E1999 – 第14回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>

カレントアウェアネス-E

No.342 2018.02.22

 

 E1999

第14回レファレンス協同データベース事業フォーラム<報告>

 

 2017年12月14日,第14回レファレンス協同データベース(レファ協)事業フォーラムが国立国会図書館(NDL)国際子ども図書館で開催された。本フォーラムは,レファ協に関心を持つ人々を対象に,専門家の講演,参加館の実践報告等を通じて事業への認識を深め,あわせて関係者相互の情報交換,交流の場とすることを目的として2004年度から毎年度開催されている。

 今回は初めて中高生向けのサービスに特化し,「中高生向けレファレンスサービスとレファ協」をテーマとした。学校教育における図書館の役割がますます大きくなり,学校図書館と公共図書館の連携協力も盛んになってきている中で,中高生向けのレファレンスサービスにレファ協をどのように活用していけるか,という観点から講演・報告や意見交換が行われた。

 はじめに,公益社団法人全国学校図書館協議会顧問の森田盛行氏による「学校図書館の今とこれから」と題した基調講演が行われ,国・地方の施策を含めた学校図書館の現状と今後の方向性について,トピックや論点が整理された。

 続いて国際子ども図書館児童サービス課の早川萌から,同館の概要や,同館が実施する中高生向けの「調べもの体験プログラム」等のサービスについて紹介がなされた。

 その後,公共図書館及び学校図書館で中高生向けサービスに関わる5名から,中高生向けサービスにおける公共図書館と学校図書館の連携やレファ協活用の可能性について,事例報告がなされた。福島県立図書館の鈴木史穂氏からは,学校図書館への協力レファレンスや児童生徒向けブックリスト(図書の案内)の作成といった同館の活動が紹介され,学校図書館の要望に応えたブックリストをレファ協に登録すると有用ではないかとの提案がなされた。茨城県の牛久市立岡田小学校学校司書の横須賀恵子氏及び牛久市立下根中学校学校司書の鍋田奈穂氏からは,同市の学校図書館ネットワークについて報告がなされた他,学校司書会議での検討を契機としたレファ協への参加の経緯や,レファ協への登録状況,登録基準の整備や未解決事例への対応といった今後の課題についても語られた。千葉県の市川市中央図書館の小川健太郎氏からは,同館の行う学校図書館支援サービスについて,その体制や物流ネットワークの実際等の詳細な報告及び展望が述べられた。大阪府の豊中市立高川図書館長の西口光夫氏からは,学校図書館と公共図書館が連携して児童生徒の読書活動を推進する「とよなかブックプラネット事業」や,調べ学習のイベント「めざせ!図書館の達人」(E1952参照)が紹介された。

 事例報告後,レファ協事務局による2017年度事業報告を挟み,パネルディスカッションが行われた。前半で事例報告を行った4機関の登壇者がパネリストとなり,西口氏がコーディネーターを務めた。

 パネルディスカッションでは,中高生向けのレファレンスサービスについて,各パネリストが経験を踏まえてその特色等を述べた。鈴木氏からは,高校の図書館に異動した際に「面白い本ない?」という質問が生徒から多くあり,県内の高校の学校司書が作成したブックリストが役立ったことが述べられた。横須賀氏からは,児童生徒が求める資料を単に手渡すのではなく,よく会話をして相手が本当に知りたいことを引き出すプロセスが必要だ,との意見が述べられた。西口氏からは,中学生の修学旅行についての調べ学習に関連した自館のレファ協登録事例が,毎年レファレンス依頼を受けることで内容がさらに充実していった例があったことや,中学生からのレファレンス依頼に一度回答すると生徒が興味を感じてどんどん広がりが出てくる,という見解が述べられた。

 その他,学校図書館間や公共図書館と学校図書館の間での資料提供のあり方や工夫について,横須賀氏から,物流ネットワークを利用して市内の公共図書館・学校図書館から資料提供を受けている牛久市の学校図書館の例が述べられた。また,中高生の図書館利用促進策については小川氏から,市立図書館で,生徒が作成した本の紹介POPを掲示したり,書名を隠して司書がコメントをつけたヤングアダルト(YA)向けの本を提供したりする試みを行っていることが紹介された。

 中高生向けレファレンスサービスにおけるレファ協の利用法に関しては,鈴木氏が提案した,レファ協登録データのカテゴリーの一つである「調べ方マニュアル」へのブックリストの登録が西口氏からあらためて提示された。これに付随して,公共図書館から学校図書館へのブックリストの提供にまつわる課題についても意見が交わされた。

 質疑応答では,中高生が過ごす場としての図書館について,及び,人手の少ない学校図書館でレファ協への登録がしやすくなる仕組みやアイデアについて参加者から質問がなされた。前者については,中高生には好きな場所を探してもらうことを意図して,あえて中高生向けスペースは設けず書棚のみにしているという福島県立図書館の例や,会話可能なYAルームや自習室を設けている市川市中央図書館や豊中市立図書館の例が紹介された。また後者については,紙で記録を取って時間のある時に一気にレファ協へ登録を行っているという牛久市の例が紹介され,図書館システムとレファ協を連携させて登録の手間を省くという西口氏からの提案もなされた。

 最後に西口氏から次のように総括がなされた。2017年3月に公示された新学習指導要領では,学校図書館の活用や,生徒の主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の実現に向けた授業改善等が謳われている。このように学習指導要領と図書館の親和性がますます高くなっている現在にあって,学校司書と公共図書館司書が垣根を作ることなくネットワークを築き協同で,資料の提供等を通して教育の中身を充実させ,図書館を適切に活用できる児童生徒=「良き利用者」を共に育てていくことを目指す意義が述べられた。さらにそのためのひとつの手段としてレファ協をぜひ活用してほしい,との提言があった。

関西館図書館協力課・レファレンス協同データベース事業事務局

Ref:
https://crd.ndl.go.jp/jp/library/forum_14.html
http://www.kodomo.go.jp/use/tour/youth.html
https://www.library.fks.ed.jp/ippan/children/school.html
http://www.city.ushiku.lg.jp/page/page003709.html
http://www.ichikawa-school.ed.jp/network/gakkousa-bisu.htm
https://www.lib.toyonaka.osaka.jp/management/toyonaka_bookplanet.html
E1952