E1141 – デジタル時代の図書館に必要なもの,それは電源(米国)

カレントアウェアネス-E

No.187 2011.02.03

 

 E1141

デジタル時代の図書館に必要なもの,それは電源(米国)

 

 Library Journal誌の2010年12月30日号に,「デジタル世代は電源を求めて図書館を駆けめぐる」(“A Digital Generation Scours the Library for a Plug”)という記事が掲載された。持ち運び可能なデジタル機器の普及に伴い利用者が図書館内で電源を必要とすることが多くなったが,利用者スペースの電源コンセントが不足しているという問題をとりあげたものである。

 記事では,電源の問題は,電子書籍やインターネットへの接続等と異なりあまり話題に上らないが重要な問題であると指摘する図書館関係者の声を紹介している。そして,問題の要点は,利用者が最も使いやすい形で電源にアクセスできること,図書館は技術の変化にスペースを適合させること,の2点を実現することであると指摘している。

 事例として,まず,大学図書館での状況が紹介されている。ニューハンプシャー大学の図書館員は,「学生は度々テーブルやソファを電源のある壁の方に動かしたり,自分で延長コードを持ちこんだりしており,安全面で問題となる」とコメントしている。同大学では図書館スペースを利用者中心のものとするための調査を行ったところ,電源の増加を求める要望が多くあったため,電源コンセントが増設されたとのことである。また,ミシガン大学ディアボーン校の図書館員は,学生の最大の苦情が資料の利用についてではなく電源についてであることを嘆きつつ,数十年前に建てられた建物ではこのようなことは想定されていないとコメントしている。記事では,大学図書館で電源コンセントの不足が目立つようになった要因として,学生のグループ作業や共同で取り組む課題が増えていることを指摘している。

 続いて,公共図書館の事例として,新しい図書館の開館準備中であるテキサス州のベッドフォード公共図書館が取り上げられている。旧図書館では利用者が電源を求めて変な場所に入り込むことがあったため,新図書館に関しては,館長が図書館のIT担当と共に建設業者と話し合い,人が座ることが想定されるあらゆるところに電源を用意してほしいと伝え,その結果,460の電源コンセントが備えられたとのことである。館長は,公共図書館で電源への需要が増えている要因として,不況により図書館利用が増加したことを挙げている。

 電源コンセント不足への対応方法としては,既存のコンセントの近くに座席を移動させたり,利用者が行きそうな場所に追加のコンセントを設置したりすることが多いとのことである。また,その他の対応策として,電源コンセント付きのデスクやソファを購入することや,OAフロア化することで自由な電源の配置を実現することなどが挙げられている。一方,究極の対処法は機器のバッテリーの長時間持続化ではないかという意見もあるとのことで,それが実現した際には,使われない電源コンセントの問題が生まれるということになるかもしれない,と記事は結ばれている。

Ref:
http://www.libraryjournal.com/lj/communityacademiclibraries/888602-419/a_digital_generation_scours_the.html.csp