E1982 – 箕面市読書活動推進事業:箕面・世界子どもの本アカデミー賞

カレントアウェアネス-E

No.339 2017.12.21

 

 E1982

箕面市読書活動推進事業:箕面・世界子どもの本アカデミー賞

 

 2017年11月3日,大阪府の箕面市立メイプルホールにて,2017年度「箕面・世界子どもの本アカデミー賞」授賞式が開催された。「箕面・世界子どもの本アカデミー賞」は,2010年から箕面市の読書活動推進イベントとして始まり,今年で8回目を迎える。

●概要

 「箕面・世界子どもの本アカデミー賞」とは,絵本賞・作品賞・主演男優賞・主演女優賞・ヤングアダルト賞の5部門で,それぞれノミネート作品の中から優秀賞を決める,まさに「本のアカデミー賞」である。市内の市立図書館と市立・私立の学校図書館が連携し,ノミネート作品の選定に始まり授賞式,市内の小・中学校へノミネート作家や受賞作家が訪問するオーサービジットを開催する。このイベントの大きな特徴は,子どもたちに本当に支持される本が子どもたちの投票により選ばれるという点である。授賞式も司会やプレゼンターを子どもたちが担い,子どもたち自身が作り上げるイベントとなっている。

 選考の流れは,2月頃に市内の市立図書館司書,学校図書館司書(学校司書),司書教諭が一堂に会し,貸出状況等から各校で支持を集めていると予想した図書を持ち寄り選書会議を行い,そこで各部門のノミネート作品を決定する。ノミネートされた30冊の本の中から,7月頃,市内の全小・中学校で部門ごとに投票を行い,各部門の受賞作品が決定する。およそ1万人の子どもたちから選ばれた作品は,まさに子どもたちから本当に支持されている作品と言っていいだろう。その後,受賞作家を招いて授賞式が行われる。

●事業立ち上げの背景

 箕面市は「みどりと子どもを育むまち」として,育児・教育を支援する制度を充実させてきた。市内には7つの図書館を整備し,1998年度から市内の全市立小・中学校に専任の司書配置を行ってきた。これにより,学校図書館と市立図書館との連携のもと,情報共有や共同での本の紹介冊子の作成などに取り組んできたが,さらなる読書活動推進のため,2010年の「国民読書年」を契機に,本稿事業の開始に至った。これは,元々市内の一学校図書館の取り組みであったのを全市的に取り組むことにしたものである。

●2017年度授賞式の様子

 2017年度の受賞式には,絵本賞『だめよ,デイビッド!』の訳者小川仁央氏,作品賞『いのち運んだナゾの地下鉄』の作者野田道子氏,主演男優賞『男子☆弁当部:オレらの友情てんこもり弁当』の作者イノウエミホコ氏,主演女優賞『怪盗レッド1』の画家しゅー氏を招いた。出席できなかった作者からもメッセージが寄せられた。会場には大勢の子どもたちが集まっていたが,彼らは1時間ほどある式中でも受賞者の言葉にじっと耳を傾けていた。箕面の子どもたちに宛てた想いのこもったメッセージは,子どもたちにも大きく響いたようだ。そして,アカデミー賞といえばオスカー像であるが,「箕面・世界子どもの本アカデミー賞」では,子どもたち手製のオスカー像を授与している。彼らがその本から受けた印象や気持ちを具現化して作製した像には,受賞者も大変喜んでいる様子だった。この授賞式は子どもたち,そして受賞者にも心に残る一日であったように思う。

●今後の活動と展望

 このイベントの締めくくりとして,2018年2月頃にオーサービジットを行う予定である。子どもたちにとって,授賞式よりさらに近い距離で作家と関われるまたとない機会となる。2015年のオーサービジットで行われたワークショップでは,廣嶋玲子氏の著書『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』にでてくるふしぎ駄菓子を子どもたちが考えた。そして,その時生まれた駄菓子が,『ふしぎ駄菓子屋銭天堂7』の表紙に掲載されたのである。自分の考えたアイディアが本に載り,多くの人の目に触れることは,子どもたちにも深く印象に残る体験であったのではないか。読むだけではなく,こうしたワークショップをとおして本と関わることで,子どもたちに本をもっと身近に感じてもらいたい。

 この「箕面・世界子どもの本アカデミー賞」は,準備期間も含め年間を通したイベントになる。こうした長期にわたる事業には,学校図書館と市立図書館の密な連携が不可欠である。前述のとおり,全市立小・中学校図書館には専任の司書が必ず1人配置されており,これにより市立図書館と学校図書館間での情報交換が円滑になった。今後も相互連携を密にし,子どもの読書活動推進に励みたい。

箕面市立中央図書館・羽藤未希

Ref:
https://www.city.minoh.lg.jp/library/katsudou/academy/academy2017.html
https://www.city.minoh.lg.jp/brand/index.html
https://www.city.minoh.lg.jp/library/katsudou/academy/authorvisit2015.html