北大学附属図書館・半澤智絵(はんざわともえ)
東北大学は、2024年4月4日に「東北大学総合知デジタルアーカイブ」(Tohoku University Digital Archives:ToUDA)を公開した。本デジタルアーカイブは、本学のMLA(Museum, Library, Archives)を始めとする様々な学内組織(以下「部局」)が所蔵・公開している、文化・学術資源のデジタル画像や目録へのアクセスポータルとして構築したものである。本稿ではその概要を紹介する。
●構築の経緯
これまでも、資料のデジタル化及びその公開は、各部局において徐々に進められていた。しかし、情報が各部局のウェブサイトに散在していることや、画像公開方法・利用方法の違いなどが利活用の妨げとなっており、学内のMLA及びデジタルアーカイブ関係者の間では、大学統合のデジタルアーカイブ構築の必要性が強く認識されていた。さらにはIIIF対応も一部の部局でしか進んでおらず、インターネット上で公開している利便性を活用しきれていない状態であった。そこで2019年、MLA関係者及びデジタルアーカイブに関心を持つ教員によって非公式な検討会が持たれ、ここから構想が開始された。開発は、2022年度に予算化されて正式に始まった。
構想の過程においては、単に貴重なものの公開を目的とするのではなく(一般へ周知することも大切であるが)、「研究第一主義」を掲げる大学として、本学が擁する多様な研究分野、国際共同研究や大学教育において、資源を実際に活用することを第一の目的とした。さらに、多様な資源を同一のプラットフォームから利用できるようにすることで新たな視点の発見、ひいては従来の枠組みに捉われない、総合知の創成を促進する学術基盤たることをコンセプトとすることにした。名称に「総合知」という文言を入れた由来はここにある。システム構築前ではあったが、2023年、関連するワークショップも実施した。
こうした目的と経緯から、全学的観点により運営・展開していくために、2023年度に「東北大学総合知デジタルアーカイブ運営委員会」を設置し、ToUDAを公開した2024年度から本格的な活動を行っている。現在の委員長は副学長(図書館長兼務)で、メンバーは、MLA及び連携部局の長と、デジタルアーカイブに関わっている教員で構成されている。運営委員会事務は附属図書館が担当し、教職協働で事業を計画・実施している。
●ToUDAの概要
システムはオンプレミスでDrupalにより構築、サーバはデータベースサーバとWebサーバとで構成されている。データベースは次の通り2種類からなり、ユーザーインターフェースも2種類となっている。
- コレクションデータベース:独自にデジタルアーカイブを持たない部局のための、部局コレクションのデータベース。各部局のデジタルアーカイブとして見せるもの。
- 全学ポータル:上記コレクションデータベースのメタデータと学内の他のデジタルアーカイブのメタデータを収録し、統合的に検索・閲覧するためのポータル。
収録データ数は2024年7月末現在で、メタデータ約15万5千件、画像が約96万4千コマである。大部分は附属図書館本館資料であるが、附属図書館医学分館(医書)及び大学史料館のデータも収録している。中でも、これまで未公開であった大学史料館の学生運動関係資料「「長い1960年代」デジタルアーカイブ」(約5,200件)は、非常に特色あるコレクションとなっている。現在、統合日本学センター及び日本学国際共同大学院でのToUDAの利活用を予定しており、使用予定のコンテンツから優先的にシステムへの収録を開始している。
●さいごに
本デジタルアーカイブは端緒についたばかりで、システムとデータ両面ともまだまだ改良・拡張が必要である。そして、研究・教育との連携を一層図っていくためにも、基本的に完成形というものはない持続する成長体として、今後も構築を継続していく。
Ref:
“東北大学保有の文化・学術資源をデジタル公開するプラットフォーム「ToUDA 東北大学総合知デジタルアーカイブ」を新たに整備”. 東北大学. 2024-05-15.
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/05/press20240515-03-touda.html
東北大学総合知デジタルアーカイブ.
https://touda.tohoku.ac.jp/portal/
“国際ワークショップ 冷戦期日本の学生運動とデジタルアーカイブ”. 東北大学日本学国際共同大学院.
https://gpjs.tohoku.ac.jp/event/detail—id-1071.html
“2023年度第4回日本学国際研究クラスター研究会/第17回支倉セミナー研究の共有地としての漱石文庫-近代文学における「所有」の再考-”. 東北大学大学院文学研究科・文学部.
https://www.sal.tohoku.ac.jp/jp/event/detail—id-1210.html
東北大学統合日本学センター.
https://cijs.oii.tohoku.ac.jp/
東北大学日本学国際共同大学院.
https://gpjs.tohoku.ac.jp/
半澤智絵. 東北大学における大学デジタルアーカイブの構築. デジタルアーカイブ学会誌. 2024, 8(2), p. 88-91.
https://doi.org/10.24506/jsda.8.2_88