E1089 – 2010年の「学習へのアクセス賞」はギリシャ北部の公共図書館

カレントアウェアネス-E

No.178 2010.09.02

 

 E1089

2010年の「学習へのアクセス賞」はギリシャ北部の公共図書館

 

 ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団による「学習へのアクセス賞」(E827E968参照)の2010年の受賞館が,ギリシャのベリア中央公共図書館に決定した。同賞は,コンピュータやインターネットを通じて人々と情報を 結びつけるための革新的な努力を行っている米国外の公共図書館や類似施設 を表彰するもので,受賞館には賞金として100万ドルが贈られる。ベリア中 央公共同館の受賞理由は,「経済,教育,文化などにおける情報技術サービ スの創造的な活用」である。

 ギリシャ北部にあるベリア市の人口は5万人で,周辺地域の住民を合わせ た18万人が同図書館のサービス対象である。同図書館は情報化にいち早く取り組み,1992年に目録を完全に機械化し,1996年に国内で初めて無料でコンピュータやインターネット接続の提供を開始した。1997年には,自館のウェブサイトを持ったギリシャ初の図書館となった。また,ギリシャ内外の図書館や関係機関とパートナーシップを結び,経験や知識を広めていることも特徴の一つである。国内の60館以上に対しウェブサイト開設の手助けをするなど,ギリシャの図書館における情報化のリーダー的な存在となっている。

 同図書館では,コンピュータを活用した様々なサービスを実施している。求職中の人や高齢者を対象としたコンピュータ教室の他に,移民に対する同化支援策の一つとして,自分の人生を母語で語る姿を動画で撮影しウェブで公開するというプログラムもある。また,2009年に完成した子ども向けの「マジックボックス」と呼ばれるエリアでは,本や音楽を楽しむゾーン,体を使った遊びができるゾーンに加え,子ども向けのソフトが入ったコンピュータなどが置かれたゾーンがあり,子どもの創造力を刺激するものとなっている。図書館のない周辺地域を巡回する移動図書館にも,本だけでなくラップトップPCが搭載されており,情報アクセスの手段を提供している。

 図書館長のトロホプロス(Ioannis Trohopoulos)氏は,受賞スピーチで,この賞がきっかけになり,これからは,技術を活用した小規模な取組みが国レベルでの変革の原動力となっていくかもしれないと述べている。また,図書館の役割の核心にあるのは地元のコミュニティのニーズであり,それがよいサービスを提供し続ける原動力となっているとしている。

Ref:
http://blog.libver.gr/en/wp-content/uploads/2010/08/final-2010-atla-press-release_-81110_english-1.pdf
http://www.gatesfoundation.org/atla/Pages/2010-atla-winner-veria-central-public-library-greece.aspx
http://blog.libver.gr/en/wp-content/uploads/2010/08/acceptance-speech-gates-award-for-veria-library-2.pdf
http://blog.libver.gr/en/?p=292
http://www.libraryjournal.com/lj/home/886302-264/library_in_veria_greece_wins.html.csp
E827
E968