E2143 – つくば市立中央図書館におけるロボットスーツHAL®の導入

カレントアウェアネス-E

No.370 2019.06.13

 

 E2143

つくば市立中央図書館におけるロボットスーツHAL®の導入

 

 つくば市は,茨城県の南西部にあり,県庁所在地の水戸市から南西に約50キロメートル,東京から北東に約50キロメートルに位置している。面積は約283.72平方キロメートルで,県内で4番目の広さである。名峰「筑波山」をはじめとする豊かな自然と,研究・教育機関の集積である「筑波研究学園都市」を有する自然と科学が調和したまちである。

 筑波研究学園都市には,産業技術総合研究所,高エネルギー加速器研究機構,国土地理院,宇宙航空研究開発機構筑波宇宙センターなど,国と民間合わせて約150の研究機関が立地し,2万人に迫る研究従事者が日々,最先端の研究開発を行っている。また,広大なキャンパスを誇る筑波大学は,大学発のベンチャーの数が全国の大学で第3位の規模を誇るなど国内有数の総合大学であり,つくば市とは様々な分野で連携を進めている。

 つくば市には,中央図書館のほかオンラインシステムで結ばれた4か所の交流センター図書室が設置されているが,広大な市域を有することから,市内の隅々まで図書館サービスが行き届くよう自動車図書館を運行し,さらに,本庁舎など5か所に返却ポストを設置している。日々,これら施設間の配送業務を行っており,担当職員の身体的負担が大変重くなってきているため,身体への負荷を減らすことができる装着型ロボットである「HAL®」を導入し職員の負担軽減を図ることとした。

 HAL®とは,筑波大学発のベンチャー企業であるCYBERDYNE株式会社の製品で,脳から神経を通じて筋肉へ送られる信号を微弱な「生体電位信号」として皮膚に貼ったセンサーが読み取り,体に装着した機体のモーターを動かすことで,人の動作を補助するものである。HAL®の様々なモデルのうち,当館に導入した「HAL®腰タイプ作業支援用」は,医学的・解剖学的観点からの解析・シミュレーションに基づき,腰部負荷を低減する機能を実現したウェアラブルロボットで,バッテリー搭載による稼働時間は約4.5時間,本体は約3kgのコンパクトな軽量モデルである。新たに防塵・防水機能が加わったため,屋外作業となる自動車図書館での使用など様々な場面での活用が見込めることから導入に至った。なお,図書館への導入は全国初の事例である。

 HAL®の導入については,「つくば市トライアル発注認定制度」を活用して,2018年1月26日から2か月間消防本部においてレンタルにより試験導入し救急隊員が装着した。当館では,2018年8月から8か月間,同様にレンタルにより試験導入した。つくば市トライアル発注認定制度とは,市内中小企業の販路開拓を支援するため,新規性の高い優れた新製品・サービスを市が優先的に導入する制度である。当館では,試験導入を経て,2019年4月から消防本部とともにリース契約により本格導入を開始したところである。

 CYBERDYNE株式会社によると,HAL®の装着により腰にかかる負担を最大で40%軽減する効果があるとのことだが,実際,日頃使用している職員によると,仕事終わりの疲労感が少なくなり感覚的には腰への負担が50%程度軽減できているとのことである。また,「装着による腰の負担軽減が図れることから作業中の安心感が得られる」,「本体が軽量なため作業の妨げにならない」,「装着が短時間で簡単である」など,体への負担軽減効果は確実に得られているようである。

 当館では,HAL®のほか,株式会社Doogの自動追従運搬ロボット「サウザー」も導入している。2016年度に市が購入し,2018年3月から5月までの試験導入を経て本格導入した。HAL®同様,筑波大学発のベンチャー企業が開発したもので,荷台に荷物を積載し人や台車の後ろを追従するロボットである。主に図書の運搬作業に使用しており,作業効率の向上が図られている。

 図書館のバックヤードでの作業は大量の図書の上げ下ろしなど,力仕事の連続である。職員の身体的負担軽減のため,職場環境の改善のために,これからも新たな技術の導入を模索していきたいと考えている。

つくば市立中央図書館・柴原徹

写真 HAL®を装着しての作業の様子

Ref:
https://www.city.tsukuba.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/005/189/No81.pdf
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000028199.html
https://www.city.tsukuba.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/004/321/No267.pdf