E1159 – 米国音楽図書館協会第80回年次大会<報告>

カレントアウェアネス-E

No.190 2011.03.17

 

 E1159

米国音楽図書館協会第80回年次大会<報告>

 

 2011年2月9日から12日まで,米国音楽図書館協会(Music Library Association:MLA)の年次大会がフィラデルフィアで開催された。第80回を迎えた今大会は“Born Digital:A New Frontier for Music Libraries”をテーマとし,約480名の音楽図書館関係者が参加した。ほとんどが米国内からの参加であったが,日本から筆者が参加したほか,中国や南アフリカからの参加もあった。

 MLA年次大会に先立って8日と9日には同じ会場でOCLC音楽ユーザーグループ(Music OCLC Users Group:MOUG)の年次大会も開催され,目録作成の実務担当者を中心に60名程が参加した。MOUGでは,米国議会図書館のティレット(Barbara Tillett)氏がバーチャル国際典拠ファイル(VIAF;CA1521参照)に関する講演を行ったほか,電子学位論文(Electronic Theses and Dissertation)の目録作業やレファレンスの事例紹介,OCLCの提供する次世代OPACであるWorldCat Local(CA1721参照)を使った図書館サービスの事例報告等があり,意見交換も活発に行われた。

 9日には,MLA年次大会のプレカンファレンスとして,新しい目録規則RDA(Resource Description and Access)のToolkitを使ったワークショップや関連機関の見学会が行われた。筆者は見学会に参加したが,フィラデルフィア交響楽団の図書室で指揮者の書き込みの入った楽譜等の非公開資料を見ることができ,貴重な体験となった。引き続き,夜にはオープニングレセプションが開かれた。

 10日~12日には,全体会議や30近くの公開セッションをはじめとして,各委員会,地域支部の実務者会議,ポスターセッション,関連企業・機関による展示等が行われた。

 全体会議では,フィラデルフィア交響楽団とカーティス音楽学校におけるインターネットを通じた音楽配信事業の紹介や,音楽配信にともなう著作権問題に関するパネルディスカッションが行われた。日本でもCDの売上が減少し音楽配信が拡大しているが,米国では更にその傾向が強く,音楽図書館界においても,資料の利用提供のあり方やレファレンス等の図書館活動全体が大きな転換期を迎えていることを改めて実感した。

 公開セッションでは,録音資料やデジタル音源の館内ストリーミング,デジタルコンテンツのホームページ上での公開等に関する事例報告が多く,資料のデジタル化の進展にともなって今後デジタルコンテンツをいかに活用していくかについて関心が寄せられていることが分かった。音楽資料・情報の活用に関しては,ブログやTwitter等を利用した情報発信,図書館の利用案内やデータベースのオンライン・チュートリアルといったウェブコンテンツの作成・提供が,今後ますます重要になってくるとの意見も出され,音楽図書館員にとって,主題に関する知識のみならずデジタル時代に必要な様々な知識や技術の向上も求められていることが指摘された。その他,RDAやメタデータに関する議論が活発に行われ,RDAに基づいた音楽資料の目録作成ガイドラインの検討状況報告や,録音資料のメタデータ基準に関する調査報告等もあり,今後の参考となる有益な情報を得ることができた。

 最終日(12日)の総会では,全体の活動報告のほか,これまで別組織であった国際音楽資料情報協会(International Association of Music Libraries, Archives and Documentation Centres:IAML)米国支部をMLAに統合する決議が行われた。これにより,国際的にもMLAが米国の音楽図書館コミュニティを代表する組織となった。総会の後にはクロージングパーティが開かれ,MLAメンバー有志によるMLA Big Bandの演奏に耳を傾けながら,参加者同士の親交を深めた。

 なお,次回のMLA年次大会は,2012年2月にテキサス州ダラスで開催される予定である。

(資料提供部電子資料課・川野由貴)

Ref:
http://mla2011.musiclibraryassoc.org/
http://musiclibraryassoc.org/
http://www.musicoclcusers.org/
CA1521
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