E2233 – リーフレット「研究データにDOIを付与するには?」の製作

カレントアウェアネス-E

No.386 2020.02.27

 

 E2233

リーフレット「研究データにDOIを付与するには?」の製作

名古屋大学宇宙地球環境研究所・能勢正仁(のせまさひと)
東京大学大学院人文社会系研究科・大向一輝(おおむかいいっき)
国立環境研究所環境情報部・尾鷲瑞穂(おわしみずほ)
東京学芸大学附属図書館・高橋菜奈子(たかはしななこ)
情報通信研究機構戦略的プログラムオフィス・村山泰啓(むらやまやすひろ)

 

 研究データ利活用協議会(Research Data Utilization Forum:RDUF;E1831参照)は,オープンサイエンスにおける研究データ整備やその保存といった利活用体制の実現に向け,分野を超えて研究データに関するコミュニティの議論・知識共有・コンセンサス形成などを行う場として,2016年6月に設立された研究会である。RDUFでは,特定のテーマについて小委員会を設置し,研究データの利活用を図るためのガイドライン・ノウハウ集・事例集・提言のとりまとめ等,研究データに関わりのあるステークホルダーが,ボトムアップ的な活動を行ってきた。

 「研究データの利活用の推進においては,データ公開者のインセンティブの確保が重要である」との認識から,リサーチデータサイテーション(Research Data Citation)小委員会が2019年1月に設置され,約1年間,データ引用・被引用を促進する方策の議論を行ってきた。小委員会の主な成果物としては,FORCE11が発表した“Joint Declaration of Data Citation Principles”(JDDCP)の邦訳,22学術分野にわたる学術雑誌のデータポリシー調査,研究データにDOIを付与する手順を説明したリーフレット製作が挙げられる。前2つの成果物の詳細な説明は他の機会(JDDCPの邦訳は,E2234参照)に譲り,ここでは,リーフレットについて説明する。

 まず,研究活動から生産される研究データは,研究者コミュニティでは研究者が「所有」していると捉えられることが多いため,リーフレット製作においてもデータ「所有者」となる研究者の立場から検討を行った。FAIRデータ原則(E2052参照)をはじめ,データ引用・被引用において,データへの永続的識別子DOIの付与が重視される趨勢については,以前から議論されている(E1537CA1849参照)。しかしこれを実践するにあたり,「DOIを付与するための手続きや相談先が分からない」「実際にDOIを付与する際に要する手間や費用を知りたい」という声が研究者から上がってきた。研究者はその分野の研究やデータそのものについては詳しいが,データのマネジメントやデータ引用・被引用などの近年の潮流に関しては疎いことが少なくない。そこで,研究者がDOIを付与する際の参考となるよう,DOIの働きや仕組み・準備するもの・具体的な手続きなどの情報を盛り込んだリーフレットを製作することにした。リーフレットはA4サイズ・巻き3つ折りで,一目で伝わる形態にした。

 外面では,研究者自身やその所属機関にとってのメリットを解説し,DOI付与のインセンティブの情報を提供している。DOIの付与により,研究データ引用の促進,研究業績としてのデータ被引用数の利用,研究費・データ整備予算獲得につながる好循環を図示した。また自分でサーバを運用するデータ提供者向けに,DOIの仕組みやDOIの恒久性保証のための留意点(リポジトリやランディングページ,メタデータの管理など)も載せている。

 内面は,DOIを付与するための対応がわかるフローチャートになっている。質問に答えていくと,個々の状況に応じた対応が分かるよう工夫されている。「自分のデータセットにDOIを付与して公開・共有したい」場合と「根拠データにDOIを付与するように求められた」場合に分け,例えば所属機関でDOIの付与ができない場合には外部のリポジトリでDOIを取得する等,具体的な流れを示すよう意図した。

 リーフレットは現在デザイン修正中で,2019年度中には印刷配布,RDUFのウェブサイト上での公開を予定している。このリーフレットが,研究データの引用・被引用を促進する一助になれば幸いである。

Ref:
https://japanlinkcenter.org/rduf/
https://doi.org/10.1038/sdata.2016.18
E1831
E2234
E2052
E1537
CA1849