E1702 – 米国の10代の若者の健康情報入手方法

カレントアウェアネス-E

No.287 2015.08.27

 

 E1702

米国の10代の若者の健康情報入手方法

 

 2015年6月,米国ノースウェスタン大学から,米国の若者の健康情報入手方法に関する報告書が公開された。この報告書は,2014年10月から11月及び2015年3月に,英語及びスペイン語話者の13歳から18歳の若者1,156人を対象に,調査会社GfKにより行われた全国調査の結果をまとめたもので,年齢,性別,人種・民族,世帯所得の観点から分析が行われている。以下に主な結果を紹介する。

  • 全体の84%がインターネットから何らかの健康情報を得ている。また,多くの情報を得ているのは全体の25%である。若者がどの情報源から多くの健康情報を得ているのかについては,両親(55%),学校の保健の授業(32%),医師・看護師(29%)に次いでインターネットは4番目であり,図書やテレビ,ラジオ,新聞,雑誌を抜きメディアの中では最も多い。
  • 全体の21%が健康情報関連のモバイルアプリをダウンロードしたことがあり,12%がPCやビデオ,モバイルなどの健康に関するデジタルゲームを,また7%がFitbitやFuelBandなどのウェアラブル健康機器を使用したことがある。
  • インターネットで健康情報を探すと回答した者84%のうちの32%が,上記のインターネット上の健康情報,モバイルアプリ,デジタルゲーム,ウェアラブル健康機器により,健康のための運動の習慣を変えたり,日常の食事や栄養に気をつけたりするなど,行動を変化させている。
  • インターネットで健康情報を探す動機は,学校で必要(インターネットで健康情報を探索する者の53%,以下同様),自分自身の健康についてよりよくケアするため(45%),体調の悪い症状を把握するため(33%),家族や友人の健康を気遣うため(27%),病気やけがの治療法を知るため(24%)である。その他,13%が両親に相談しづらいためにインターネットで探すと回答した。
  • 若者の殆どが,健康情報をソーシャルメディアから得ることに関しては慎重である。ソーシャルメディアから多くの情報を得るのは10%,いくらかの情報を得るのは23%にすぎない。また,健康情報を得るのにFacebookを使ったことがあるのは9%,Twitterは4%である。健康に関する質問がありアドバイスを欲しいと思っていても,積極的に書き込むと回答したのは2%に過ぎず,全体の88%はソーシャルサイトに書き込まない,10%は書くこともあると回答した。
  • 全体の42%が健康や運動についてインターネットで調べており,36%が日常の食事や栄養について,19%がストレスや不安について,18%が性感染症について調べている。また,モバイルアプリをダウンロードしている者のうち,22%が運動や栄養についてのアプリを,13%が栄養やカロリーについてのアプリをダウンロードしている。
  • 世帯年収が2万5,000ドル以下の低所得者層の者は,家庭の中で深刻な健康問題に直面する可能性が高く,また,世帯年収7万5,000ドル以上の高所得者層の者に比べ,自分自身にとって重要と考える健康上のトピックが多い。家族が深刻な健康問題に遭遇したことがあると回答したのは,高所得者層の27%に比べ,低所得者層は52%にのぼる。さらに,学校に保健の科目があると回答したのは,高所得者層の60%に比べて低所得者層は44%に過ぎない。ノートPCやスマートフォン,タブレットの所有率も,低所得者層の者は,高所得者層の者に比べて低く,17~26ポイントの差がある。
  • インターネットでしばしば健康情報を探す者のうち,58%はGoogleで検索し,14%はYahoo!やBingといった複数の検索エンジンを用いて比較する。また,Googleで検索をする者の50%が「Google検索で,リストのトップにきたものが常に最も適切なものである」という見方をしている。また,ドメインについては,全体の37%が“.edu”ドメインはとても信頼できると回答したのに比べ,“.com”ドメインをとても信頼できると答えたのは14%に過ぎない。
  • インターネットで健康情報を探す若者の82%が,「とても」あるいは「いくらか」満足していると回答しているが,18%は「あまり」あるいは「全く」満足していないと回答している。「とても満足している」のは24%で,彼らが両親からの健康情報には57%,医師・看護師からは54%,学校の保健の授業からは38%,とても満足していると回答しているのに比べると,その割合は低い。また,18%がインターネット上の健康情報に満足していない理由について,矛盾した情報が多すぎると答えたのが42%,情報に信頼性が感じられないが40%,自身が置かれた状況にあっていないが35%であった。
  • 41%が,インターネットで喫煙・薬物などの健康に害のある情報を閲覧したことがある。41%のうちの4%がしばしば,14%が時々,23%が1回か2回見たことがあると回答した。また,43%がインターネットでポルノを閲覧したことがある。

 この調査結果は,10代の若者が健康増進の参考になる情報を入手するためにインターネットを利用しているに過ぎないことと,健康に悪影響を与える可能性のある情報も入手出来ることから,インターネット上で出会う豊富な情報を評価し扱うすべを知る重要性があることを示している。また,政府機関は,デジタルデバイドの是正に取り組み,若者へ適切な広報をする努力を続ける必要があるとしている。

関西館図書館協力課・高城雅恵

Ref:
http://cmhd.northwestern.edu/wp-content/uploads/2015/05/1886_1_SOC_ConfReport_TeensHealthTech_051115.pdf
http://www.emarketer.com/Article/Teens-Google-Away-Health-Info/1012627
http://www.pewinternet.org/2015/04/09/teens-social-media-technology-2015/
http://www.pewinternet.org/2015/08/06/teens-technology-and-friendships/
http://www.pewinternet.org/2013/01/15/health-online-2013/
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