カレントアウェアネス-E
No.172 2010.06.10
E1056
現在のデジタル情報が未来に利用可能かタイムカプセルで検証
デジタル情報の保存においては,ハードウェアやソフトウェアの技術の進展が急速なため,古いデータへのアクセスが困難になるということが大きな課題である(CA1696参照)。欧州の国立図書館,文書館,研究機関等の16の機関により実施されているデジタル資料保存プロジェクト“PLANETS”では,デジタル情報の長期保存の問題についての意識を高めるため,様々な媒体に記録したデジタルデータを金属製のタイムカプセルに入れて物理的に保存し,将来のアクセス可能性を検証するという試みを行っている。
タイムカプセルに入れられるデータは,JPEGフォーマットの画像,Javaソースコード,MOVフォーマットの動画,HTMLフォーマットのウェブページ,PDFフォーマットの文書という,将来のアクセスが危惧されるデジタルデータである。また,これらと同内容のものが,長期保存のための標準的なフォーマットである,JPEG2000,PDF/A,TIFF,MPEG4のフォーマットでも保存される。データが記録される媒体には,CD,DVD,USBメモリ,ブルーレイディスク,フロッピーディスク,フラッシュドライブ,ハードディスク,オーディオテープ,マイクロフィルム,さらには紙まで,多種多様なものが用いられる。
加えて,保存されたデータにアクセスするための手掛かりとして,データのマイグレーションを行うための変換ツールや,ファイルフォーマットやエンコーディングの説明等の情報もカプセルに入れられる。これらを用いて,数十年後の,現在とは異なる環境において,保存データにアクセスしたり,古いフォーマットのデータを再現したりすることが想定されている。
タイムカプセルは,スイスアルプスの奥深くにある堅牢な施設で保管され,未来の研究者が,カプセルから与えられた情報を用いて,保存されたデータのうちどれだけがアクセス可能かを検証する。物理的に保存されていても,時間の経過と技術進歩によりどれだけの影響があるかが示されることになる。なお,保存データと同じデータがオンラインで公開されるとともに,図書館等での展示用にタイムカプセルのレプリカも用意されるとのことである。
Ref:
http://www.bl.uk/news/2010/pressrelease20100520a.html
http://www.ifs.tuwien.ac.at/dp/timecapsule/timecapsule.html
http://www.planets-project.eu/news/?id=1273674576
CA1696