E1519 – 米国民はどれほど公共図書館に価値を置いているのか

カレントアウェアネス-E

No.251 2013.12.26

 

 E1519

米国民はどれほど公共図書館に価値を置いているのか

 

 米国のPew Research Centerが,2013年12月11日,米国民がどれほど公共図書館に価値を置いているかについて,数字で裏付ける報告“How Americans Value Public Libraries in Their Communities”を公表した。調査は2013年7月18日から9月30日にかけて,16歳以上の米国民6,224人を対象にして電話インタビューにより実施された。サマリーによれば,米国においては,資料へのアクセスを提供するという点においても,また,リテラシーを育み,生活の質を向上させるという点においても,公共図書館の役割が高く評価されていることが明らかになった。

 まず,公共図書館の重要性や影響については米国民にはどのように認識されているのだろうか。調査では,地域の公共図書館が閉鎖した場合に,自分の属するコミュニティにおいてどの程度影響があるかを問う質問に対して,米国民の実に90%が影響があると回答し,そのうち63%は重大な影響があると回答している。図書館の閉鎖が自分やその家族に与える影響を重大であると回答する割合は,女性,30歳から64歳の成人,子どもを持つ親の層に多く,また,成人で高校を卒業していない者,年収3万ドル以下の家庭の成人,障害を持つ者といった層においても高い。社会的に弱い立場にあると考えられる層にとって,図書館の重要性が強く認識されているということが見て取れる。

 では,公共図書館を重視する,その理由は何だろうか。調査では,公共図書館が果たすと考えられる役割を挙げ,その役割を図書館が果たしているか否かを尋ねている。公共図書館における無料の資料提供が,すべての人に成功する機会を与えるという重要な役割を果たしているという考えに,米国民の95%が同意しており,そのうち72%は強く同意すると回答した。また,読書推進やリテラシーの涵養(96%),生活の質の向上(93%)においても,公共図書館の果たす役割が強く認識されていることがうかがえる。

 公共図書館ではさまざまなサービスが提供されているが,それぞれについて,どの程度評価されているのだろうか。調査では,公共図書館の提供するサービスを挙げ,自分やその家族にとってどの程度重要であるかについて尋ねている。重要であると回答された割合が高かったサービスは,資料(本やメディア)(81%),図書館員による支援(76%),静かで安全な環境(75%),調査のためのリソース(72%)である。逆に,重要でないと回答される割合が高かったサービスは,職探しや求人への応募支援(46%),公的サービスの申請支援(44%)などであった。当然,回答者の属性によってもどのサービスを重視するかは異なっており,現在求職中の回答者の47%,また読むことに障害がある層の42%は職探しや求人への応募支援サービスを大変重要であると回答している。

 公共図書館へのアクセスや,公共図書館が提供するサービスは,どの程度認識されているのだろうか。調査によれば,現在自分が住んでいる場所から最も近い公共図書館がどこにあるかを知っている米国民は91%で,個人として,公共図書館を利用しようと思えば容易に利用できるという回答は93%にのぼる。公共図書館へのアクセスは充分に認知されていることがうかがえる。ところが,公共図書館が提供するサービスについて,どの程度知っているかを問う質問については,すべてあるいは殆ど知っていると回答した人は23%にとどまり,以下,回答とその割合は,いくつかを知っている(47%),あまり知らない(20%),全然知らない(10%)となっている。サービス内容については,充分に知られているとは言い難いという現状が明らかになった。

 公共図書館の新しいテクノロジーへの取り組みについてはどのように認識されているのだろうか。公共図書館が新しいテクノロジーについて行けていないという考えに同意する米国民は34%にとどまる一方で,55%はこの考えに反対している。高校を卒業していない成人は,その他のより高学歴の層よりもこの考えに同意する割合が高く,また,過去1年に図書館のウェブサイトを利用したことのある層は,反対する割合が高かった。図書館の利用経験のある層ほど好意的な認識を示していることがうかがえる。

 実際の公共図書館の利用状況については,米国民の81%がこれまでに公共図書館へ来館あるいは移動図書館を利用したことがあると回答し,そのうち48%は過去1年間以内に利用している。また,実際に公共図書館を利用したことのある米国民の91%が公共図書館の利用において嫌な思いをしたことがないと回答しており,米国の公共図書館が,実際の利用に裏付けられた,高い評価を得ているということが浮き彫りになる調査結果であった。

関西館図書館協力課・篠田麻美

Ref:
http://libraries.pewinternet.org/2013/12/11/libraries-in-communities/
http://libraries.pewinternet.org/files/legacy-pdf/PIP_Libraries%20in%20communities_121113.pdf