E2133 – 米国OPEN Government Data Actの成立

カレントアウェアネス-E

No.368 2019.05.16

 

 E2133

米国OPEN Government Data Actの成立

 

●はじめに

 米国では,2018年12月にオープンデータ法(Open, Public, Electronic and Necessary (OPEN) Government Data Act)が成立した。同法は,2019年1月にトランプ大統領が署名を行ったことから,法律としての効力が発生した。

●背景

 米国におけるオープンデータの取り組みは,オバマ政権をその契機とする。オバマ大統領は2009年の大統領就任直後に,透明性とオープンガバメントに関する覚書に署名した。この覚書では,透明性(transparent)・参加(participatory)・連携(collaborative)の3つがオープンガバメントの原則として掲げられた。オープンガバメントを具現化する取り組みの1つとして推進されたのがオープンデータである。

 オープンデータの代表的な取り組みとして,2009年5月のData.govの開設があげられる。同サイトでは,連邦政府を中心に,州政府なども含めた公共機関の保有するデータが提供されている。ここで提供されるデータセットの数はトランプ政権に移行してからも増加を続け,2019年4月現在で約24万セットに上る。

 オープンデータの取り組みが進展する中で,2013年5月には,オバマ政権下でオープンデータ政策に関する覚書が署名されるとともに,大統領令“Making Open and Machine Readable the New Default for Government Information”が発令された(E1437参照)。

 オープンデータに関わる覚書や大統領令が積み重なると,その法制化が模索されるところとなり,2017年11月には,“Foundations for Evidence-Based Policymaking Act”の一部としてオープンデータ法が連邦下院を通過した。その後,2018年12月に,同法案の修正案が連邦上院を通過し,それを連邦下院も承認するかたちで議会通過となって,オープンデータ法の成立となった。

 この間,民主党のオバマ大統領から共和党のトランプ大統領へと政権の移行があったが,オープンデータに関しては重要な政策として位置付けられ,この程それを根拠付ける法律が成立したということになる。

●オープンデータ法の概要

 オープンデータ法の構成は,まず法律の名称を定めた後,各種用語の定義を行う。この定義付けについては,合衆国法典第44編第3052条を修正するというかたちを取る。この合衆国法典第44編は政府刊行物及び公文書(Public Printing and Documents)に関して定めており,その条文の中にオープンデータに関わる用語の定義が追加されることになった。

 新たに追加される定義の中でも,特に注目されるのは,オープンガバメントデータ資産(open Government data asset)に関するものである。これが事実上,オープンデータに関する定義となっている。

 その定義では,公的なデータセットのうち,機械判読可能(machine-readable)・オープンな形式で利用可能(available (or could be made available) in an open format)・利用や再利用に制限が課されない(not encumbered by restrictions)・標準化団体によって定められたオープンスタンダードに基づく(based on an underlying open standard that is maintained by a standards organization)の4つの要件を満たすものとしている。

 続いて,オープンバイデフォルトのためのガイドライン(Guidance to make data open by default)として,合衆国法典第44編第3054条(b)の修正がなされている。ここでは,文字通りデータをオープンとすることが前提とされた上で,リスクやセキュリティ,コストなどの配慮すべき事項が列挙されている。

 さらに,連邦政府機関におけるオープンバイデフォルトのための責任が明示されている。こちらも合衆国法典第44編第3506条の修正というかたちを取るが,この中では,戦略的情報資源管理計画(strategic information resources management plan)の策定と維持が連邦政府機関に求められ,その計画に盛り込むべき事項の詳細が明示されていることは注目に値する。

 その他,「データ一覧と連邦データカタログ」(Data inventory and Federal data catalogue)および「最高データ責任者」(Chief Data Officers:CDO)の条も設けられている。連邦政府機関に対して,保有するデータ資産の全容を把握するために,データ一覧を整備することを求めた。さらに,唯一のオンライン上の公開インターフェースとしての連邦データカタログの整備についても明確化された。これについては,既にData.govが開設されており,このサイトに関して法律上の裏付けを与えるものと解される。

 CDOについては,その任用を求めている。その役割の第一には,「データ管理のライフサイクルに責任を持つ」(be responsible for lifecycle data management)と明記された。

●情報資源管理政策の延長としてのオープンデータ法

 米国連邦政府におけるオープンデータ推進の背景には,情報資源管理政策の蓄積があった。政府が保有する情報資源を管理し,その活用がこれまでも模索されてきたのである。今般のオープンデータ法において,戦略的情報資源管理計画の策定やCDOの任用に言及されたことからは,これまでの情報資源管理政策とオープンデータ政策の接合が試みられていることが見て取れると言えるだろう。

東京工業大学環境・社会理工学院・本田正美

Ref:
https://www.congress.gov/bill/115th-congress/house-bill/4174/text#toc-H8E449FBAEFA34E45A6F1F20EFB13ED95
https://obamawhitehouse.archives.gov/the-press-office/transparency-and-open-government
https://www.data.gov/
https://obamawhitehouse.archives.gov/sites/default/files/omb/memoranda/2013/m-13-13.pdf
https://obamawhitehouse.archives.gov/the-press-office/2013/05/09/executive-order-making-open-and-machine-readable-new-default-government-/
https://docs.house.gov/meetings/GO/GO00/20171102/106588/BILLS-115HR4174ih-FEBP.pdf
http://id.nii.ac.jp/1001/00147598/
E1437