カレントアウェアネス-E
No.38 2004.06.16
E208
学術出版システムに研究者は何を望むか?(英国)
ロンドン市立大学が組織する調査グループCiberは3月18日,学術出版システムについての研究者の意識調査レポート『デジタル環境における学術コミュニケーション:著者は何を望むか?(Scholarly Communication in the digital environment: what do authors want?)』を発表した。それによれば,過去1年半以内に学術雑誌に投稿した研究者約4,000人(97か国)からの回答を分析した結果,投稿する雑誌を選ぶ際に著者たちが重視するポイントは,同じ分野の研究者が読んでいること,査読によって質が保証されていること,インパクトファクターが高いことなどであると裏付けられ,学術出版システムに求められるものは数世紀来変わっていないだろうと結論づけられている。また,新しい学術出版システムであるオープンアクセス雑誌(OA雑誌,E196参照)については,認知度は著しく低いがフリーアクセスというコンセプトについては肯定的で,特に若い研究者ほどその展開を支持する傾向があるという。
一方,OA雑誌については,情報システム合同委員会(JISC)とOSI(E111参照)によるアンケート調査の結果報告書も3月に公表されている。OA雑誌に投稿したことのある研究者100人と投稿したことのない100人に対して意識調査を行った結果,両グループとも査読システムによって質を保証する現行の学術出版システムに価値を見出していることが確認された。また,投稿先としてOA雑誌を選んだ研究者は,その90%以上がフリーアクセスの原則が重要だからと答えているほか,現行のシステムよりもスピードが速く,より多くの人に影響を与えることができると考えている。逆に,OA雑誌を選ばない研究者は,現行のシステムよりも読者が少なく影響力も小さいと考えているが,自分の分野のOA雑誌をよく知らないということも選ばない大きな理由だとしている。
Ref:
http://ciber.soi.city.ac.uk/ciber-pa-report.pdf
http://www.jisc.ac.uk/uploaded_documents/JISCOAreport1.pdf
E196
E111