E2406 – 佐賀県における「チーム司書ネットワーク等推進事業」の取組

カレントアウェアネス-E

No.417 2021.07.29

 

 E2406

佐賀県における「チーム司書ネットワーク等推進事業」の取組

佐賀県立図書館・諸岡秀孝(もろおかひでたか)

 

   佐賀県では,2020年度から「県立図書館司書が中心となって市町立図書館司書(市町立図書館には,公民館図書室も含む。以下同じ。)とのネットワークを強化し,市町立図書館支援の充実および県内司書のレベルアップを図ることにより,県民が本に親しむ環境づくりの充実を図る」ことを目的とした「チーム司書ネットワーク等推進事業」に取り組んでいる。本稿では,本事業の実施に至った背景と具体的な取組内容について紹介する。

●経緯

   佐賀県では,2017年度から「今後の図書館を考える司書と知事のつどい~司書を大切に思い,活躍を期待して~」を開催してきた。図書館サービスの向上や地域住民との協働・連携に顕著な功績,または長年にわたり県民の読書活動や図書館行政を支えた功労を有している司書を対象とした「公共図書館司書表彰」を行い,司書の重要性を評価し,プレゼンスの向上を図っている。(2019年度までに22人表彰)

   その後,2019年7月には「-佐賀県総合計画2019-人を大切に,世界に誇れる佐賀づくりプラン」が策定された。その中で当館は「県の中核図書館としての役割を果たし,県民が生涯にわたり学び続けていく「知の拠点」として,利用しやすい魅力ある施設にする必要がある」と規定され,次の取組方針および最終年度(2022年度)までの成果指標が設定された。

【取組方針】

  • 県立図書館が中核図書館としての役割を果たすとともに,市町立図書館との連携強化をさらに進めることにより,県民誰もがいつでもどこでも読みたい本が手に取れる環境づくりを図る。
  • 県立図書館における新刊児童書全点購入により子どもの読書環境の充実を図るとともに,子どもの発達段階(乳幼児期,小学生期,中学生期,高校生期)に応じ,地域,家庭,学校と連携して,読書への関心を高め,読書習慣の形成を図る。
【成果指標】
  • 県立図書館の相互貸借冊数(2022年度目標:1万9,000冊)
  • 県立図書館の児童書貸出冊数(県から市町への相互貸借冊数を含む)(2022年度目標:14万2,000冊)

   これらの成果指標を達成するために,「チーム司書ネットワーク等推進事業」を実施することとなった。

●チーム司書ネットワーク等推進事業の具体的な取組

  • リーダー司書の設置
       冒頭で述べた本事業の目的を達成するため2020年4月1日付けで当館の組織再編を行い,「司書ネットワーク課」を設置した。館内サービスを行う「相談・サービス担当」と市町図書館の支援を行う「図書館・司書支援担当」の2係制であり,経験豊富な司書(会計年度任用職員)2人を「リーダー司書」として同課に配置した。リーダー司書は,次に述べる巡回訪問,テーマ別研究会を主に担当している。
  • 巡回訪問
       市町立図書館を定期的に訪問し,寄贈本の受入基準・除籍方法・コロナ禍でのおはなし会の開催方法といった司書業務に係る意見交換,技術的指導を実施した。2020年度は20市町の全31館をのべ52回訪問した。市町立図書館からは,「人と人がつながっている感じがしてとても嬉しい。窓口になってくれる人が分かりとても助かっている。とても良い制度を作ってもらったと思っている。」との感想が寄せられている。
  • テーマ別研究会の運営
       これまで,佐賀県公共図書館協議会が実施していたテーマ別研究会をリーダー司書が運営する。2020年度はレファレンス研究会を6回開催,児童サービス研究会を5回開催した。
  • 第1回司書のつどいの開催
       2021年2月10日に,「第1回司書のつどい」を開催した。「公共図書館司書表彰」に加えて,作家の講演会,知事,作家および司書による鼎談,チーム司書ネットワークのロゴの発表および「帯プロジェクト」の実施を発表した。「帯プロジェクト」では県内図書館等の各司書がおすすめする新書版本に,それぞれ手作りの「帯」を作成し,各館で展示した。
  • 県内トップ(各分野著名人)おすすめ児童書の地元紙への掲載
       および展示児童書の活用・広報を目的に,県内トップ(各分野著名人)6人のおすすめ児童書(3冊から5冊)を佐賀新聞の子ども向け新聞『週刊ぺーぱくん』へ掲載するとともに,県立図書館での展示や市町立図書館への巡回展示を行った。

●今後に向けて

   佐賀県では,2004年度に横断検索システム(情報)を整備し,2010年度に配送システム(物)を整備し,この度2020年度に司書(人)のネットワークを整備した。このことにより,人,物,情報のネットワークが整備された。

   2021年度は,これらのネットワークにより,児童書活用の取り組みを強化・拡充していきたい。

Ref:
佐賀県. -佐賀県総合計画2019- 人を大切に,世界に誇れる佐賀づくりプラン. 佐賀県, 2019.
https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00369237/3_69237_199023_up_v6uej7pq.pdf