E2581 – COVID-19下の利用者アンケートと動向調査:NDL東京本館

カレントアウェアネス-E

No.453 2023.03.02

 

 E2581

COVID-19下の利用者アンケートと動向調査:NDL東京本館

利用者サービス部サービス企画課・松田稔広(まつだとしひろ)

 

●抽選予約制による入館制限の終了

  国立国会図書館(NDL)東京本館では,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染対策のため,2020年6月11日の来館サービスの再開後から継続してきた抽選予約制による入館制限を段階的に緩和し,2023年1月14日分を最後に終了した。

  本稿では,入館制限期間中に行った利用者アンケート及び利用動向調査の概要を紹介し,入館制限等による利用者への影響について報告する。

●利用者アンケート

  2021年11月1日から2022年1月31日までの期間,ウェブフォームを用いて行った。サービス休止や入館制限による影響,感染症対策への評価等とともに,年齢層や職業を調査することで,利用者の属性による傾向分析も併せて実施した。

  サービス休止や入館制限による影響については,「大きくはないが不都合が生じた」(51%),「大きな不都合が生じた」(27%)を合わせて,全体の4分の3以上が何らかの不都合があったと回答した。年齢層では20代(計85.2%)と40代(計87.0%)で高く,職業別では教職員(大学教員を含む)及び大学院生で「大きな不都合が生じた」という回答が50%近くに達した。不都合が生じた理由は,「入館の制限」という回答が圧倒的に多く,全体で74.4%,20代と40代では約90%だった。回答者の主たる活動地は,首都圏の1都3県が約9割を占めており,来館利用が容易な地域からの回答が多かったことが影響したとみられる。

  来館者の安全確保のために実施した各種取組への評価は,「十分な取組であった」「おおむね十分な取組であった」という回答の合計が,いずれも90%近くに達し,概ね高く評価されている。

  非来館型サービスへの要望については,「デジタル化資料を自宅でも利用できるサービスの開始」(71%)と「デジタル化資料の充実」(70%)が多く,前者は教職員(大学教員を含む)や大学院生等において80%を超えていた。

●利用動向調査

  利用動向調査では,匿名化した利用者情報や申込情報を統計的に分析した。2018年にも同項目で調査を行っており,今回は入館制限後の変化を分析した。1日当たりの入館者数を約1,000人に制限した期間のうち,2020年9月7日から2021年8月31日までの約1年間を調査期間とした。

  資料利用については,館内閲覧では刊行後5年以内の資料の利用が多く(図書37%,雑誌42%),遠隔複写では,雑誌は2000年代以降の利用が多いのに比べ,図書は年代が分散する傾向にあった。分野(請求記号のNDLC分類)では,「簡易整理(Y)」「芸術・言語・文学(K)」「歴史・地理(G)」などの利用が図書においては多い。これらは前回とほぼ同じ傾向であり,入館制限による変化は見られなかった。

  館内閲覧を申し込んだ利用者層の年代別内訳は,20代が27%で最も多く,30代と合わせると40%を超えるが,比率は前回より低下した。遠隔複写は館内閲覧ほど年代の偏りが見られないが,利用者一人当たりの1か月の申込件数は前回の約1.7倍に増加した(前回は3,225.9件。今回は5,536.5件)。

  利用者の平均滞在時間は,「1時間以上~2時間未満」が最多(22.9%)であり,全体平均は「2時間59分」で,前回より9分短くなった。1回の貸付上限を超える資料を利用するために複数回の閲覧申込を行った利用者の比率は,「地図室」「図書カウンター」等で3割を超え,全体として前回より上昇した。明確な目的をもって来館し,短時間で複数回の申込みを行う利用者が増えたと考えられる。

●結び

  利用者アンケート及び利用動向調査からは,遠隔複写の申込増や短い滞在時間中に効率的に資料を利用するなど,利用者の行動変容の一端が見られると同時に,非来館型サービスへの要望も明らかとなった。こうした変化に対応して,2022年には個人送信の開始(E2529参照)や図書カウンターで1回に提供する資料の上限数を3点から5点に引き上げる,憲政資料室の開室時間を19時までに延長するなどの改善を実施した。今後も,利用者の動向や要望を調査する継続的な取り組みが必要と言える。

Ref:
“2020年5月27日 【重要】来館サービスの再開のお知らせ(6/1更新)”. NDL.
https://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2020/200527_01.html
“2022年12月23日 東京本館の入館制限の変更について(2023/1/19から)”. NDL.
https://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2022/221223_01.html
国立国会図書館. 国立国会図書館年報 令和2年度. 2021, p. 19-20.
https://doi.org/10.11501/11941501
“2021年11月1日 東京本館における新型コロナウイルス感染症への対応等に関するアンケートの実施について”. NDL.
https://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2021/211101_01.html
木村祐佳. 個人向けデジタル化資料送信サービスの開始. カレントアウェアネス-E. 2022, (441), E2529.
https://current.ndl.go.jp/e2529