E1551 – 公共図書館との関係性に基づく米国民の類型

カレントアウェアネス-E

No.257 2014.04.10

 

 E1551

公共図書館との関係性に基づく米国民の類型

 

 2014年3月13日,Pew Internet & American Life Projectが,米国民と公共図書館との関係性を分析した報告書“From Distant Admirers to Library Lovers- and beyond: A typology of public library engagement in America”を公表した。2013年7月18日から9月30日にかけて16歳以上の米国民6,624人を対象に行われた電話調査の結果を元にしており,2013年12月には,この調査結果を性別や年齢,収入等に基づく従来的な手法で分析した報告書が発表されている(E1519参照)。今回の報告書は,米国民と公共図書館の関係性についての新たな「類型」を見出すことを目的としている。

 この報告書においては,図書館利用者のみでなく,図書館を利用していない人々も調査対象としており,人生における公共図書館の重要性,図書館の使い方,コミュニティにおける図書館の役割をどのように見ているか等の要素に基づきクラスター分析している。分析により,公共図書館との関係性のパターンに基づき9つのグループに類型化している。各グループがどういった人々で構成されているかの説明には,図書館の利用傾向だけではなく,より広く,情報やテクノロジーの利用傾向も含まれている。分析の結果示された類型は以下のとおりである。

図書館と深い関わりをもつグループ(High engagement groups)

・Library Lovers
 回答者の10%を占める。図書館に対して非常に肯定的で,よく利用するグループである。他グループと比較して年齢が若く,62%は女性である。読書家であり,図書を購入するよりも図書館で借りることを好むが,書店を訪れる割合が最も高いグループでもある。

・Information Omnivores
 回答者の20%を占める。他のグループよりも情報を求め,インターネットやSNS等,テクノロジーを利用する傾向が高いグループである。公共図書館をよく利用し,図書館はコミュニティにおいて重要な役割を持っていると考えている。しかしLibrary Loversほどは図書館を積極的に利用していない。世帯収入や就業率などの社会経済的項目で最も高い数値を示している。

図書館とある程度の関わりをもつグループ(Medium engagement group)

・Solid Center
 回答者の30%を占めるもっとも大きなグループである。図書館に対して大半は肯定的だが,32%は過去5年で図書館の利用頻度が減少していると回答している。わずかに男性の割合が高く,年齢の中央値は47歳である。自分たちのコミュニティへの評価が高い。58%が図書館利用証を持ち,43%が過去1年以内に図書館を訪れている。

・Print Traditionalists
 回答者の9%を占める。過去1年の間の読書冊数の中央値は5冊で,従来からある図書館サービスを高く評価する傾向があるグループである。地方在住者,白人,南部出身者の割合が高い。他グループよりも長く同じ場所に住んでいる傾向がある。コミュニティにおける図書館の役割を肯定的に見る点において突出している。

図書館との関わりが低いグループ(Low engagement groups)

・Not For Me
 回答者の4%を占める。公共図書館を利用していた時期もあったが,最近はほとんど利用していないグループである。男性の割合が高く,小さな町,あるいは地方に住んでいる傾向がある。過去1年の間のグループの読書冊数の中央値は3冊である。40%が図書館利用証を持ち,31%が過去1年以内に図書館を訪れている。

・Young and Restless
 回答者の7%を占める。年齢が若い人々の割合が最も高く,ほとんどがコミュニティに新しく加わったメンバーである。年齢の中央値は33歳で,53%が男性である。テクノロジー,特にモバイル機器との関わりが大きく,82%はスマートフォンあるいはタブレット端末のようなモバイル機器でインターネットを利用している。36%が過去5年で図書館利用頻度が減少している。

・Rooted and Roadblocked
 回答者の7%を占め,コミュニティに長く住んでいるが,潜在的なハードルに直面している可能性があるグループである。35%は退職者で,27%は障害をもっており,34%は過去1年の間に回答者あるいは最愛の人が重病を患っている。最も年齢が高いグループで,コミュニティでの居住期間は長いが,コミュニティ活動への関わりはあまりない。コミュニティでの図書館の役割について比較的肯定的に見ている。

図書館と関わりがないグループ(Non-engagement groups)

・Distant Admirers
 回答者の10%を占める。一度も図書館を利用したことがない人々の多くがこのグループに属している。回答者は図書館を利用していないが,家族が図書館を利用している場合が多い。ヒスパニック系の割合が最も高く,男性の割合が多少高い。他のグループと比較して,隣人を知らない傾向がある。利用はしないにもかかわらず,図書館に対して肯定的な点が注目される。

・Off the grid
 回答者の4%を占める。図書館だけでなく,コミュニティやテクノロジー,情報ソースから疎外されているグループである。男性の割合が多く,年齢の中央値が52歳と高い。コミュニティに長く住んでいるが,38%は近隣住民の名前を知らないと回答している。一度も図書館を利用したことがなく,肯定的でもない。

 図書館との関係性に着目して導き出された今回の類型は,図書館と住民との関係構築のあり方を考えるにあたり,一つの視点を与えるものと思われる。

関西館図書館協力課・安原通代

Ref:
http://www.pewinternet.org/files/2014/03/PIP-Library-Typology-Report.pdf
http://www.pewinternet.org/2014/03/13/pew-research-more-than-two-thirds-of-americans-are-actively-engaged-with-public-libraries/
E1519