E2597 – ジャパンサーチAPIハッカソン<報告>

カレントアウェアネス-E

No.456 2023.05.18

 

 E2597

ジャパンサーチAPIハッカソン<報告>

国立国語研究所・宮川創(みやがわそう)

 

  2023年2月11日と19日に、「ジャパンサーチAPIハッカソン―ミュージアム、図書館、地域で使えるサービスを作ろう!―」がオンラインで開催された。「ハッカソン」とはIT技術者等が集まり期間集中的にソフトウェア等の開発を行うイベントのことである。本イベントは、ジャパンサーチAPIを活用して博物館、図書館、コミュニティで利用できるサービスを開発するために開催され、11人が参加した。地域の文化資源を発掘・発信することで、文化遺産情報の活用促進や地域活性化に貢献することを最終的な目的としている。結果的に、イベントには、技術者、研究者、デザイナー、教育者など多様なバックグラウンドを持つ参加者が集まった。本稿では、その内容を報告する。

  2月11日には、ゼノン・リミテッド・パートナーズ代表の神崎正英氏と東京大学史料編纂所助教・国立国会図書館非常勤調査員の中村覚氏による事前レクチャーが行われた。神崎氏は「ジャパンサーチ利活用スキーマとSPARQL」というタイトルのもと、ジャパンサーチAPIの利用方法、データ構造の基本情報、クエリ言語SPARQLを用いたデータ検索方法を解説した。中村氏は「ジャパンサーチAPIの利活用事例」というタイトルで、参加者が各自のプロジェクトでAPIを活用するきっかけとなるよう、様々な事例を紹介した。事前レクチャーによって、APIの活用の幅と可能性を理解し、ハッカソンがスタートした。

  参加者をBとCの2チームに分け、チームごとに協力してプロジェクトを進めることになった。チーム分けは事前になされ、参加者のスキルや興味に基づき、バランスの良いチーム構成になるよう配慮されていた。

  Bチームは、美術品(絵画、巻物)や写真といったジャパンサーチの連携コンテンツの画像から、教科書に出てくる歴史人物の名前を当てる教育用クイズアプリの開発を目指した。一方、筆者も加わったCチームは人工知能(AI)を用いてジャパンサーチのアイテムを加工して偽物のアイテムを作成し、本物のアイテムに偽物のアイテムを紛れ込ませ、どれが偽物か当てさせることで両者の見分け方を学べる教育用アプリの開発に取り組んだ。このプロジェクトでは、ジャパンサーチのデータベース内のアイテムをStable Diffusionなどの画像生成AIで加工するとともに、テキスト生成AIとしてChatGPTとGPT-3のAPIを使って偽物の説明文も作成した。このフェーズでは、参加者がそれぞれの専門知識や技術力を生かして、効果的なチームワークを構築することが求められた。

  2月11日から19日までは、開発期間であった。この期間、各チームはそれぞれのプロジェクトに取り組んだ。開発期間中は、情報交換やコミュニケーションにSlackを活用し、プロジェクトの進捗や課題についてリアルタイムで議論した。また、Zoomを利用した開発セッションを頻繁に開催し、チームメンバーがオンラインで集まって共同作業を行った。具体的には、Bチームは、クイズアプリのアイデアの練り直し、技術的な実装、デザインの改善、ユーザーテストなど、教育現場で使えるアプリを開発するために必要な一連の作業に取り組んだ。同様に、Cチームは、アイデアの洗練、画像生成AIやテキスト生成APIの活用の検討、デザインの改善などを行った。オンラインツールの活用は、コラボレーションやアイデアの共有を促進し、開発プロセスを効率化する上で非常に有益であった。

  2月19日に各チームが開発した成果の発表とデモンストレーションが行われた。Bチームは、教育現場で活用できるクイズアプリ「クイズこの人はだれ?―小学教科書にでてくる歴史人物39人」について、プロジェクトの概要、実装方法、利用シーン、技術的課題、解決策を発表した。一方、Cチームは“Fake Japan Search”について、プロジェクトの概要、画像生成AIとテキスト生成APIの利用方法、偽アイテムの生成過程、 開発における教育的アプローチについて発表した。発表とデモンストレーションの後、参加者は互いのプロジェクトについて質問や意見を交換した。また、講師陣は各チームの成果物を総評し、チーム全体やチーム成員の努力や工夫を評価した。

  本イベントでは、参加者が技術やアイデアを共有し、新しいサービスを開発することができた。さらに、オンラインツールを使ったコラボレーションの成功例として、参加者は今後のイベントやプロジェクトに役立つ貴重な知見を得ることができた。また、異なるバックグラウンドを持つ参加者同士のコラボレーションにより、新たなアイデアや視点が生まれ、予想を超える成果を上げることができた。参加者が、ジャパンサーチAPIを活用して、地域の文化資源を発掘・発信し、教育現場等での利用を促進するヒントを得られたといえよう。

  なお、本イベントの講演資料や発表録画等は、後日ジャパンサーチのウェブサイトで公開される予定である。各チームの成果物の内容や意見交換等の詳細については、ぜひそちらを参照されたい。

Ref:
“ジャパンサーチAPIハッカソン―ミュージアム、図書館、地域で使えるサービスを作ろう!―”. ジャパンサーチ.
https://jpsearch.go.jp/event/hackathon202302
JAPAN SEARCH.
https://jpsearch.go.jp/