E2325 – 広島県における学校図書館環境整備の推進

カレントアウェアネス-E

No.403 2020.11.26

 

 E2325

広島県における学校図書館環境整備の推進

広島県教育委員会・寺田純子(てらだじゅんこ),岡田真由(おかだまゆ),班石由佳(まだらいしゆか)

 

   広島県では,近年,学校図書館の環境整備の推進に取り組んでいる。本稿では,取組の背景・実際およびその成果について紹介する。

●学校図書館リニューアル等事業の背景について

   広島県では,これからの「変化の激しい社会」をたくましく生き抜くための力の育成を目指した「広島版『学びの変革』アクション・プラン」を2014年12月に策定し,子どもの主体的な学びを促す教育活動の全県展開に向けて取組を進めている。

   また,国による第四次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」(2018年4月)を踏まえて策定した「広島県子供の読書活動推進計画(第四次)」(2019年11月)に基づき,読書習慣の形成に向けた取組および読書習慣の形成を支える環境整備を推進し,子どもの読書活動の一層の充実を図っている。

   その一環として,本県での授業改善の取組,子どもの読書環境を整備する取組との関連を図りながら,「広島版『学びの変革』アクション・プラン」に基づく,子どもたちの主体的な学びを促す取組の一つとして学校図書館を積極的に利活用した教育を推進するため,学校図書館に係る環境整備を行う「学校図書館リニューアル等事業」を実施することとした。

●学校図書館リニューアル等事業の実際について

   学習指導要領(平成29年〔幼稚園・小学校・中学校・特別支援学校(幼稚部・小学部・中学部)〕,平成30年〔高等学校〕,平成31年〔特別支援学校(高等部)〕告示;CA1934参照)では,学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に生かすとともに,自主的,自発的な学習活動や読書活動を充実させることの必要性が示されている。

   一方で,本県における学校図書館利活用に係る課題として,図書館資料の種類に偏りがあることや,内容の古い図書館資料の廃棄・更新が行われていないことがあった。そのことで,学校図書館ガイドライン(E1896参照)が求める,「読書センター」としての機能に加えて,学校図書館に求められる「学習センター(教育課程の展開に寄与する授業のねらいに沿った資料の整備,授業での活用)」,「情報センター(児童生徒や教員のニーズに対応する図書館資料の整備)」の機能について,その充実が十分に図られていない面があり,本県で取組を進めている「課題発見・解決学習」の過程の一部である「情報の収集」に係って,学校図書館の利用が十分に行われていない状況にあった。

   その課題を解決し,その成果を県内に普及させるため,2019年度に,小学校1校,中学校1校,高等学校4校,特別支援学校2校をモデル校として指定し,「学校図書館リニューアル等事業」を実施し,学校図書館資料の充実および環境整備の一体的な改善を行った。

   本事業では,図書館資料の廃棄・更新を適切に行うとともに,配架や室内のレイアウトの変更による環境整備を行うことで,授業での学校図書館の利活用を推進し,児童生徒の主体的な学びを促進することをねらいとしている。具体的には,破損・汚損したり,内容的に情報が古かったりする図書館資料の廃棄(除籍)・更新や,各学校の実態や特色に合わせた図書の分類,必要な情報を「調べやすい・探しやすい」拝架の工夫,児童生徒の読書活動を促す特設コーナーや掲示物の作成,くつろぎスペースの設置等を行った。

●学校図書館リニューアル等事業の成果について

   成果として,環境整備を行ったことで,児童生徒が学校図書館へ積極的に足を運ぶようになり,来館者数や貸出冊数が増加していることが挙げられる。実際にモデル校の児童生徒からは,「明るくてリラックスでき,とても落ち着く図書館になった」「本の置き方が工夫されて探すのが楽しい」などの声が挙がっている。モデル校の取組や実践事例については,広島県教育委員会が作成した『学校図書館リニューアルの手引』に掲載するとともに,学校図書館担当者を対象とした研修で,モデル校の取組を紹介し,広く県内の学校に情報発信している。その結果,県内で,内容が古い図書館資料等の廃棄・更新を行う学校数が増加しており,全県的に学校図書館の環境整備への意識が高まり,学校図書館を利活用した授業も増加している。

   県立学校のモデル校をはじめ,各学校では,広島県立図書館の学校支援事業と連携し,レファレンス,図書の貸与,学校訪問指導,青少年のための 電子図書館サービス 「With Books ひろしま」の利用促進等を行い,各学校の学校図書館教育全体計画に基づき,読書活動の推進および各教科等での授業での効果的な図書の利活用の取組を進めている。

   今後も,授業における学校図書館の利活用を推進していき,児童生徒の主体的な学びの更なる充実につなげていきたい。

Ref:
“広島版「学びの変革」アクション・プランについて”. 広島県教育委員会.
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/global-manabinohenkaku-actionplan/
子供の読書活動の推進に関する基本的な計画. 文部科学省, 2018, 32p.
https://www.kodomodokusyo.go.jp/happyou/hourei_download_data.asp?id=28
“広島県子供の読書活動推進計画(第四次)”. 広島県教育委員会.
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kotoba/kodomonodokusyokatudou.html
“夢あふれる学校図書館”. 広島県教育委員会.
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kotoba/kotoba-dokusyo-yumetosyokan.html
“【御紹介】学校図書館をリニューアルしています!”. 広島県教育委員会.
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kyouiku/toshokan-renewal-syoukai.html
“学校図書館リニューアルの手引”. 広島県教育委員会.
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kotoba/gakkotosyokannrinyu-aru.html
“令和2年度学校図書館担当者等研修”. 広島県教育委員会.
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kotoba/r2gakkoutoshokan-kenshu.html
三浦太郎. 学校図書館ガイドラインと学校司書のモデルカリキュラム. カレントアウェアネス-E. 2017,(322), E1896.
https://current.ndl.go.jp/e1896
森田盛行. 新学習指導要領と学校図書館の活用. カレントアウェアネス. 2018, (337), CA1934, p. 9-11.
https://doi.org/10.11501/11161997