E1559 – 図書館員のコンピテンシー・インデックス2014

カレントアウェアネス-E

No.258 2014.04.24

 

 E1559

図書館員のコンピテンシー・インデックス2014

 

 2014年3月,OCLCの運営するWebJunction(E1444参照)が,“Competency Index for the Library Field”の改訂版(以下,コンピテンシー・インデックス2014)を公表した。

 米国の図書館界においては,図書館分野で「高い業績」を実現するうえで求められる個人のコンピテンシーを明確にする動きが,以前より積み重ねられている。例えば,米国図書館協会(ALA)では,レファレンス・利用者サービス協会(RUSA)がレファレンスサービス等に従事する図書館員に求められるコンピテンシーを示すなど,部門別の取り組みが見られる。また,カリフォルニア図書館協会(California Library Association:CLA)や専門図書館協会(Special Library Association:SLA)など,州ごと,館種ごとにコンピテンシーを示す取り組みも見られる。国内では,国立大学図書館協会人材委員会が2007年に「大学図書館が求める人材像について:大学図書館職員のコンピテンシー」を公表している。なお,ここでは,コンピテンシーの定義について,「仕事上の役割や機能をうまくこなすために個人に必要とされる測定可能な知識,技術,能力,行動その他の特性のパターン」と紹介している。定義については,筑波大学附属図書館研究開発室年次報告(平成20~21年度)における永田らの報告「大学図書館職員のコンピテンシーについて」が詳しい。

 その中で,研修事業を担うWebJunctionでも,コンピテンシーを分野別に列挙して示すコンピテンシー・インデックスを2009年に公開していた。コンピテンシー・インデックス2014はその改訂版であり,この数年の経済・社会,図書館への期待の変化の中で,図書館自体が変化し,それに応じて図書館員のコンピテンシーも変化があったことを踏まえ,新たにまとめられたものである。

 コンピテンシー・インデックス2014は,大きくは5つのセクションで構成されている。1)基本的なコンピテンシー,2)コレクションに関するコンピテンシー,3)図書館運営に関するコンピテンシー,4)パブリックサービスに関するコンピテンシー,5)テクノロジーに関するコンピテンシー,である。このうち,例えば1)基本的なコンピテンシーでは,さらに「コア技術に関するコンピテンシー」と「個人的・対人的コンピテンシー」の2つのサブセクションに分けられ,そのサブセクションのもとに,コンピテンシーが,それに対応する複数の具体的なスキルや知識とともに列挙されている形となっている。1)基本的なコンピテンシーでは,合計30件ほどのコンピテンシーが,150件ほどのスキルや知識についての記述とともに示されている。以下のセクションも同様の構成になっており,2)では,コレクションに関して,目録や蔵書構築,電子情報,保存などについてのコンピテンシーが示されている。また,3)では,図書館運営に関して,コミュニティとの関係,施設や財政,スタッフの研修等についてのコンピテンシーがそれぞれまとめられている。全体で,77ページのドキュメントとなっている。

 今回の改訂にあたっては,2009年版で示された内容について,他の図書館関係機関でしめされたコンピテンシーのレビューや,主題ごとの専門家からの意見を受けて行われた。その改訂の内容は,2009年当時からの環境の変化に対する意識が反映されたものである。導入部分の説明によれば,全体を通じて強調された要素は,「21世紀のスキル」,「アカウンタビリティ」,「コミュニティへの関与」の3つであったという。

 まず「21世紀のスキル」として,コミュニケーション,協同,批判的思考,創造性が強調されてきたことを反映して,いたるところが改訂されたという。特に,1)基本的なコンピテンシーとしてまとめられたコア技術及び個人的・対人的コンピテンシーに関する内容は,図書館で働くすべての人にとって基礎的な技術であることを強調する意図から,冒頭にまとめて示された。なおこれらは,2009年版においてそれぞれ独立したセクションとして示されていたものである。「アカウンタビリティ」については,図書館はその効果を測定し証明することが益々求められていることを受けて,各所で強調されたそうである。また「コミュニティへの関与」という要素については,図書館はもともとコミュニティの構築に寄与してきたものであるが,昨今,コミュニティと,戦略的なパートナーシップを構築し,また関係性を拡大していく必要性に直面していることから,多くのセクションで強調されたものと説明されている。コミュニティの現在のニーズを意識しておくこと,そして変化し続けるニーズに応じて継続的に優先順位の見直しを行うことなどが,改訂の際に盛り込まれたそうである。

 図書館を巡る環境は,日本においても変化しており,それに応じて図書館員等のコンピテンシーの内容についても継続的に見直していく必要があるだろう。その際,今回WebJunctionのコンピテンシー・インデックスの改訂において意識された「コミュニティへの関与」等の要素は,一つの参考となるものと思われる。

関西館図書館協力課・依田紀久

Ref:
http://webjunction.org/documents/webjunction/Competency_Index_for_the_Library_Field.html
http://www.webjunction.org/documents/webjunction/Competency_Index_for_the_Library_Field.html
http://www.webjunction.org/content/dam/WebJunction/Documents/webJunction/2014-03/Competency-Index-2014.pdf
http://webjunction.org/content/dam/WebJunction/Documents/webJunction/Competency%20Index%20for%20Library%20Field.pdf
http://www.library.osaka-u.ac.jp/others/janul/jinzai/enq09r2.pdf
http://hdl.handle.net/2241/104416
CA1744
E1444