カレントアウェアネス-E
No.486 2024.09.05
E2726
50周年を迎えた日本国際児童図書評議会(JBBY)
日本国際児童図書評議会・土居安子(どいやすこ)
日本国際児童図書評議会(JBBY)は、国際児童図書評議会(IBBY)の日本支部として1974年に誕生し、2024年で50周年を迎えた。本稿では、主にJBBYの概要とその主な活動等を紹介する。
●IBBYとは
IBBYは、第二次世界大戦後の1946年に、荒廃したドイツで、イエラ・レップマン(Jella Lepman)が世界に呼びかけて集めたミュンヘンでの子どもの本の展覧会に端を発する。その後、「本を通して国際理解を深め、子どもの本で平和な世界を」をモットーに1953年にスイス・チューリッヒで発足し、2024年現在、84の国と地域が加盟している。
●JBBYの概要と主な活動
JBBYは、子どもの本を通して日本と世界をつなぐボランティア団体(一般社団法人)で、図書館員、作家、画家、翻訳家、編集者、出版関係者、研究者、書店員、読者など、幅広い会員がその活動を支えてきた。主な活動は次の三つである。
・日本の作品を海外へ
JBBYでは、日本の優れた児童文学作品や絵本を海外へ知らせる活動を行っている。その一つは、小さなノーベル賞ともいわれる「国際アンデルセン賞」への日本からの推薦である。授賞は隔年に行われ、これまでに赤羽末吉、安野光雅、まど・みちお、上橋菜穂子、角野栄子が受賞している。また、世界の優れた児童書を選定する「IBBYオナーリスト」、「IBBYバリアフリー児童図書」、「ブラチスラバ世界絵本原画展」への推薦も行っている。加えて日本の新刊の子どもの本を英語で紹介した冊子“Japanese Children’s Books”を発行し、海外で配布し、ウェブサイトでも掲載している。「日中韓共同プロジェクト」として、同じテーマの本を3国で紹介する活動も行っている。
・海外の作品を日本へ
国内では、世界から取り寄せた様々な本の展示セットを希望する図書館等に貸し出しすることによって、全国で展示が実現している。それらには「世界のバリアフリー児童図書展」セット、「世界の子どもの本展」セット(国際アンデルセン賞受賞者の作品を含む)などがあり、選出された本の紹介冊子の日本語版も発行している。また、毎年、会員の中の選考委員が選んで紹介文を付した「おすすめ!日本の子どもの本」「おすすめ!世界の子どもの本」も発行し、ウェブサイトでも公開している。加えて、子どもの本の作家や翻訳家、編集者などを講師に招いた講座やフォーラムを実施しているほか、4月2日の「国際子どもの本の日」を記念し、子ども向けの行事も行っている。
・子どもの元に本を届ける
IBBYは、戦争や政情不安や災害などにより困難な状況に陥っている子どもたちにこそ本を届けようと、「チルドレン・イン・クライシス(危機的状態にある子どもたち)」という国を越えた活動を行っている。JBBYでも、災害、貧困、DV、障害、放射線被害など、国内の困難を抱えた子どもたちを本で支援する「希望プロジェクト」を立ち上げ、子どもたちが置かれた現状を知るための学びの会を続けながら、子ども食堂や養護施設、ウクライナなど海外から日本に避難してきた子どもたちの居場所に本を届ける活動を行っている。また、本に出会うチャンスが少なかった子どもたちのために、本と出会うきっかけとなるような本を集めたブックリスト「あしたの本だな」の選定など、「あらゆる状況にある子どもに本を」の理念を実践に移している。
●50周年を迎えて
50年を機に、「子どもの本で国際理解を」「世界に平和を」という理念を再確認し、国際アンデルセン賞作家スージー・リーを招いた国際講演会(2024年3月17日)、連続講座「日本の国際アンデルセン賞受賞作家たち」(5月18日~10月5日、全5回)、シンポジウム「今、子どもの本は世界とどうかかわるのか」(講師:岩瀬成子、長倉洋海、さくまゆみこ、11月16日)、絵本作家イベント(12月15日 オンライン)、「国際アンデルセン賞受賞作家・画家展」(共催:国立国会図書館国際子ども図書館、10月1日~12月25日)、『こどもとほんのJBBY50年のあゆみ』やブックガイドの出版などを企画している。
これらをきっかけに、より多くの子どもの本の関係者が集い、子どもの本の意義について改めて考える場が創出され、子どもの本を通した国際理解への関心が深まることを願っている。
Ref:
JBBY.
https://jbby.org/
JBBY 50TH ANNIVERSARY.
https://jbby.org/50thanniversary/
IBBY.
https://www.ibby.org/
“ブックリスト”. JBBY.
https://jbby.org/booklist