E1545 – 国立大学等の特色ある施設2013における図書館関連施設

カレントアウェアネス-E

No.256 2014.03.27

 

 E1545

国立大学等の特色ある施設2013における図書館関連施設

 

 2014年3月5日,文部科学省は近年行われた国立大学の施設整備の中から特色のある37の事例をあつめ,「国立大学等の特色ある施設2013 キャンパスの創造的再生編」を刊行した。「キャンパスの創造的再生」につながる知恵やアイデアに焦点を当てて編集され,国立大学法人等の関係者が掲載事例を参考にし,高等教育施設の水準を更に向上させることを目的とした資料となっている。各事例は「教育研究活動を支える」,「全人格的な人格形成を促す」,「社会に開く」,「個性・特色を表す」,「交流を育む」,「時代を紡ぐ」の6つに分類され,写真や図面等を多数用いて解説されている。これらのうち,「教育研究活動を支える」事例に含まれている,図書館と図書館を中心とした施設を3件紹介する。

●千葉大学:総合学生支援センターおよびその周辺整備
 千葉大学では,点在していた学生生活を支援する施設を総合学生支援ゾーン,コミュニケーション・ゾーン,アクティブ・ラーニング・ゾーンとして集結させた。学生支援・就職支援スペースを拡充し,総合学生支援センターには,学生の企画による課外活動や,市民参加のイベント等を開催できる「コミュニケーション型」アクティブ・ラーニング・ゾーン等が整備されている。2011年4月に附属図書館に設置された「自修支援型」アクティブ・ラーニング・ゾーンと一体となった学修・交流の拠点を形成している。

●新潟大学:中央図書館
 新潟大学中央図書館では,「ラーニング・コモンズ機能」「アーカイブ機能」「インフォメーションラウンジ機能」を実現させる施設整備を行った。ラーニング・コモンズ機能としては,学生自身がコーディネートできる学習空間,ネットワークを活用した情報収集・加工・発信のための設備,学生アドバイザーなどの人的支援を提供し,学生が共同的,自主的に学習できる環境を整備している。アーカイブ機能としては,約50万冊の資料を高密度に収容,ICタグで管理する自動化書架を設置し,新潟大学が収集した学術資料を整理・保管・提供している。また,大学で生産される学術情報や報告資料の電子化,発信を行っている。インフォメーションラウンジ機能としては,ライブラリーホールやライブラリーギャラリーなど,学外者も利用可能な場を設けている。ライブラリーホールでは,国際会議等のほか,一般向けの講演会や公開講座も開催されている。

●大阪大学:ラーニング・コモンズ,グローバル・コモンズ,ステューデント・コモンズ
 大阪大学では,2009年春に豊中キャンパス総合図書館と吹田キャンパスの理工学図書館,2012年春には箕面キャンパスの外国学図書館に総合的学習スペースとしてラーニング・コモンズを開設した。2012年秋には,豊中キャンパスの附属図書館に,ラーニング・コモンズの機能を強化,進化させていくものとして,多言語・異文化理解のための共同学習スペースであるグローバル・コモンズも開設した。ラーニング・コモンズよりも可動式のテーブルを多く配置し,タッチディスプレイで世界各国の新聞が閲覧できるワールドニュース閲覧ゾーンを設置し,また,留学生のティーチング・アシスタントによる多言語学習イベント,学生による英語学習イベント,英語によるディスカッションのための場等も提供している。また,2009年秋には,もう一つのコモンズとして,豊中キャンパスのラーニング・コモンズから遠くない場所にステューデント・コモンズを開設した。飲食可能なオープンスペース,全域で利用可能な無線LAN,4つのセミナー室等を設け,図書館に設置されたコモンズよりもオープンな利用が可能な施設として認知されている。

 この事例集は,施設全体の紹介だけではなく,「整備の目的・方向性」や「計画のポイント」,「整備戦略」等の項目にわけて紹介されるように構成されている。国立大学法人等の関係者により,新たな施設整備計画のヒントとなるデータとして利用されることが期待される。

関西館図書館協力課・安原通代

Ref:
http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/1344756.htm
http://www.mext.go.jp/a_menu/kaihatu/jouhou/1341375.htm
http://www.lib.niigata-u.ac.jp/about_us/outline.html
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/oumode/education_env/communication_space