E2356 - コロナ禍におけるオンライン学会:日本図書館情報学会の場合

カレントアウェアネス-E

No.408 2021.02.18

 

 E2356

コロナ禍におけるオンライン学会:日本図書館情報学会の場合

日本図書館情報学会技術ワーキンググループ

 

   日本図書館情報学会では,春季研究集会と研究大会の年2回,会員に対して研究発表の場を設けている。学会発表は会員それぞれの研究成果を発表し,質疑応答を経て研究の内容を改善した上で,学会誌への論文投稿へとつなげていく場である。特に研究発表を学位取得論文へとつなげる必要がある若手研究者にとっては,より重要な場であるといえる。しかし2020年度は新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響から,大会会場となる大学の施設使用が制限されるだけでなく,参加者の感染リスクを考えて会員を一か所に集合させての開催を避ける必要が生じた。

   2020年4月18日に開催された第1回常任理事会では,この状況下で,同年6月6日に開催が予定されていた春季研究集会の開催方法を検討した。議論の結果,研究集会は学会が行うべき重要な活動であることを確認した上で,2020年については通常の形式では開催せず,オンラインでの開催を決定した。さらに,技術的な問題が関わってくるため,技術ワーキンググループ(以下「技術WG」)を別途立ち上げて検討することとなった。

   技術WGには,常任理事会から安形輝,今井福司,青柳英治が参加し,研究委員会から野口康人が参加した。技術WGはオンラインでの学会発表を実施していた日本教育工学会や情報処理学会の先行事例ならびに,各大学で行われていた遠隔授業のパターンを踏まえながらメール上での議論を進めた。技術WGでは,オンラインでの学会発表にあたり発表者と研究発表の各セッションに置かれる司会者が参照する手引書を作成し,発表をリアルタイム型にするかオンデマンド型にするか,発表者を会場へ来場させるかどうか,機材がない発表者のみを来場させてサポートするかどうかについて検討の上,いくつかのパターンで報告書を作成した。

   これらの資料に基づいて,2020年5月15日の常任理事会で検討を行った。通常の学会発表に可能な限り形式を近づけることを優先させること,発表者の発表機会が不規則な発言で妨げられないようにするといった理由から,オンライン会議システムZoomを学会で契約し,ウェビナー機能を用いてオンライン開催することを決定した。また,参加費については,従来は,金額に差を設けて,会員・非会員両方から徴収していたが,今回は非会員のみ徴収した。

   常任理事会での方針決定後,技術WGで発表者に対する事前研修会を設けた。全ての発表者が1回は参加できるよう,平日夜と週末の昼の時間帯を2回設定した。また,質疑応答や進行を円滑に行えるよう,当日のセッション司会者も2回の事前研修会のどちらかに参加してもらうようにした。手引書を詳細に作成していたことから,発表者のほとんどが問題なく事前練習を行えたが,機材や回線の状況から接続が不安定になった発表者もいたため技術WGから対応を依頼し,再接続の方法などを案内した。

   発表者やセッション司会者以外の参加者については,学会ウェブページに設置したGoogleフォームに申込情報を記入してもらい,一斉メール送信でZoomのURLを周知し,発表論文集は各自がダウンロードする形で配布した。

   春季研究集会の当日には,技術WGがウェビナー機能を付与したZoomアカウントの立ち上げを行い,技術WGのメンバーはシステム障害に備えて常に待機していた。参加予定者からの参加情報のメールが届かないなどの申し出に対応が必要となったものの,システムのトラブルは全くなく146人の参加を得て,終えることができた。

   続く10月3日と10月4日の研究大会も新型コロナウイルス感染症の影響から,予定していた会場の利用ができなくなったため,同様の方式で開催することが決まり,技術WGに常任理事会から小泉公乃が加わった。

   春季研究集会とは異なり,研究大会では会員集会,ポスターセッションが予定されていた。検討の結果,会員集会はそのままオンラインで実施,ポスターセッションは各発表者がおのおの個人のZoomアカウントを利用してミーティング場所を設定し,研究委員会にミーティング場所のURLを通知することにした。参加者はメールで配付された当日プログラムファイルにあるURLにアクセスし,おのおのの発表を聞くようになっていた。

   このように春季研究集会に比べて,追加となった箇所は多かったものの,春季研究集会と同様に,発表者とセッション司会者に対する事前研修会等を実施したためか,研究大会も大きな問題はなく,202人の参加を得て無事全ての発表を終えることができた。従来参加できなかったと思われる遠方の参加者から参加できるようになったとのコメントが寄せられた。

   オンラインでの実施に際して,質問については,複数人が同時に発言することを避け,スムーズに進めるために,Zoomの「手を挙げる」機能を使い,司会者が指名を行うという形式やチャットで受け付けた。また,ウェビナー機能の利用により,当初懸念していた,発表者以外の参加者の音声が発表中に混信することは全て避けることができた。しかし,発表者やセッション司会者以外は,当日の参加者がどの程度の規模で,誰が来場しているのかが分からないようになっていたため,参加者同士の交流ができなかったとの指摘が参加者からあった。

   この指摘を踏まえつつ,2021年度以降は,参加者同士の交流を促すためにも,従来の集合形式に戻す予定で検討を進めている。最後になったが,本稿執筆時点までに技術WGでやり取りしたメールの総数は240通を超えていた。本記事が他学会で同様に奮闘している方々への参考となれば幸いである。

Ref:
“【更新】[重要]2020年度春季研究集会のオンライン開催について”. 日本図書館情報学会. 2020-05-18.
https://web.archive.org/web/20201125082610/https://jslis.jp/2020/05/18/【更新】〔重要〕2020年度春季研究集会のオンライ/
“【重要】第68回研究大会,シンポジウムについて”. 日本図書館情報学会. 2020-07-13.
https://jslis.jp/2020/07/13/【重要】2020年度研究大会,シンポジウムについて/
“日本教育工学会 2020年春季全国大会 オンライン試行について(お礼)”. 日本教育工学会. 2020-03-02.
https://www.jset.gr.jp/news/news-2037/
情報処理学会 創立60周年記念 第82回全国大会 オンライン開催ポータル.
https://sites.google.com/view/ipsj82taikai/