E2063 – Open Preservation Foundationの概要と活動

カレントアウェアネス-E

No.355 2018.10.04

 

 E2063

Open Preservation Foundationの概要と活動

 

 電子情報保存に関するコミュニティとして,英国に拠点を置く非営利法人組織Open Preservation Foundation(OPF)が昨今その存在感を増している。以下では,この組織の概要とともに,2018年7月にOPFが公表した今後の戦略計画“STRATEGY 2018-2021”について紹介する。

●設立の経緯

 OPFの源流は,2006年から欧州委員会(EC)等の出資で行われた,電子情報の長期保存のための共同技術開発プロジェクトPreservation and Long-term Access through Networked Services(PLANETS)に遡る。このプロジェクトの背景には,フォーマットの旧式化などによる電子情報の喪失に対する大きな危機感があり,英国図書館(BL)を中心に,欧州の国立図書館・文書館・大学・企業等が参加した。2010年のプロジェクト終了までの間に,PLANETSは電子情報保存に関するツールの開発,研修プログラムの開催,各種報告書の取りまとめ等で一定の成果を挙げたが,参加団体からはその活動の継続・発展を望む声が上がった。

 これを受け,10の加盟団体によって設立された組織が“Open Planets Foundation”であり,同組織はその後2014年に名称を“Open Preservation Foundation”に変更して現在に至っている。

●OPFの組織概要

 OPFは設立以後,着実に加盟団体を増やし,現在は欧州地域外も含め25の団体が加盟している。その中には,英国・フランス・オーストリア等の国立図書館に加え,米・イェール大学図書館や,Ex Librisなどの事業体も含まれる。加盟団体はそれぞれの予算規模に応じて加盟金の負担や人的資源の提供などを行っているが,実際にOPFの活動に携わっているのは,これらの団体に属し,電子情報保存に関する企画や実務での経験を積んだ者が多い。

 加盟団体は正会員(charter member)と準会員(affiliate member)の2種類に大きく分けられており,前者は加盟金・人的資源等の負担がより大きい分,活動方針の決定などについて大きな権限が与えられるほか,OPFによる開発ツール導入に際してサポートが提供されるなどの特典が与えられる。

●OPFの活動

 OPFは電子情報保存に係る技術・知識の共有および関係組織・団体等との連携を主な活動としている。

 技術共有の面での主な活動としては,オープンソースのツール開発が挙げられる。OPFでは,JHOVE・jpylyzer・fido・xcorrSoundなど,電子情報保存の過程で必要となる電子ファイルのフォーマット判別や検査等を行うツールの開発を行っている。とりわけ,JP2ファイルフォーマットの画像ファイルを対象とした検査ツールjpylyzerは,2014年に英国のデジタル保存連合(DPC)によるDigital Preservation Awardsの候補にもなり,高く評価されている。

 知識共有については,ウェブ講座の実施,ウェブサイトやSNSを通した情報発信,講演会等の各種イベント開催のほか,主題別グループ(interest groups)を設けて加盟団体間での情報交換や議論の場を提供する活動も行っている。

 関係組織・団体等との連携としては,DPC,ドイツの電子情報長期保存プロジェクトnestor,PDF Association等の組織・団体と,電子情報保存の促進に向けて協力を行うことで合意する覚書の締結等を行っている。特にPDF/A(長期保存に適した電子文書ファイルフォーマット)用のファイル検証ツールveraPDFの開発プロジェクトにおいては,PDF AssociationとOPFが連携して主導的な役割を果たしている。

●今後の展望

 OPFは2018年7月に“STRATEGY 2018-2021”を公表し,今後の戦略計画を明らかにした。

 この文書の中で,OPFはまず「組織目標(vision)」を「オープンで持続可能な電子情報保存」と定め,「持続可能性」をより活動の前面に打ち出した。また,「使命(mission)」の中では,電子情報保存のためのツール類について,OPFがその開発や維持のための連携協力を主導していくことが明記され,今後はこのツール類に関する活動がOPFの中でより大きな比重を占めていくものと考えられる。

 そのほか,OPFは今後行う活動として,OPFが有する人材等の資源に見合ったプロジェクト・プランニング,組織の適正な運営と報告に関する体制の確立,新規加盟団体の増加,開発するツール類活用のための研修教材作成等を計画に盛り込んでおり,今後その活動の展開が一層注視される。

関西館電子図書館課・工藤哲朗

Ref:
https://www.planets-project.eu/docs/newsletters/PlanetsNewsletterIssue1.pdf
https://www.planets-project.eu/about/#partners
https://www.planets-project.eu/docs/newsletters/Planetarium10_Planets_Newsletter_May2010_2.pdf
http://openpreservation.org/public/OPF_Annual-Report_2010-2011_v1.1.pdf
http://openpreservation.org/about/members/
http://openpreservation.org/about/people/
http://openpreservation.org/about/join/
http://openpreservation.org/public/OPF_AnnualReport_2014-2016.pdf
http://openpreservation.org/technology/products/
http://blog.kbresearch.nl/2014/11/25/positive-feedback-for-jpylyzer/
http://openpreservation.org/knowledge/interest-groups/
http://openpreservation.org/news/new-memorandum-strengthens-global-collaboration-digital-preservation/
http://openpreservation.org/news/nestor-and-the-open-preservation-foundation-sign-memorandum-of-understanding/
http://openpreservation.org/news/the-open-preservation-foundation-and-pdf-association-sign-partnership-agreement/
http://openpreservation.org/about/alliances/
http://verapdf.org/project/
http://openpreservation.org/public/OPF_Strategy_2018.pdf