カレントアウェアネス-E
No.251 2013.12.26
E1518
大阪市立図書館「書評漫才(SBR)グランプリin Osaka」
「読書離れ」の中高生に,どうすれば読書に関心を持ってもらえるだろう?ヤングコーナーの担当になったときからの悩みだった。
ちょうど「ビブリオバトル」が流行しつつあった。私も何回か参加したが,本を紹介して競い合う,という仕組みが新鮮だった。同年代が面白く紹介した本なら,手に取りたくなるのでは?ただ,発表者の動きがあまりないので絵的な面白さがなく,話が面白くない場合に5分間は長く感じられるのでは,という感想を持った。やってみたいけど,もうひとひねりしたい,と思った。
動きがあって,面白く本を紹介するにはどうしたらいいのか?ここで,「お笑いコンテスト」を望む声が多いということを思い出した。各種催しのアンケートで「次はどんな催しに参加してみたいですか?」と問うと多く寄せられる。「お笑いコンテスト」と「ビブリオバトル」…好きな本を紹介する相手は不特定多数ではなく,友達のように小人数なのがふつうでは?ビブリオバトルは一人でやるけど,話し手と聞き手の二人にしてもいいのでは?身振り手振りが入ってもおもしろいよね。…「これって漫才!?」。大阪らしいやん!
こうして,「書評漫才~SBR」は誕生した。SBRとは,“stand-up comedy”にちなんだ“Stand-up Book Review”の略称である。
参加資格は「10代のコンビ」。2012年の第1回は,全7組の全員が大阪府下の高校生で,男子コンビ5組,女子コンビ2組だった。今年の「第2回 書評漫才(SBR)グランプリin Osaka」は11月24日(日)に開催。出場者は13組。今回の内訳は,大阪・京都・兵庫の小学生各1組,大阪府下の中学生4組,大阪府下の高校生6組。うち,男子コンビ9組,女子2組,男女コンビ2組。よりバラエティに富むものとなった。出場者アンケートでは,出演のきっかけとして,「お笑いが好き」「本が好き」が多数を占めたが,日常的に公共図書館を利用していると答えた人は少なく,とりわけ当館のヤングコーナーを知っている人は数名だった。部活動をしていると答えた人も約6割で,部活で忙しくふだん図書館に足を運ばない層にも,「お笑い」という図書館らしくない取り組みによって,働きかけることができたのではないかと思う。
審査員には,演芸資料館学芸員,人気作家,有名洋菓子店の広報担当者,公務員漫才コンビ,市立高校校長と,地縁や人脈を駆使して頼み込んだ多彩な面々により,(1)本を読みたくさせたか,(2)紹介の面白さ,(3)その他(インパクトなど)の3つの基準により行なわれた。激戦を制したのは,太宰治『走れメロス』を紹介した高校生ユニット「サクリファイス」。
以下,回収したアンケートから抜粋。
出場者:「本当に出られてよかった!!これからも続けてほしい」「もっとたくさん,本に触れる機会と漫才をできる場をつくってほしい」
来場者:「大阪ならではのイベントでした」(30代女性),「それぞれがすごくよかった。また来たい」(10代女性),「いまの高校生の自由自在のネタ選び,ノビノビと元気で取り組んでいる姿を見聞し,日本の将来は大丈夫と思った」(60代男性),「みなさんのパワー,純粋さ,すばらしい。笑いながら涙でました」(50代女性)
担当者としては,応募数が伸び悩んでヒヤヒヤしたが,締切間近に応募が相次ぎ,当日は,熱意あふれる出場者により,充実した催しとなった。なにより,本の紹介と笑いの要素とのバランスが取れていたことに正直驚いた。紹介本も,マンガやライトノベルなど,中高生が読むような本ばかりと思いきや,ふたを開けると古典名作から絵本,実用書,ビジネス書まで幅広く,それらを読み込み,面白おかしく紹介する姿と笑いに満ちた会場の様子を見て,本の持つ可能性を感じ,「企画の趣旨は間違っていなかった。」と思った。今後一層広報を工夫し,より多くの方々にこの書評漫才を知ってもらいたい。また,中高生など10代の若い人たちに読書の楽しさを伝えられるよう,更なる取り組みにチャレンジしたいと考えている。
※大阪市立図書館ホームページで,出場者・審査員一覧や当日の様子,また,関連して実施した展示「殿堂入りした漫才師たち-エンタツ・アチャコからいとこいまで-大阪府立上方演芸資料館収蔵品展」「芸人本100冊,だいたい。」について紹介している。なお,図書館システム更新により2014年1月よりホームページのURLを変更する予定である。「書評漫才 大阪市」で検索していただきたい。
大阪市立中央図書館・和田充洋