E2232 - 田原市図書館の行政・議会支援サービスについて

カレントアウェアネス-E

No.386 2020.02.27

 

 E2232

田原市図書館の行政・議会支援サービスについて

田原市中央図書館・河合美奈子(かわいみなこ)

 

 田原市図書館(愛知県)では,2012年4月に「行政支援サービス」を始めた。2015年度にはこのサービスの枠組みを生かして議会支援を始め,2017年度,「行政・議会支援サービス」に名称を改めた。本稿では,実施に至るまでの経緯や現在の取組を紹介する。

●経緯

 2011年度,それまで行っていた地域に関する新聞記事をまとめて市役所に配布する「新聞記事速報」のサービスを,作業量や著作権の問題を理由に廃止した。その代替策として,2012年度,田原市に関する新聞記事の見出しを検索・閲覧できる「田原市新聞記事見出しデータベース」の運用を開始した。地方紙を含む5紙の収録に当たっては,新聞社から許諾を得ている。記事のチェックや見出しのデータ入力等,全ての作業を図書館で行っている。このデータベースに加え,何か図書館資源の利活用につながる新しいサービスを市役所職員向けに提供したいと考え,レファレンスや貸出など,既にあった図書館の手法をいくつか組み合わせた「行政支援サービス」が生まれた。

 始めた当初は図書館の姿勢も受け身で,依頼数は少なかった。これではいけないと,改めて図書館の全職員向けにサービス内容と受付方法を周知するための説明会を開き,積極的なPRをスタートした。行政職員への地道な声かけや,利用する立場からの声を,申込書の簡素化やサービスの廃止・追加といった改善につなげる取組が功を奏し,徐々に依頼が増え始めた。2014年度と2018年度の統計を比較すると,全体の依頼件数は4倍に増加している。

●「行政・議会支援サービス」の現在

 「行政・議会支援サービス」では,「レファレンス(調査の援助)」,「資料の複写」,「資料の貸出」,「政策・イベントのPR展示」,「学校教育支援(調査の援助)」の5種類のサービスを展開している。対象は行政職員,議会事務局職員,議員,市内の小中学校教員,学校司書と幅広く,行政・議会・学校の3つの柱で成り立っている。申し込みには「申込書」の提出が必要で,サービス別に4種類の様式に分かれている。主に,参考郷土チームの5人が担当する。

 レファレンスでは,企画立案など業務に関する調査の援助を行う。具体的には,郷土の歴史や新聞記事,先進事例,議会視察先の情報に関する依頼が多い。依頼内容によってはチーム全員で調査にあたるが,調査中や調査済みの資料・テーマを回答様式1枚で共有するなど,効率よく進める工夫をしている。展示では,市の事業やイベント,パブリックコメントの意見募集のPRに関する依頼が多い。写真やパネル,関連グッズなどを担当部署から借り受け,資料と一緒に並べるなど見せ方を工夫している。

●議会支援・学校支援

 2014年12月,議会事務局職員より「議会図書室を使ってもらえるように変えたい」という相談を受けたことをきっかけに,議会との連携が始まった。2015年度から,「資料の貸出」,「レファレンス」,「展示」と,毎年一つずつサービスを拡大していった。議会の特性を踏まえ,現在は,選書の参考に図書館の新刊案内や出版社目録を提供するなど「議会図書室の整備への協力」や「定例会にあわせた団体貸出」を,議会独自の支援として行っている。2019年8月には,議員,議会事務局,図書館の連携イベントとして,図書館を会場に,市民と議員が田原市のさまざまな課題について自由に意見を交換する「図書館で議員と語ろうホリデー」を開催した。

 2018年度には,学校からの調査依頼に対応する仕組みが十分でないことがわかり,「学校教育支援(調査の援助)」のサービスを追加した。ここではレファレンスのみを行い,郷土に関する調査,新聞記事検索,授業テーマに関する調査の依頼などに対応している。複写物を含む回答や参考資料は,図書館以外に学校,移動図書館,学校司書経由でも受け取ることができる。

●今後の展望

 2019年11月,第5回図書館レファレンス大賞で文部科学大臣賞を受賞し,当館の「行政・議会支援サービス」や「レファレンスサービス」を多くの人が知る機会となった。しかし,まだこのサービスが全ての対象者に知られ,活用されているわけではなく,今後も効果的なPRを行っていきたい。また,「資料が役に立った」,「展示のおかげでイベントにたくさんの人が集まった」と声をかけられたり,繰り返し依頼してくれる利用者が増えたりと,この取組により図書館とサービス対象先との新たなつながりができている。行政・議会・学校は図書館事業の大切な協力者であり,今後も信頼できる関係性を継続して築いていきたい。

 このサービスは,図書館や住民にとって,地域の課題や話題を身近なものにしてくれる。行政・議会の場で質の高い議論が行われ,住民がまちの課題と向き合い考えるきっかけになり,学校で子どもがふるさとの魅力的な資源を生かしたまちの将来を思い描くようになることは,地域の課題解決の促進にもつながるのではないかと考える。利用者のニーズに対応しながら,このサービスを継続していくことで元気なまちづくりを支えていきたい。

Ref:
https://www.libraryfair.jp/news/9513
http://www2.city.tahara.aichi.jp/section/library/newspaperDB.html
http://www2.city.tahara.aichi.jp/gikai/douzo/4/pdf/73/gikai73_Part17.pdf